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死域からの生還者  作者: 七夕 アキラ
34/54

33.発見と集団


 オスプレイで膨大な量の食料を有栖ハッピースーパーから移動させて三時間後。一騎、創太、澪、梓の四人と北見班の合計八人は病院から十分ほどの位置にあるホームセンターを訪れている。

 ここに三笠がいないのは、病院の屋上で二人の女性自衛官によるスナイパーライフルのPSG1の使い方を習っていて、同行していない。

 それはそうと、一騎たちがどうしてホームセンターを訪れているのか。その理由は非常に単純明快である。創太がとある物を作りたいと言い出したのだ。


 より正確には創太と自衛隊の合同で、なのだが。創太はどうしても作りたい物がある。それが、なんなのか一騎たちは聞かされないまま同行中。


「なぁ、創太」

「どうしたのだよ?」

「今度は一体、なにを作るつもりなんだ?」

「ふむ。ここまで来たら教えてもいいのだよ」


 意気揚々とした足取りで先頭を歩いていた創太は、ショットガンを担いだまま振り返り、はっきりと言った。


「パイプ爆弾を作ろうと思っているのだよ」

「「「「「「……」」」」」」


 全く予想していなかった内容に、誰もが思考停止と無言状態に陥る。その中でも最も早く思考を再開させたのは一騎だった。


「創太、聞き間違えだと思うんだけどさ。爆弾って言ったか?」

「言ったのだよ。手榴弾は投げるが、パイプ爆弾は病院周辺に設置して地雷のように扱うのだよ」

「「「「「「…………」」」」」」


 地雷を作ります。そう言われて「あ、そうなんだ」とか「いいな!」とか「マジか!? スゲェな!!」などの反応は一切なしだ。

 地雷作りなんて物騒な物、用意する必要があるのだろうか。この場における、創太以外が考えたこと。


「……。一応、聞いておこうか」

「うん、聞いておく」

「聞くしかないわよね」

「ロクでもない返事が予想できるんだけどなぁ」

「わかりきっていても、聞くしかないことはありますよ」

「はぁ〜。なんだか胃痛がしてきたぞ」

「なんなのだよ」


 創太は自分以外の面々から向けられる「こいつ、絶対に正気じゃないだろ」な視線を向けられても、全く動じることもなく聞き返した。


「誰が聞く?」

「北見さん」

「そうよね。ここは大人に丸投げするしかないかしらね」

「ちょ、ちょっと待て! 俺に聞かせるのか!?」

「俺たちが聞くより、班長が聞いた方がいいと思います」

「そうだそうだ。これ以上、武藤くんに頼るのは大人として恥ずかしい」

「だったらお前が聞けよ!」

「え? 俺はただの班員ですから。こういうのは班長でしょうが」

「お、お前らな」

「北見さん、頼みます」

「依頼」

「お願いしますね」


 完全に逃げ道を塞がれた北見が盛大なため息をして、創太へと視線を向ける。怪しい人間を見るような視線をされて、創太が不機嫌になるが誰も気にしない。


「なんのために、パイプ爆弾を作るんだ?」


 ――聞いた! 聞いたーーー!! 班長、俺はずっと付いていきます!!


