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死域からの生還者  作者: 七夕 アキラ
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5.侵入と乱戦


 普段なら一騎と創太の住むマンションから車なら二十分で到着するはずの警察署に着いたのは、四十分も経ってからだ。最初こそ順調だった移動も、警察署へと近付くうちにゾンビ集団と遭遇数が増加したが。

 そのゾンビ集団も断続的に銃声が聞こえる正門の方へと移動していった。一騎たちは周囲の安全確認を済ませると、バリケードから五メートルほど離れた位置でプリウスから下車。梓はちゃんとキーも外している。

 それと運がいいのか、裏門のバリケードに警官の姿はない。正門の方へと移動した後のようだ。


 ――ズドドドドドドドド!!! 

 ――ダダダダダダン!!! 

 ――ダダダダダダダ!!

 ――ダダダダダダンダダン!!!


 四人が降りてすぐに断続的だった銃声が、連続音に変わった。


「正門側は警官たちが死守している頃なのだよ! 署内に入り武器保管庫へ侵入するには今しかない!」

「そうだな! さっさと武器弾薬を確保して、マンションに帰るとしようか!!」

「賛成!!」

「急ぐわよ!!」


 絶え間なく聞こえる周囲に轟く銃声が原因で、一騎たちは声を大きくする必要があった。彼らはそれぞれ大きめのリュックや、手提げ袋を持っている。

 銃は手に持つしかないが、弾薬をまとまった数持ち出すにはどうしても必要なのだ。


「今なのだよ!!」


 監視カメラがバリケードから離れた位置を映すべく、向きを変えた直後に創太が先行。鉄柵は動かないように固定されているが、開閉は可能なものが使われていた。

 創太によって縦一列で通れるだけが開かれて、一騎、澪、梓と続いて敷地内へと入り込む。監視カメラの位置が戻るまでに、創太はすぐに鉄柵を戻す。


「署内に入って武器保管庫へ直行なのだよ」

「万が一、警官と鉢合わせしたら?」

「その時は無理矢理にでも気絶させるまでなのだ」


 四人は警察署内へと入り、非常階段を静かに素早く上がっていく。


「ここなのだよ」


 六階と書かれた非常階段扉を指差し、創太は小さい声で一騎たちに伝えた。


 ――ダダダダダダダダダダ!!!!!


「行くか」


 創太が扉を慎重に開けて、一騎が最初に六階廊下に出る。壁越しに慎重に奥の方を確かめた彼は、誰もいないのを確認して待っていた三人に頷く。いるはずの見張りの姿も視認できなかったのだ。

 正門側から今なお連続して聞こえてくる銃声は、その数が徐々に増え始めてきている。四人は知らないが、バリケードが突破され掛けていた。

 一騎と創太がベルトから警棒を引き抜き、武器保管庫と書かれた扉の前へと移動。照明が消えているが、窓から入る日差しのお陰で、多少の暗さは気にならないだろう。保管庫は開かれた状態で、そのまま一騎が入ろうとした。


「ぅぅ、うっ」


 内部から聞こえてきた、人間の声を耳にして彼はピタリと足を止める。


「どうし――――」


 創太が「どうした?」と聞こうとした瞬間、一騎と同じく声を聞いたのだろう梓が後ろから両手で口を塞いだ。


「っくそ」


 再び聞こえた人間の声。かなり弱りきった声だ。そして、なにかを取り出している音が続く。


「噛まれているよな」

「うむ」

「入る?」

「慎重にな」


 一騎は警棒を握る力を強めて、保管庫内にそっと足を踏み入れた。そこには左手にある噛み傷から出血のある警官の姿だ。まだ若い警官は、代償様々なトランクを開けていた。


「誰だ!?」


 保管庫内は照明が点いていて、その明かりが一騎の影を作り出している。その影に気付いた若い警官が鋭い声を発した。それと同時にニューナンブM60を向ける。


「一般市民だ。 銃口を下ろせ」

「市民だと? 一階から各階まではエレベーターと階段の見張りがいるはずだ」

「オレたちは非常階段を使った」

「非常階段か、盲点だな。 それで?一般市民がここに何の用だ?」

「単純なのだよ。 得物となる銃が欲しい。それだけでしかないのだ」

「お願い、私たちに自分たちを守るための武器をください」

「……お願い」


 まだ警察学校を卒業したばかりにしか見えない彼の問いに、創太は自分たちの目的を口にした。梓と澪も自衛のために銃と弾薬を求める。


 ――ドン! ――ドン! ――ドン!!

