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悪役令嬢と最後の勝負 2

 ランドールからすべての話を聞き終えたソフィアは茫然としていた。

 第一王子ヒューゴと、王女のキーラの二人が国王の子供ではなく、王妃とオルト公爵が関係を持っていた?


(……こんな設定、設定集に書いてなかったわよっ)


 思わず心の中で叫びたくなる。

 なんだこれ。裏設定というやつか? 知らないそんなの!


「つまり、裏で糸を引いていたのは王妃とオルト公爵ということか? ヒューゴを確実に王にするために、ソフィアを消しておこうと、そういうことだな」

「ああ。本当ならば俺を消すのが早いだろうが、俺の父とオルト公爵との約束がある。ことが露見しないように、ヴォルティオ公爵家をすべてつぶしてしまえるほど、オルト公爵には力はないだろうし、我が家もそんなに無能ではない。相手が本気で噛みついてくるそぶりを見せれば、基本的に争いごとを好まない父も動くだろう。そうなれば分が悪いのはオルト公爵だ。だから、俺には手出しせず、ソフィアを狙った。ソフィアが狙われても俺は見て見ぬふりをするとでも思われていたのか、……馬鹿にしてくれる」


 ランドールは最後はうめくように言った。

 ソフィアは頭の中でグラストーナ王家の関係図を開いた。ヒューゴが国王の息子でないならば、繰上りでランドールが王位継承権第一位だ。ヒューゴの出自が露見せずとも、ランドールは王位継承権第二位。王女であるソフィアと結婚したことで、ヒューゴが王太子でない今であれば、ヒューゴの婚姻相手次第では、この順序がひっくり返る可能性もある。なるほど、突然のカーネリアとの婚約は、こういった事情が背景にあったのだろう。


(……このこと、お父様は本当に知らないのかしら?)


 ふとソフィアは考える。

 国王は、ヒューゴやキーラに冷淡なわけではない。けれども、どこか距離を取って接しているような気がするのだ。そしてヒューゴもキーラも父王にはあまり近づかない。 

 もしかしたら父王は、薄々その可能性について思い当たっているのではないだろうか。けれども確証までは持てず、自分の子供ではないということで傷つくキーラたちの心をおもんぱかって黙っていたのだとしたら?


「お父様に、相談したほうがいいわ」


 ソフィアが言うと、ランドールが眉をひそめた。


「だが……」

「ランドールがお父様のことを考えてくれてるのはわかるの。言えばお父様は傷つくかもしれない。でも、もしかしたら、お父様はその可能性に気がついているのかもしれない」


 ランドールは迷うように視線を落としたが、やがて小さく頷いた。


「いずれはわかることだし、な」

「うん」


 カイルを助けるためには、すべてをつまびらかにする必要がある。ランドールの言う通り、いずれはわかることなのだ。


(待っててカイル。これで助けてあげられるわ)


 ソフィアがぐっと拳を握り締めたとき、ヨハネスがサロンにやってきて、アリーナの訪れを告げた。

 事前に約束はなかったが、アリーナのことだ、きっと何か急ぎの用事なのだろう。

 ランドールに許可を取って、ソフィアがアリーナをこの部屋に通すようにヨハネスに頼む。

 やがてやって来たアリーナは、ひどく強張った顔をして部屋に入ってきた。そして――


「ソフィア。裏が取れましたわ。これで断罪――」


 部屋に入ってくるなり口を開いたアリーナだったが、その言葉が途中で止まって。


(あ、そうだった……、アリーナの推しは……)


 その視界にシリルの姿を捕らえたアリーナは、あんぐりと口を開け、真っ赤な顔をして、彫像のように固まってしまった。


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