 班員の一人が心の中でそう叫び、敬礼をするが態度や動作をしていないから気付かれない。


「深夜、ゾンビが来ていないか必死に探すよりも、地雷としてトラップにしておけば、接触して爆発。これによってゾンビを発見しやすくなるのだよ」

「「「「「「まともな答えが!?」」」」」」


 創太の予想外なまでの、まともな答えに一騎たちが驚いた。


「創太、なにか悪いものでも食べたのか!?」

「頭、ぶつけた?」

「創太くん、熱でもあるのかしら?」

「誰か体温計ないか?」

「勝手に商品を使わせてもらいましょうよ」

「それもそうだな」


 周囲から頭が急におかしくなったのではないか。この反応をされて、さすがに創太も声を荒げる。


「お前たちは僕をなんだと思っているのだよ!!!」

「「「「「「え? ゾンビ相手なら思い付きをすぐ行動に移して、ショットガンを持つと狂う変人?」」」」」」

「最後で疑問系になるな!! なのだよ!!!」

「いや、だってさ」

「ゾンビにショットガンは絶対なのだよ! 必須なのだよ!! ゾンビ=ショットガン!!! これぞ最高なのだよ!!!!!」

「落ち着け、近所迷惑だ」

「ほとんどの住人はゾンビ化して病院に殺到していたのだよ!! 僕らはそれを全滅させたから、ここら辺に人間なんかいないのだよ!!!」

「オレたちがいるじゃんか」

「近所迷惑の意味を調べるのだよ!!!!」


 創太の言葉が店内によく響く。腐敗臭がないから、ゾンビもいない。だからなのか、創太は遠慮なく大声だった。


「創太、回収するものはなんだ?」

「硝安とアルミなのだよ」

「アルミって缶?」

「ふっふっふ。この店には粉末タイプのアルミが売っているのだよ」

「そうなのか?」

「そうなのだよ」


 創太から回収する物として他にスコップやタッパーを指定されて、一騎たちは店内へ。一応、全員武装した状態でだけど。一騎は澪と一緒にスコップとタッパーの回収。

 一騎が買い物カートを押して、澪がカートにどんどん乗せていく。ちなみに病院側からの依頼で、市販の消毒液やゴム手袋なんかも同時回収。


「一騎くん」

「ん?」

「大丈夫かな?」

「創太の爆弾作りか?」

「そう」

創太(あいつ)が今まで作らなかったからには、理由があるはずだ。今回、作り出したってことは、作るための条件がクリアできたんだろ」

「例えば?」

「爆弾を作る人員に自衛隊を含んでいる、とか」


 話ながらも二人の手はあっという間に、回収を進めていく。スコップ十五本、タッパーは棚にあった全部。一騎たちが次に向かったのが、消毒液コーナー。

 普通のハンドソープや、インフルエンザ対策の消毒液に、調理する人間が使う消毒液、食器などに吹き掛けるアルコール類など。その次に家庭用ゴム手袋と、医療現場で使われるような数種類のゴム手袋を満載に。


「かなり集まったな。澪、先に戻っていようか?」

「うん」


 一騎と澪がラルゴに戻って、カートをそのまま乗せている頃。創太と梓もカートを押して硝安とアルミの粉末を回収していた。硝安二十キロの物を二十袋と、アルミ粉末五キロの物をバックヤードの在庫と合わせて五十袋。

 知識がある人が目撃したら、テロを行おうとしている人物がいる。そう判断してしまうだろう。素材豊富なパイプをニヤっと笑って運んでいる創太を見たら、即通報に違いないはずだ。


「これだけあれば、パイプ爆弾も十分な数なのだよ」

「作っている時に、私たちを巻き込まんで爆発なんてさせないかしら?」

「心配いらないのだよ。自衛隊に手伝わせるのだから」

「作る時は病院から離れてくれるのかしら?」

「爆発しても被害が出ないように駐車場でやるのだよ」


 創太の答えを聞いて梓が物凄く嫌そうな表情を浮かべ、さささっと距離を置いた。思考が毒されてしまわないようにと注意して。


「そろそろ行くのだよ」


 雑談終了とばかりに彼は告げて、カートを押して歩き出す。しかし、それも一通路進んだ場所で止まった。


「こ、こ、これは。新たなロマンで王道ができるのだよ!!!」

「えーっと」

「見たまえ! ショットガンに続いて、ゾンビ戦においては使う人間次第で無双可能な武器なのだよ!!!」


 興奮した様子で叫び、梓の目の前で創太が手にしたのはバッテリー式の電動ノコギリ。つまり電ノコである。彼は電ノコを少しばかり震える手で、商品棚から下ろす。


「ショットガン、電ノコ! ははははは、新たなゾンビ殲滅伝説の幕開けなのだよ!!!!」

「新たなって。古いゾンビ伝説なんてないでしょうに」

「ふはははははははははは! ゾンビよ!! 僕のゾンビ殲滅伝説のために(いで)よ!!! さぁ、ゾンビ共、殺されに出てくるのだよーーーーーーーー!!!!!」

「創太くん、思考回路は大丈夫なのかしら?」


 創太が楽しそうに、嬉しそうに笑い始めたのを見て梓は「あらあら大変」などと実に暢気(のんき)な感想を口にしていた。その後、創太の笑いを聞いた一騎と澪が合流し、一騎による没収宣告が出るまで騒々しいのだった。