 創太たちが答えたその直後にショットガンの音がかなり近くから聞こえた。


「バリケードが突破されかけているのか。 悪いが市民に銃を持たせることはできないんだよ」

「後ろから撃たれるのを避けるためだろ?」

「それだけではない。 暴徒化するのを回避するためだ」

「今のままじゃ、バリケードはと――――」

「きゃあああああぁぁぁぁぁああああ!!」

「入って、入ってきたぞーーーーーーー!!!」

「こっちに来るなよーーーーー!!!」

「外の警官は何をしているんだ!!!」

「きっと自分たちだけ逃げ出したんだわ!!」


 一騎が言葉を続けようとした直後、下から悲鳴と絶叫が。一騎たちは知らないが、バリケードは半壊してゾンビが次々と内部に流れ込んできていた。

 武装警官たちの多くは、既にゾンビに殺到され全身を美味しく食べられている最中。


 ――ズドン!!!!

 ――ダダダン!!!

 ――タタタタン!!!


 一時的に途切れた銃声だったが、無事だった警官たちが発砲しながら後退を開始していて銃声がはっきりと聞き取れる状態になっていく。


「さっさと撃てよ!!」

「てめぇら、わざとバリケードを突破させたな!!」

「私たちを襲わせている間に逃げるつもりなのね!!」

「我々はできることをしているだけです!! 保護したあなた方を殺して逃げるような卑怯ものじゃない!!!」

「だったら銃を寄越せよおおおぉぉぉおお!!」

「俺たちにだって身を守る権利はあるんだ!!!」

「お前たちだけが銃を持つなんて、卑怯じゃないか!!」

「市民に銃を持たせられるはずがないでしょうが!!!」


 階下から聞こえる怒鳴り合いからして、警察署内で保護されている市民たちは暴徒化し掛けている。それを察した創太は、会話を再開させた。


「あなたは噛まれている。 噛まれた人間がどうなるのかは知ってるだろ?」

「あぁ。私にできるのはここで自殺すること。 それと、可能な限りの銃と弾薬を拳銃だけの同僚に――ごふぉあ」

「あなたが何もせずに、ここでゾンビになったら下の同僚はどうなるかわかる!?」

「死んじゃうよ」


 警官は急に吐血した。その量はかなり多い。しかも、血に混じって黒い液体も吐き出し始めている。


「本格的にゾンビ化が始まったみたいだな」

「げふぉ、ぶふぁ。 はぁはぁ、そのようだ」

「僕らは銃と弾薬が欲しいのだよ。 それを今、提供してくれるのなら、君の同僚の援護をすると確約しよう」

「援護、か。 ずっとか?」


 ――ズドン!! ズドン、ズドンズドン!!!


「無理なのだよ」

「だな。 音が連続しているってことは、署内に侵入されてる。署内に入ったゾンビを殺してもバリケードを突破したゾンビが次々と入ってくるまでだ」

「このままだと、階下の警官は守るべき市民によって殺される。 それを防ぎたいなら、オレたちに銃と弾薬を渡してくれ」

「げふぉ、こひゅ。 渡してどうなる?」

「あんたの同僚が逃げられるだけの時間は稼ぐ。 だが市民は放置だ。 暴徒化して人間もゾンビも関係なく襲うようになるまで時間は掛からないだろう」


 ――タタタタタタン!!!!

 ――ダダダダダダダダダダダ!!!

 ――ドドドドドドドドドドドドドン!!!!


「迷っている暇はなさそうだな。 けふぉ、うぉえ、げふぉ!! わかった、使い方を説明する。持っていけ。 ただし条件だ。必ず同僚が逃げれるだけの時間を稼いでくれよ」

「もちろんなのだよ」

「約束するわ」

「うん、約束」


 銃と弾薬の提供を受ける条件を一騎たちは受け入れた。この若い警官の同僚が逃げ出せる時間を稼ぐと。





 武器保管庫の中にあった銃の中から、それぞれが使いやすい武器を選択した。一騎は主装備としてMP7A1とUSP45、創太はXM8とP30L、澪はGLOCK17Cで梓はベレッタ92。

 御巫姉妹がハンドガンしか装備しない理由は、アサルトライフルやサブマシンガンの反動を抑えきれないだろと創太と警官の判断によるところが大きい。

 全員がマガジンに弾込めを行って、撃ちきってもマガジンを交換するだけで済むようにした。予備マガジンも持ったが、こちらには弾込めはされていない。


 銃選びに十分、扱い説明で五分、最初のマガジンに弾込めをするのに三分。早くも条件を受け入れてから十八分が経過している。この間も階下からは銃声と悲鳴が続いていた。

 警官、水原と苗字だけを告げた彼は弾薬の入った箱の場所を教え終わると本格的なゾンビ化が始まったために創太が射殺した。

 四人はありったけの弾薬を持ってきたリュックや手提げ鞄に詰め込んで約束を守るべく、セーフティーに指を掛けた状態で急いで階段を降りていく。


 ――ドン!! ドンドン!!

