36.窮地と火炎放射器
明石たちが無法者たちを実力で排除してから三日後の朝。時刻は朝の十時半であり、有栖市中町にある東京都内でも特に大きなガソリンスタンド前。
そこにはラルゴ一台、ハイエース一台、73式装甲車四台が停車している。73式装甲車は運転手たちである、自衛隊員が残っていたが残りの二台は無人。
一騎たちとジャーキー、中村班と鳥越班、それと明石の指示を受けた自衛隊員たちは、ガソリンスタンド内にいた。六台の発電機が派手な音を出し、発電された電力は変圧器を通してブレーカーへと直接供給されている。
普通、ブレーカーに直接の電力供給は無理なのだが、そこは創太だ。ブレーカーを改造して、変圧器から直接の供給を可能なようにしたのである。
そして発電された電力は、各スタンドへと送られ、せっせとガソリンを携行缶へと流し込んでいる最中。ガソリンが零れたりしないよう、自衛隊員たちが注意。そして、入れ終わった携行缶を73式へと運んでいく。
既にお分かりだろう。そう、彼らは今後に備えてガソリン確保のために行動中なのだ。
「ここら辺のゾンビ、どこに行ったんだろうな」
「一騎、僕らは既に殺しているのだよ」
「有栖総合病院に殺到していたゾンビの中に、含まれてるってか?」
「恐らく、そうなのだよ」
「そうか。なら、あまり本気の警戒はしなくても問題ないかもな」
一騎は尻尾をブンブン振るジャーキーの頭を撫でながら、のんびりとした口調で創太と言葉を交わす。
「油断大敵なのだよ。あの後、病院に集まってきたゾンビの中には、ゾンビ犬もいたのだよ」
「あのゾンビ犬、どこから集まってきたのかしら?」
「姉さんの予想は?」
「音、かしら」
「澪さんは? どう考えてるの?」
「人が集まりすぎたから」
珍しくのんびとした一騎に、創太が警戒心を持てと促した。特にゾンビ犬に対して。ゾンビなら唸りながら迫ってくるから、遠くにいてもわかる。
発見した場合の対応は実に素早く動けるというものだ。ただし、ゾンビ犬を含む動物ゾンビは違う。特に四足である犬と猫は脅威。人間が走るよりも早いのだから。
「多頭飼育崩壊がなければ、あまり遭遇しないんじゃないか?」
「確かに。だけど、僕には他に脅威に感じていることがあるのだよ」
「どうした?」
「カラス、最近やけに見かけないと思うのだよ」
「あー、カラスか。確かに見ないよな」
一騎はこの時、ゾンビ発生からカラスって見かけてないよなとしか思っていなかった。
「ん? カラス?」
「一騎くん?」
しかし、そんな単純思考も一瞬にして終わりを告げる。彼の頭の中で、とある記憶が再生されていく。とあるゾンビ物作品で、ゾンビの死体を食べたカラスがゾンビ化。
どこからともなく飛んできて、生存者が乗ったバスや車を集団で襲うシーン。鋭い嘴を使い、生存者を生きたまま食べてしまう光景が。
――バサ、バサ、バサ、バサ、バサ、カン
彼がこのまま外にいるのは危険すぎる。そう直感したのと同時に、羽音が聞こえ始めた。そして、一騎がその音源に視線を向けると同時に、ガソリンスタンドの雨どいに一羽のカラスが舞い降りたのを目撃。
「カー、カー、カー」
「噂をすればなんとやら、なのだよ」
そのカラスは最初に一騎たちを見てから、次に各スタンドで無防備にガソリンを携行缶に入れている自衛隊員たちに視線を移した。
「キューン」
さっきまで一騎の足元で尻尾をブンブンと振っていたジャーキーが、突如として鼻を両前足で覆った。これによって一騎は直感した。放置するのは危険だと。
「総員、車内へ退避!!」
「カー、カー、カー。カー、カー、カー、カー」
一騎は叫ぶように指示を出すと、澪の手を握り、ジャーキーのリードを引っ張ってラルゴへと走り出す。
――バサバサ、バサバサ、バサバサ、バサバサ