 創太の電ノコ発見から三時間。そろそろ夕方という時間であり、一部の病院避難者や自衛隊は病院の調理師たちと協力して夕食作りをしている。

 残りの避難者は看護師たちからベッドメイキングを教わったり、一騎や澪に鳥越班、北見班と警備の自衛隊とバリケード作りに精を出していた。

 一騎と澪、梓に三笠は外来棟や入院棟などの使われていない一階と二階から、机やイスを運び出して、駐車場付近に並べている。


「足りない」

「この数だけだとな」

「事故車を持ってきて、バリケード代わりに立て並べていく?」

「全体の兄ちゃん、今いいか?」

「どうかしました?」


 三人が全くバリケード素材が足りていない状態で、どうしようかと話し合おうとした時、避難民の男性陣が一騎に声を掛けた。実に独特な呼び方で。


「病院近くの店や民家から、家具を引っ張り出して重ねるってのはどうだ?」

「いやいや、それだったら自衛隊に鉄柵を持ってきてもらうか、戦車を運転してきてもらってバリケード代わりに置いてくのは?」

「バッキャロー! ただの置物にするな!! 戦車はゾンビの集団を殺すには、絶対に必要な戦力だぞ」

「おいおいおい、それだったら今回みたいに戦闘ヘリで上空から攻撃すりゃ良いだろうが」

「それこそアホだろ。コブラがミサイルとロケット弾、機銃をぶっぱなした場所はとても車は通れる状態じゃない」

「あーん? てめぇの小さい脳みそで考えるよりも、俺の考えの方がもっとマシな案だっての!!」

「お? ()るかごら」

「ケンカか? 買ってやるぜ! 泣いて許しを求めないと()るからな」

「上等じゃ、ボケ!」

「沈めるぞ、ゴラ!」


 勝手に始まったケンカ。一騎は空気扱いだが、それもここまでのことだ。


「バリケードの話じゃないなら、三日間食事抜きの刑ですからね」

「んなっ!?」

「それはねぇだろ!?」

「だったら、まともな案を考えてください」

「こいつが!」

「このバカが!」


 怒鳴り合っていた二人がお互いを指差したところで、一騎はゾクっとする笑みを浮かべた。それも、非常に楽しそうな相手に脅しを掛けるような感じのを。


「三日間の食事抜きと、一週間トイレ清掃。それか、ゾンビの餌にされるか。どっちがいいですか?」

「「「「「「ぜ、全体の兄ちゃん、すみません!!!!」」」」」」

「反省するのはいいことです。さて、なにか案がないかを真面目に考えましょうか」

「一騎くん、凄い」

「あっという間に静めたわね」

「これが今まで自分たちだけで生き延び、警官とも友好関係を築いた武藤くん、か。逆らわないでおこうっと」


 澪、梓、三笠ののんびりとした会話を挟みながら、彼らはとにかくバリケードに使う机とイスを適当に重ねたりしていく。その途中で鳥越、北見班が合流。

 避難民の男性陣は、穴だけらになった事故車でも運んできて隙間なくピッチリと車間を詰めたらどうだろうかと意見交換開始。一騎によって食事抜きにされるのは、本当に嫌なようだ。