 ――ダダダダダダダダダダダ!!!

 ――ズドドドドドドドドン!!!


 四人が通常階段を降りて一階に到着すると、そこは十九人の警官が懸命にゾンビの侵入を阻止するべく銃撃を続けていた。そんな彼らの背後にはただ悲鳴を上げるだけの様々な年代の女性陣。

 男性陣の中には護身用として持ってきただろう金属バットで、警官がリロードしている間の時間稼ぎをしている姿もある。だが、残念ながら喚き散らすだけの人間が多い。


「お前ら日本国民を守るべき警官だろ!! 俺たちが逃げ出すまで感染者を殺せよ!!!」

「きゃああああああ!! また走ってくるわよ!!!」

「警官なんだから、何とかしてよ!!!!」

「おい! どこか外に出られる場所はないのか!?」

「窓から逃げるぞ!! 奴らは警官が処分するはずだ!!」

「バリケードから離れた位置から逃げるぞ!!」

「バカ野郎!! 外に出たからって安全なはずがあるか!」

「そうだ!! 上の階に行って机やソファーで新しいバリケードを作るんだよ!!」


 怒鳴り合う避難してきた市民たち。そんな彼らに気付かれないように、一騎たちは移動して警官たちの横に並ぶようにして銃を構えた。


「なぜ市民が銃を!?」

「危険だ!! 下がりなさい!!!」

「水原は何をやっているんだ!?」


 一騎たちに気付いた警官が声を上げる。声に気付いた避難してきた市民が、四人の持つ銃を見た。


「そこの四人! お前らなんかが銃を持つな!!」

「そうだ!! 俺たちにすぐ渡せ!!」

「そうよ! 子供が持つべきじゃないわ!! すぐに大人である私たちに渡しなさい!!!」

「お前たち四人は、そこの役立たず共と一緒に俺たちが逃げる時間を稼げ!!!」


 ――またか。また自分勝手な大人たちばかりだ。 普通は子供や動けなさそうな人たちを守るべきなのに。


 一騎は内心で呟きながら、一方的な彼らの要求を完全無視する。こういう非常事態において自分勝手な大人たちは、他者を支配したり殺すことで優位に立とうとしたがる。

 それをたった一度だけの経験から学んでいたからこそ、創太や澪、梓も無視していた。


「聞いているのか!!!」

「黙れ」


 四十代くらいの男が、一騎を強制的に振り向かせて殴ろうとする。その瞬間、彼は眼前の男に短く命じた。それも強烈な敵意と殺意を込めて。


「な、な、な……」


 本能的に恐怖を感じた男は、失禁しながら後退りを開始。それを見た一騎は、前方のゾンビ集団に視線を戻して三人に言った。


「セーフティー解除、撃ち方始め!! 頭か足を狙うんだ!!」

「任せるのだよ!!!」

「うん!!!」

「はいはーい!!!」


 一騎は取り付けれているドットサイトを覗きながら、正確に頭部を狙って接近してくるゾンビたちを撃っていく。


「君たちも逃げろ!!」


 一人の警官が一騎たちに叫ぶように指示を出してくる。それに対する四人の答えは単純だった。


「水原さんから、同僚が逃げるだけの時間を稼ぐのを条件に銃を受け取ったんだ」

「彼は噛まれていたよ。 本格的にゾンビ化が始まる前に射殺した!」

「皆さんが逃げられるだけの時間を稼ぐのを約束したんですよ」

「そう、約束」


 答えながらも射撃を続けていたが、最初に澪と梓が弾切れになった。事前に決めてあった通りに二人は、裏門のバリケードへ向けて走り出す。


「あんたらもさっさと逃げるのだよ! 自分勝手な避難民が原因で死ぬ必要などないのだ!!」

「オレたちは一マガジンにしか弾込めする余裕がなかったんです。撃ちきったら逃げるんで、さっさと脱出してください」

「そうか! だから水原は銃を渡したのか」

「あいつ、カッコつけやがって!!」

「後退開始!! 避難民は放置する!!」

「「「「「「了解!!!」」」」」」


 指揮官役らしい五十代の警官の指示に、銃撃に参加している警官たちも応えた。そして金属バットを使っていた男性数名も離脱できるように戻ってきた。