――バサ、バサ、バサ、バサバサ、バサバサバサ
――バサ、バサ、バサ、バサ、バサ、バサ、バサ
「「「「「「「カー、カー、カー!!」」」」」」」
まるで一騎が指示を出すのを待っていたかのようなタイミングで、大量の羽音とカラスの鳴き声。ガソリンスタンドの上空を覆うように飛んでくる。
「乗れ! 早く!!」
「う、うん!」
「ワン!」
「私も乗るわよ!」
「置いていかないで!」
「僕を忘れるんじゃないのだよ」
一騎はラルゴの後部座席のドアを開けると、澪に早く乗るよう促す。彼女が乗り込むと、すぐに彼が続きジャーキーも後を追うように乗車。
上空が大量のカラスに覆われ始めたのを見た梓たち。三人は急降下してこないかを用心しながら、一騎が開けたままにしていた後部座席へ。
梓と三笠が乗った時点で、創太は運転席へと回る。すぐにでも、運転して離れることが出来るように。それを見た三笠はドアを閉めて、助手席へと移動。
一騎たちがラルゴに乗り込んだのと同時に、中村班と鳥越班もハイエースに。自衛隊員たちは空のガソリンの携行缶も持って、73式装甲車へと駆け込んでいる。
しばらくして、一体どこから飛んできたのかが、全くわからない大量のカラスで空が真っ黒に覆われてしまった。ちなみに、発電機と変圧器は中村班が回収済み。
『武藤くん、どうしたんだい?』
『カラスが多いくらいで焦るなんて、君らしくないんじゃないか?』
『お前らカラスをよく見ろよ。ありゃ絶対に感染してるって』
『うわぁ。目が白いし腸は垂れた状態だし、口から黒い液体まで流れてるんだけど』
『ってことは、ゾンビカラス?』
『武藤くん、どうする?』
中村と鳥越の班の呟きから広がり、ここに自衛隊員たちの会話も増えた。しばらく賑やかだったが、それもすぐに終息。そう、ゾンビカラスの数を見て。
軽く百羽は越えているゾンビカラスは、空中で何度か旋回していたかと思うと一斉に降下。そして電柱や電線、無人マンションのベランダなどに降りた。
その視線の全てが、一騎たちが乗る車に注がれている。この状況では、迂闊な行動が死に直結しかねない。
「エンジンはいつでも掛けられるようにスタンバイしてください。それとしばらくの間だけ、援護射撃の用意を」
「一騎、まさかとは思うのだよ」
一騎の言葉に創太がハッとした表情だ。なにを考えているのか、それを理解したんだろう。その瞬間、連続殺人犯やホラー映画の幽霊や妖怪も真っ青な笑みを創太は浮かべる。
「改造はほとんど済んでるんだよな?」
「もちろんなのだよ。後は燃料と発電機のみ」
「だったら、賭けるしかないよな」
「くふは、ははははははは! 任せるのだよ」
「よし。カウント十で、発電機一台と十リットル携行缶を一つ用意してください。受け取りに行きます。その間、ゾンビカラスが襲ってきたら、援護してください」
『了解』
『了解だ』
『任せろ』
『安心して行動しろ』
一騎は無線から返る彼らの言葉に頷くと、覚悟を決めたような表情に。カウントダウンが始まると、一騎以外の全員が3Dプリンター製の銃で武装。
全車の一騎以外が武装を終えてセーフティーを解除し、銃口を窓の外に向けた。
「ゼロ!」
澪がカウントがゼロになったのを、無線で告げる。一騎が後部座席から飛び出すと、カラスが一斉に飛び立って上空から襲い掛かるべく旋回を開始。
「最初に発電機」
ハイエースに一騎が到着すると、中村が助手席から発電機を渡す。二十数万円の発電機を受け取り、一騎は急いでラルゴへと戻る。
「「「「「「「カー、カー、カー、カー!!」」」」」」」
一斉に急降下して一騎に襲い掛かろうと、大量のカラスが彼に殺到する。
――バシュシュシュン、バシュシュシュシュシュシュン!
――バシュシュ、バシュ、バシュシュ、バシュシュシュ!