「バリケードの材料が少なすぎる。どうするんだ?」


 避難民の会話にもあった内容を、鳥越が警官を代表して聞く。


「自衛隊に簡易鉄柵などでも運んできてもらうか、なんとかしてフェンスを立てるしかありませんね」

「動くかはわからないが、各基地や駐屯地の責任者や指揮官に言って、装甲車両などを手配してもらおうか?」


 明石が会話に参加した。


「動かすにしても、かなり距離があるんじゃありませんか?」

「賀古市からなら一応、十台は出せると思う。上戸森まで法定速度を守るなら、一時間半もあれば来るぞ」

「十台、ですか。それだと厳しいですね」

「賀古市には二十台の73式装甲車があるが、五台は市内巡回に使っている。残り十五台のうちの五台は、食料と武器の運搬に使用している」

『屋上警戒班から各武装員へ。病院裏手の大通りからWZの集団を確認。数は百超え。ただちに武装し、射殺準備に取り掛かれ』

「了解」

「了解だ」

「了解した」

「任せておけ」


 鳥越や盛岡、北見、明石が答えて自分たちの銃を取りに移動していく。


「全体の兄ちゃん、俺たちもやるぜ」

「役立って見せるさ」

「銃は持てなくても、モップに包丁をガムテープで固定したら、槍としてゾンビの頭を滅多刺しにしてやる!」

「この病院はゾンビなんかに襲わせねぇぞ!」

「そうだ!」

「盛り上がってるところ悪いんですけど、どうして襲わせないんですか?」

「「「「「「「「衣食住があるから。特に飯が食えて清潔なベッドで寝られるから!!!!!」」」」」」」」

「そうですか。それじゃ準備を始めましょう」


 一騎は()る気に満ちた避難男性陣に対して、自己判断で動くように指示を出した。噛まれた時点で、射殺するという方針も伝えて。

 御巫姉妹と三笠を連れて彼はラルゴへ。自衛隊から借りた銃を持ち出して、弾込め済みのマガジンも渡す。三人の武装はMP7で、一騎はHK417を持って未完成のバリケードを放置したまま病院裏手へと向かう。

 裏手は一部がコンクリートの壁とフェンスによって仕切られている。四人が到着すると先に動いていた鳥越班と北見班、バリケード作りをしていた自衛隊が、フェンスの隙間から銃口を向けていた。


「ゥゥゥウウウ」

「ァァァァアア」

「ァァァア゛ア゛ア゛!」

「ギュァァア゛ア゛ア゛!」

「ヴォォォォオ゛オ゛オ゛!」

「ギィィイ゛イ゛ア゛ア゛!」


 集団から先行して迫るRZ数体。夕方時間で暗くなってきているが、それでもまだ十分明るい。


「セーフティー解除!」


 明石の指示に自衛隊は一斉にセーフティー解除。そして、有効射程距離に入ったタイミングで彼が発砲と指示を飛ばそうとした直後だ。


「フェンス越しなら、俺たちの出番だぜ!」

「滅多刺しにしろ!」

「首か頭を突き刺せよ!」

「ひっひ、ふー」

「ゾンビ相手にラマーズ呼吸なんかしている暇があるのかよ!」

「安全のために、安心のために。なによりも飯とベッドのために!!」

「「「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」」」」」」」


 明石としては、このまま銃で武装した人間だけで射殺をしたいのだろう。だけど、今回だけは彼らの放つ「()ってやるぞ!」という心の叫びを聞き、素直に場所を譲るようにと指示を出した。


「ゾンビを殺して夕飯にするぞーーーー!!」

「「「「「「おおおおおぉぉぉおおおお!!」」」」」」

「それじゃゾンビが夕飯になるぞ」

「嫌だーーーー!!」


 一騎の冷静なツッコミを受けて、彼らの戦意が少しだけ下がったものの、すぐ改善された。強烈な腐敗臭を漂わせながら、RZが到着したからである。


「ゥゥゥウウウ」

「ァァァァアア」

「ォォォオオオ」

「ガォォォオオ」

「ゴヌゥァアア」


 フェンス前に到着したRZは、フェンスを掴んでガシャガシャと揺すってなんとか壊そうとする。


「くせぇ!」

()れ!」

「おう!」

「さっさと片付けて夕飯だ!」

「今日は豪華なはずだぞ!」

「お前らゾンビに食わすものなどない!!」


 フェンスの隙間から突き出された即席槍が、RZたちの身体を滅多刺しにし、首や頭にも(とど)めとばかりに突き刺していく。程なくしてWZの集団と避難男性陣集団とのフェンス越しの戦闘が開始。


