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死域からの生還者  作者: 七夕 アキラ
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エピローグ

エピローグなので、短めです。


 来栖野大学病院にある専用端末を使い、WHOの超高度AIに抗ウイルス剤を作るようにと小野が要請を出してから早くも一ヶ月が経過。

 現在、一騎たちは米軍が極秘開発していた戦艦型移動都市で大西洋にいた。


「風、気持ちいい」

「そうだな。こうして都市を眺めてると、ゾンビ事件がウソみたいに思えてくる」

「同意」


 都市の中でも特に高い場所にある住宅街。そこの一角にある自宅の二階のベランダから外を眺めていた澪は、後ろから掛けられた声に振り返る。

 声を掛けたのは、彼女にとって大切な人物である一騎。二人は並んで眼下に広がる都市を見下ろした。そっと風が吹いて、澪の長くなった髪を撫でる。真っ白なワンピースが驚くほど似合っていた。


「今の生活があるのが、俺には驚きだ」

「わたしも」


 あの作戦の日。一騎たちは強力な助っ人に助けられてHZを殺しきった。大学病院を囲むようにしていたゾンビたちは、コブラとファントムのミサイル、オスプレイからの手榴弾と火炎瓶投下で全滅。

 作戦に参加していた、地上組はすぐ病院に突入した。一階にいたゾンビたちを掃討し、小野を送り届けることが成功した後、彼らは二階から上の階にいる避難民と病院勤務者たちとの交流を行った。

 食料と水の不足状態にあり、栄養失調が激しかった避難民たちと医師、看護師、事務員などは一騎たちの姿を見て歓声を上げたのだ。


 理由としては単純でゾンビを一掃したことと、水と食料を提供したことにある。その際の水と食料は、有栖総合病院にいた明石が手配したもの。

 彼らの多くは感謝して歓迎したが、それを良く思わない輩も少なからずいた。一騎たち高校生が銃を持っているのは問題だと言い張り、奪おうとしたのだ。

 これらは即座に自衛隊組が膝カックンで制圧し、一騎たちがいたからこそ作戦は成功したと告げていた。また、当日の夜に澪と梓、三笠に三森を襲おうとした不埒者もいたりする。


 その不埒者たちだが、当然のように警戒していた一騎や警官組により無力化され、女性陣の安全のために一時隔離。澪が狙われたことでキレた一騎による、話し合いという名目のボコボコが行われ、殺意を向けられて大人しくなった。

 作戦日の夕方には簡易バリケードが築かれ、再びゾンビが集まってきても、簡単には侵入ができない状態を構築。しっかりと食事を摂らせたのだ。

 翌日の朝まで出てこなかった小野だが、彼は結果を気にして待機していた同僚の医師たちに不敵な笑みを浮かべ、WHOの超高度AIが無事だったことを報告。


 抗ウイルス剤の作成を超高度AIに命じたのだ。この日の昼食頃になると、横須賀米軍基地から大量のオスプレイが飛来。生存者たちを保護すると、極秘開発していた戦艦型移動都市へと匿ったのだ。

 それから最初の二週間は大忙しの日々。一騎は他の地域や、他国の生存者を救出する作戦を考えさせられたり。創太は3Dプリンターを使った銃器の開発を依頼された。

 最初の一週間は創太が人工衛星にハッキングし、生存者を見つけると自衛隊と米軍に連絡。それと合わせて一騎にも報告を入れ、一騎たちは救出手段を考えさせられたものだ。


 滞在、二週間目を迎えたところで、学生組には正式な住居が割り当てられた。それまでは、戦艦内の自衛隊宿舎で生活していたのである。

 一騎と澪、創太と梓の四人は、既に避難していた人々に特に人気のある一角、そこの一軒家が与えられた。男子二人が活躍していたのが評価され、その評価に見合った物件という判断が下されたのだ。