――パシュ、パシュシュ、パシュシュ、パシュシュシュ!
――ガシュ、ガシュシュシュシュ、ガシュシュシュシュ!
――トシュシュシュシュシュシュ、トシュシュシュシュ!
――カシュシュ、カシュシュ、カシュシュシュ、カシュ!
――ズドーーーーン!
――カチャリ
――ズドーーーーン!
――カチャリ
――ズドーーーーン!
「これはつまらないのだよ!! せっかくイサカM37改を撃っても、つまらないのだよーーーーー!!!!」
多くて二、三羽しか殺せないことに、珍しく創太が不満そうだ。一騎は援護射撃を受けて、ラルゴに戻って発電機を後部座席に置く。
続いて一番近い場所に停車中の73式装甲車へ向かい、十リットル携行缶を確保。頭上から降り注ぐような血の雨を浴びながらも、なんとかラルゴへ。これからしばらく、カラスが再び落ち着くまで彼らは息を殺して待つことになった。
□
「「「「「「カー、カー、カー」」」」」」
一騎が発電機とガソリンの携行缶を受け取り、ラルゴ車内に戻ってから四十分。一騎たちが乗る車の周囲を、ゾンビカラスが相変わらず取り囲んでいる。
ゾンビカラスたちは鳴くばかりで、行動を開始しようとはしていない。その理由は生存者である彼らが、ほとんど音も立てずにジッとしているからだ。
しかし、一騎たちが大人しくしている残り時間は、もうほとんどなかった。なぜなら、創太がとある兵器の仕上げを車内で急ピッチで進めているからである。
事前に創太が明石に要求して、受け取ってから改造を行い続けた物。それが、そろそろ完成する。その兵器の外観を分かりやすく表現するならば、背中に背負い農薬や消毒薬を巻く散布器に近い。
創太はこれに発電機を埋め込み、海外警察などが暴動鎮圧に用いる高圧放水器並みの威力を持たせていた。また、水ではなくガソリンを使っている時点で、もうお分かりになられただろう。
創太が仕上げを行っている兵器、それは火炎放射器である。一騎が創太から最初に聞いた話だと、発電機によるガソリンの飛距離(?)はおよそ九メートル。
「創太、後どのくらいだ?」
「発電機は埋め込み終わったのだよ。次は携行缶からガソリンを流し込むだけなのだよ」
「早くしてくれ。あいつらを一掃したい」
妙に殺気立っている一騎だが、これは無理もない。3Dプリンター製の銃で射殺されたゾンビカラスたちだが、その血を雨のように上空から撒き散らし、走っていた一騎を血塗れにしたのだ。
彼は既に車内に常時置かれているタオルで、ある程度は血を拭いている。だが、一騎にとっては残念なことに、完全に拭き取るのは無理だった。
そのせいで顔や頭、髪などはゾンビカラスの血によって、赤黒く変色。腐敗臭と血の臭いが混じった、独特な嫌な臭いに。それだけじゃなく、乾いてこびりついていた。
――コポコポコポコポコポコポコポ
「これで完成なのだよ」
創太が火炎放射器に燃料を入れ終わり、無事に完成。
「よし! 燃やしてやるぜ!! お前ら、準備はいいな!!!」
『『『『『り、了解!!』』』』』
殺気立っているせいで、彼は敬語を使っていない。というか、ある意味で興奮状態にある。だから、中村班や鳥越班、自衛隊員たちを「お前ら」呼び。
お前ら呼びをされた彼らだが、敬語を使うようになど言えなかった。珍しく一騎が殺気立っている。なので、下手になにかを言って、今の一騎を刺激したら自分たちまで殺されかねない。そう判断しているのだ。
一騎は火炎放射器を背負うと、外に飛び出した。ゾンビカラスたちは「獲物だ!!!」と言わんばかりに鳴くが、それを消し飛ばすような音が。
――ババババババババババババババババババババ!!
――ババババババババババババババババババババ!!
――ババババババババババババババババババババ!!
――ババババババババババババババババババババ!!