「今だ! 走れ!!」

「ちょっと! あたしたちを守りなさいよ!!」

「自分たちだけ逃げるのか!!」

「卑怯もの!! 人殺し!!!」


 警官たちが一斉に後退を始めながら銃撃による足止めも続行する。避難民たちは非難の言葉を口にした。


「黙るのだよ!! 喚くだけしかできないのか!!!」


 創太の言葉に警官も避難民も一斉に彼を見た。


「自分勝手に騒いだり、文句を言うだけなら誰にでもできるのだよ!! こんな状況でただ喚くのではなく自分たちにできることをしなかった貴様らが悪いのだ!!!」


 創太の実にまともな言葉に、大人たちが反射的に声を荒げて反論した。


「子供が偉そうなことを言うな!!」

「そうだ!! 子供は大人の言うことを聞けばいいんだよ!!」

「ガキが生意気だぞ!!!」

「卑怯もんの警官と、あんの生意気小僧を感染者共に食わせてやれ!!!」

「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」」」」」


 ただ喚き、非難するだけしかなかった避難民の大人たちが走ってくる。警官たちはどう対処しようかと考えようとした直後、一騎が指示を飛ばした。


「バカ連中の足を撃て!! あんなのを守る必要なし!!オレたちは脱出優先だ!!」

「「「「「「了解!!!!」」」」」」


 本来なら一騎の言葉に警官たちが従う必要も、応じる必要もない。だが、彼らは警察署内へと通した市民からの心ない言葉に限界がきていた。だからこそ、一騎が出した指示に自然と応じる。


「ゾンビに向け、撃て!!! 次、バカ共に撃て!!!」


 接近してきたゾンビを一斉射で次々に射殺し、今度は殴ろうと近寄ってきた避難民に向けて銃口が向けられ、発砲が行われる。

 既に警官たちも避難民の多くを、守るべき日本国民ではなく自分たちを殺そうとする暴徒や凶悪犯として認識を改めていた。だからこそ、あまりにも自然に本来なら守るべき相手を撃てた。


「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁああああ!!」

「いてえよ!!! 助けれてくれよ!!!!」

「く、来るな! 来るなああああぁぁぁぁぁ――――」

「いたいいいいぃぃぃぃぃ!!! 食べないでーーーー!!」


 撃たれた避難民たちは次々と床に倒れていく。それを乗り越えて一騎と創太、そして警官たちは脱出に動いた。殴り掛かってくる避難民と、背後から迫るゾンビへの銃撃によって乱戦状態へとなる。

 一騎と創太はゾンビ対応を優先。暴徒化した避難民も数分もしないうちに激減。創太は走ってくるゾンビ九体を射殺したところで、弾切れになった。


 ――ブチブチブチ!! ――クチャクチャ!!

 ――ボキン!! ――ブシューーーーー!!! 


 足を撃たれた暴徒たちは、次々とゾンビに囲まれて食べられていく。生々しい食事音が聞こえ、何人かは襲い掛かるのを()めて、逃走に切り替える。


「一騎、僕は先に出るのだよ!」

「わかった。鉄柵を解放してすぐに脱出できるように準備しといてくれ」

「もちろんなのだよ!」


 創太が走り出すと、銃だけでも奪おうと手を伸ばす人数がかなりいた。だが、その人数は護身のために抜かれたP30Lを向けられて、すぐに諦めたようだ。

 一騎と警官たちは、裏門の方まで後退。正常な思考状態を保っていたらしい避難民の小グループは、自分たちが乗ってきた車で警官たちを回収するべくドアを開けて急げと声を出している。


「一騎、走ってくるのが三体!!」


 もう少しで出られるというタイミングで、創太の発した警告が一騎に届く。裏門までの距離を見るべく、振り返った瞬間を狙ったかのように三体が走ってきていた。二体の頭を撃ち抜いた直後に弾切れに。