 そして一週間前に現在の住居に移住し、それぞれ生活を送っている。一騎は澪と、創太は梓と同棲中。ちなみに、御巫姉妹は、都市が保有する農園で野菜の栽培を担当。


「一騎くん」

「ん?」


 都市に来てからの生活を思い出そうとした一騎に、澪は声を掛ける。


「抗ウイルス剤の完成、まだかな?」

「まだだろうな。昨日、小野先生から連絡をもらったけど、WHOの超高度AIでも完成させるには時間が掛かるらしい」

「平和になったら……帰る?」


 澪の問いを受けて、一騎は彼女の方に顔を向けた。悲しみと寂しさが混ざった表情の澪に、彼は少し考えてから答える。


「帰ろう。オレたちの家である上戸森のマンション、707号室へ」

「たち?」

「あぁ。あそこはもう、オレだけの家じゃない。澪の家でもあるんだから」


 答えを聞いて目を丸くした澪。驚いた表情が少しずつ落ち着きを取り戻し、彼女はもう一つだけ聞く。


「姉さんは?」

「708号室、創太の場所でいいだろ」

「……。そっか。そうだよね」

「そうさ。あの二人だって同棲してるんだ。もう家族みたいなもんだろ」


 そう、創太と梓は一騎も澪も知らない間に恋人になっていたりする。一騎と澪が気付いた頃には、既に二人は長期間に渡り、恋人として生活していたような雰囲気があった。

 梓は毎日、創太のために三食を作っている。創太が都市内の開発局にいる日は、弁当を届けているのだ。


「驚いた」

「オレも。いつの間に付き合い始めたのか分からない」


 ちなみにだが、警官組の面々は都市内の治安維持を担当し、三笠は生存者の救出作戦に同行してゾンビを狙撃し続けている。

 三森は噛まれてもゾンビにならなかったことから、その血の研究とゾンビに干渉する能力がないかの実験を受けている。小野先生は都市内の病院で総合医として勤務だ。


「まぁ、幸せならそれでいいだろ」

「うん」

「澪、どうしようか?」

「?? なにが?」

「オレたちの明るい家族計画」

「っ!!!」


 ハッキリとした言葉を聞いて、澪が赤を赤くする。そんな彼女の様子を見ながらが、一騎は言葉を続けた。


「ゾンビの完全掃討が終わってからにするか? それとも上戸森のマンションへ戻れたからか?」

「い、一騎くんは……ど、どうしたい?」


 彼の答えは既に決まっていた。この移動都市内でも、美少女すぎる澪は多くの男性陣から下心丸分かりのアピールを受け続けている。

 一騎が隣にいても、だ。その都度、一騎は追い払うのだが安心などできない。それに年頃であることを考えても、魅力的な澪の存在は毒にさえなる。

 それならば、言い寄ってくる輩がいなくなるように一騎は澪と本当の意味で家族になりたいと思っていた。


「オレの希望は今年中だな。早く澪と本当の家族となって、幸せな日々を送りたい」

「っ!!!!!」


 澪は完全にうつ向き、一騎に顔を見られないようにする。気恥ずかしさと、嬉しさが入り交じった表情。


「澪」


 そんな彼女の顔を自分の目線にまで持ち上げて、一騎はそっと呼び掛けた。


「な、なに?」

「好きだ。愛してる」

「わ、わたしも、だよ」


 一騎の囁きに澪は答えた。彼は澪をそっと抱き寄せて、彼女の存在をしっかりと確認する。


 余談ではあるが、日本の有栖市、来栖野市は世界中のどこよりも、この当時はゾンビの密集状態が多かった。そこから生還した一騎たちは、後にこう呼ばれる。死域からの生還者、と。

今まで作品にお付き合いくださり、本当にありがとうございます。

次回作品は、異世界転移の予定です。ですが、構想が二つあり片方は主人公がモフモフな動物になれる物。

もう一つはスキルを駆使して、異世界でハーレムを作っていくものです。

最後になりますが、これで完結です。

これからも、執筆投稿は続けるので、よろしくお願いします。

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