音の正体は73式装甲車の主武装、12.7mm重機関銃M2だ。四台の73式装甲車で、ゾンビカラスが一騎に殺到しないようにという対応。
「カラス共! よくもオレを血塗れにしてくれたな!! そのお礼だ!!! しっかり、こんがりと燃えやがれ!!!!」
――ゴーーーーーーーーーーーーー!!!
一騎がトリガーを引くと、放出ノズルからガソリンが勢いよく飛び出す。そして飛び出すと同時にかなりの熱量を含んだ火が、彼に殺到しようとしたゾンビカラスを次々に焼いていく。
一騎がトリガーを引くと、ノズルに取り付けられた、ライターの火打ち石が一瞬だけ反応。ガソリンに引火して、あっという間に火炎放射器として機能する。
「「「「「「カー、カー、カ」」」」」」
――ババババババババババババババババババババ!!
――ババババババババババババババババババババ!!
――ババババババババババババババババババババ!!
――ババババババババババババババババババババ!!
一騎に接近しようとすれば73式装甲車の重機関銃に撃たれる。そして一騎自身には火炎放射器で焼かれていく。ガソリンスタンドの周辺を埋め尽くしそうだったゾンビカラスたちが、その数をどんどん減らしていく。
「おらおらおらーーー! 遠慮せずに、どんどん掛かってこいやーーーー!! 燃やし尽くしてやるぜ!!!!」
重機関銃の発砲音と、火炎放射器から火が出る音。そして、パチパチと焼けていく音。この三つの音が、全体を支配するようだった。
「ははははははははは!! 燃えろ、燃えろ!!!」
「あ、あんな一騎くん、は、初めて見た」
「私もよ。なんだか怖いわ」
「これを見たら、誰もがこう考えると思います。武藤くんを怒らせたら、丸焼きにされるって」
『ショットガンを持った葉加瀬くんみたいな感じだな』
『本当にな。すげぇ速度でカラスが燃えていってるぜ』
「「「「「「「カ、カーカー、カー!!」」」」」」」
『ゾンビに意識があるのかは知らないけどさ、なんかゾンビカラスが逃げろって鳴いてるように聞こえる』
『奇遇だな、俺もだ』
『つうかさ、気付きました』
『なんだ?』
『俺たちもヤバくね?』
『なんで?』
『武藤くんがゾンビカラスの腐敗臭と血を浴びることになったのって、俺らが射殺したからじゃん』
『武藤くんが援護するように言ったんだ。問題ないだろ』
『援護するように言っても、血の雨を降らせろ、とは言ってないよな』
澪が、梓が、三笠がそれぞれに今の一騎を見て、感想を述べる。火炎放射器でゾンビを楽しそうに焼く姿を見たことによって。
自衛隊員たちの中でも、重機関銃を撃ってない隊員たちが三人の会話を無線で聞いて、自分たちもとばかりに感想を口にしていく。
「どうしたどうした!! あんだけ群がって来たのに今度は逃げか? ああ!? しっかり焼いてやんぞ、ごらぁ!」
重機関銃の発砲音にも負けず、車外から聞こえる一騎のチンピラ(?)というか、暴力団(?)的な発言。心なしか、本当にゾンビカラスたちが逃げるように飛び去っていく。
「ワン!」
程なくしてゾンビカラスが、どこかへと逃げるように飛び去ってしまった。ジャーキーが「逃げた!」と言わんばかりに吠える。
「ちっ! 逃げてんじゃねえぞ!!」
普段の一騎からは全く想像も付かない悪態。血塗れにされたことに対して、完全にブチキレている。
「戻ってこいや! オレに燃やされろーーー!!!!」
「「「「「「「カー、カー、カー、カー!!!」」」」」」」
一騎の怒鳴り声が聞こえたのか、ゾンビカラスたちは、かなり情けなさそうに鳴いて、一羽も残らずに完璧に飛び去った。すると、73式装甲車の重機関銃も発砲終了。
火炎放射器の残り燃料は三リットル。一騎はそれを確認する。すると、翼を失った状態でも、なんとか逃げようとしているゾンビカラスを睨み付ける。