「ちっ!!」


 彼は舌打ちしながらもUSP45を懐の胸ポケットから取り出して、セーフティーを解除。後退しながら正確に発砲。走ってくるゾンビは一先(ひとま)ず射殺し終えた瞬間だ。


「梓さん、出して!!」


 一騎は梓が運転するプリウスの後部座席に乗り、すぐさまシートベルトをした。


「ぐぎゃああああああああぁぁぁぁぁあああ!!」

「ま、待ってくれ!!! 俺たちが悪かった。 謝罪するから助けてくれーーーーー!!!」

「謝るから!! な!? だから助けろーーーーー!!」

「警察が市民を見殺しにするかのよ!!!」

「助けてくれよーーーーー!!!」

「置いていくんじゃねーーーーーー!!!!」

「俺たちが乗るんだ!! お前らは時間を稼ぐんだよ!!」


 警察署内の上の階へと逃げたらしい避難民たちが、窓を開けて必死に声を出してくる。足を止めた警官たちは憎々しそうに見上げるだけだ。梓は発進するべきか考え、一騎と創太の判断待ちを選択。


「その目はなんだ!!」

「そうだ!! 俺たちを助ける権利を与えてやっているのに!!」

「お前たちは俺たちの肉壁だろうがーーーーーー!!!」

「自分たちだけ逃げるな!!!」

「ちょっと退()いてよ!! こんなバカな奴らじゃなくて私を助けて!!!!」


 あまりににも酷い言葉に、何人かは迫ってくるゾンビを見た後に指揮官役の警官へと視線を向ける。が、その警官は一騎に視線を向けていた。

 警官たちも一斉に一騎に視線を向けて、彼がどんな判断や結論を出すのかを待っている。


「一騎、どうするのだよ」


 創太が一騎に答えを促すが、当の本人は少しだけ困惑していた。


 ――どうしてオレに判断や結論を出させようとするんだよ!!


 そんな思いを一騎は抱くが、すぐに判断というか指示を出した。


「放置!! 彼らにできるのは食われることによる時間稼ぎだけだ!! 撤収!!!」

「「「「「「撤収!!!!!」」」」」」


 一騎の出した答えを生き残っている全警官が復唱。そして、上から助けを求める自分勝手な避難民を放置。彼らは自分たちを乗せるために待ってくれていた、善良な避難民の車に乗り込む。

 全員が乗れる台数はなかったが、しっかりと準備をしていたらしい警官の中にはパトカーの鍵を持ってきていた人物の姿もある。全員が乗ったのを確認した梓が一騎へと視線を向けた。


「梓さん、出して。 一時的に俺たちのマンションへと連れ帰りましょう」

「わかったわ。 でも本当にいいの?」

「一騎、彼らがそのまま住んでしまうのでは?」

「警官たちには悪いとは思うが、ずっと一緒は不味い気がするんだよ。 だから長くても一週間のみ滞在を許可して、後は自分たちで拠点を探してもらおう」

「賛成」


 梓がプリウスを鉄柵の間から外へ出発。これに続くようにして他の車両とパトカーも、上戸森警察署を脱出。署内に残っていた、危険避難民はゾンビたちに追い付かれ美味しく召し上がられていく。

 一騎たちの乗るプリウスが先行し、その後を善良な避難民と警官たちが乗った車とパトカーが追従。四人が彼らを連れてマンションに戻る途中で遭遇したゾンビもいたが、走ってくるのは一体もなし。

 銃撃する必要もなく、ぐんぐんと距離を離し視認できなくなる。それを確認して全車に乗る全員が、全く同じタイミングでホッと一息を()いていた。


 上戸森警察署に向かう時と違って、帰りは実にスムーズに移動できて二十七分でマンションへと到着。創太が101号室から中に入り、地下駐車場のシャッターを開放。

 続々と駐車場に入り、全車がエンジンを切ると創太がシャッターを閉める。


「疲れたな」

「本当」

「今日は朝から疲れっぱなしよ」


 マンションに戻ってこれたことで、一騎たちは無意識のうちに張り詰めた状態から解放された。他の車から降りてきた避難民と警官たちに、創太が101号室から108号室までを自由に使うように言う。

 そして、全員が一眠りしてから情報共有を行う方針で話はまとまる。創太は一階の全室の鍵を開け、一騎たちと一緒に銃をしっかりと持ったまま弾薬を詰め込んだリュックと手提げ鞄を707号室へと運んだ。

銃声の表現が下手すぎる!!

などの突っ込みは、ご容赦ください。

どう銃声を表現するか、これでも懸命に考えたんです。

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