「燃えとけ!!」
八つ当たりするようにして、一騎は翼を失った状態のゾンビカラスたちを燃やす。しばらくして、完全に焼き終わると、一騎からようやく殺気が消え、表情も普通に。
「一応の安全確保も済んだんで、ガソリン回収を再開しましょう。オレはこのまま警戒を行います。ゾンビ犬とかが来るかもしれないので」
『『『『『『り、了解です』』』』』』
彼は無線で当初の目的である、ガソリン回収を促した。
「一騎くん、はい」
「ありがと」
一騎は澪から渡されたスポーツドリンクを受け取り、ちびちびと飲みながら創太へと話し掛ける。
「創太、動体感知すると警告を鳴らしてくれる監視装置って作れないか?」
「迎撃システムなら、有栖総合病院にあるのだよ」
「あれじゃない。拠点確保や物資調達の時とかに、外に置いておける持ち運び式ってことだ」
「可能なのだよ。ただ、普通の動体感知システムだと、風に飛ばされた物とかにも反応するのだよ」
「大きさや速度の指定って、かなり難しいか?」
「それはないのだよ。AI搭載にすると設定が複雑になるが、単純にただ警報を鳴らすだけなら、問題なく作れるのだよ」
一騎は今回のような事態が起こった場合、囲まれるまで気付かないというのを避けるために、持ち運び式の監視装置が必要であると考えているようだ。
二人が真剣に話しているのをBGMに聞きながら、中村、鳥越の両班は周辺警戒。自衛隊員たちの方はガソリン回収を再開させていた。
「武藤くん、怖かったな」
「本当にな」
「しかし、ゾンビカラスか。空を飛んでくるとは考えもしなかったな」
「そうだな。俺たちは普通に人型のゾンビと、ゾンビ犬、ゾンビ猫ばかりを警戒していたもんな」
「後で明石二等陸尉と、狭間二等陸佐に報告をしておこう」
「それと火炎放射器もだな。今回みたいに空から襲われると、まともに対応するのが難しい」
発電機と変圧器をブレーカーに再接続し、携行缶にガソリンを入れながら会話。彼らは鳥ゾンビがいる可能性など、考えていなかった。
だから、今回も一騎による指示というか警告を受けるまでは、異変に気付けず。もし、警告がなければ生きたまま全身を食われていただろう。それを理解しているからこそ、自衛隊員たちは、青い顔をしている。
「火炎放射器となると、ガソリンを使うか。あるいは、中身のある缶スプレーを集めて、それを使用するかだよな」
「燃料のことを考えると、缶スプレーだよな」
「そうだよな。ただ、スプレーにすると、すぐに使いきって無防備になるぞ」
「ガソリン使うとなると、73や74、10なんかに燃料を入れにくくなるし」
ガソリンは移動手段確保のためにも、可能な限りは残しておきたい。しかし、今回のように集団で空から攻撃された時の対応策として火炎放射器も捨てがたい。
実際に一騎は火炎放射器を使って、ゾンビカラスたちをあっという間に焼殺してしまったのだから。
「火炎瓶は普通に地上ゾンビにしか、使えるシーンがないもんな」
一騎は自衛隊員たちの会話に少しだけ耳を傾け、火炎瓶に積めていた油やアルコール度数の高い酒を火炎放射器の燃料に使えないかと、創太に聞いてみたが否定された。
地上を動く人型ゾンビと、ゾンビ犬、ゾンビ猫を焼くのに火炎放射器は使いすぎ。射程も限られているが、火炎瓶なら投げ方を工夫するだけで、遠くまで飛ばせる。
そして、割れた瞬間にゾンビたちを燃やすことが出来るからと。
「創太、SZの絶叫って動物系ゾンビも呼び寄せると思うか?」
「知らないのだよ。ただ、可能性としてはあると、僕はそう思うのだよ」
一騎と創太は病院の迎撃システムを強化するべきだと話し合い、自衛隊員たちから、持ってきた全ガソリン携行缶が満タンになったと報告を受けて病院へと戻るのだった。
誤字脱字報告、ありがとうございます。
今回の一騎はどうでしたでしょうか?