「おらおらおら!」

「ヒャッハーーー!!」

「死ね、ゾンビ共め!」

「お前らの分の、飯は食うからな!」

「ヒャッハーーー!!」

「ゥゥゥウウウ」

「ァァァアアア」

「ギュリィィイ」

「グヌゥァアア」

「ゾンビ、ゾンビ、死んでくれ。俺たちのために死んでくれ。俺たちが飯食うために、さっさと死んでくれ」

「ヒャッハーーーーー!!!」


 一名は頭のネジが吹っ飛び、別の一名は「ゾンビよ、食事の邪魔するな」という歌を即興で作って歌っている。


「これは」

「ヤバイな」

「飯が絡むだけで、こんなに人間って変わるのか」

「これからは、毎食ちゃんと提供するか」

「そうだな。襲われたくないし」


 避難男性陣の状態を見て、一部の自衛官たちは食事をちゃんと毎回出そうとしっかりと心に決めたようだ。


「グルルル!」

「ブルルル!」

「ウグググ!」

「ヴァワン!」

「ゾンビ犬、だと!?」


 順調にゾンビが減っていた途中で聞こえた唸り声。これには、さすがに自衛官たちが焦る。このままでは、フェンスを飛び越えてゾンビ犬が侵入してくると危惧して。


「僕に黙ってずいぶんと楽しそうなのだよ」


 彼らが避難民男性陣に引くよう指示を出そうとした直後に、心底羨ましそうな声が生存者全員の耳に届く。


「ちょっと待て。どうして右手に電ノコで左手にショットガンなんかを持ってるんだ?」


 一騎は文句を言おうとして振り返り、口にする内容を一瞬で変えた。創太の装備を見て。電ノコはバッテリー式で銃のトリガーのような部分を握っている間、電力供給されるタイプの物。

 それは問題ない。問題があるとしたら、それを持っている人間だろう。左手にウィンチェスターM1887改を持ち、凶悪な笑顔をしている。


「ゾンビに対する王道でロマンな武器、ショットガンと電ノコは最強で必須で絶対で持っているなら、ゾンビ殺しに参戦するのが運命なのだよ!!!!」

「そんな運命、聞いたことないぞ!!」

「ふっ。当然なのだよ。僕が運命だと決めたのだから!!」

「あっ、そう」

「行くぞ、ゾンビ犬共、なのだよ!!!」

「ヴァンヴァン」

「グルルルル」

「ギャブン」

「グルルルォォォオオ」


 一騎たちが見ている前で、創太はフェンスを飛び越えてきたゾンビ犬二十一体へと迫っていく。


 ――ブルルーーーーーーーン!!

 ――ズドーーーーン!!

 ――ズシュシュシュシュシュシュシュ!!

 ――カチャリ

 ――ブシュシュシュシュシュシュシュ!!


 最初に飛び掛かったのはレトリーバーと柴犬にチワワ。それぞれ一体ずつ。創太は背後から飛びかかってきたチワワを蹴倒す。そして足に噛み付こうとしたレトリーバー頭にウィンチェスターM1887改がぶっぱなされる。

 柴犬は創太の右腕に噛み付こうとするも、電ノコによって毛を失った頭に食い込んで頭蓋骨をも切り、脳を刃でズタズタに。創太はニィっと笑いながら、レバーアクション。

 続いて蹴倒したチワワの頭に、血が(したた)る電ノコの刃を向けてスイッチオン。頭部を破壊するだけでなく、胸部、腹部を無理矢理に解体していく。


「ふはははははははははははは!!!!」


 ――ズドーーーーン!!

 ――ズリュリュリュリュリュリュリュ!!

 ――カチャリ

 ――ブシュシュシュシュシュシュシュ!!

 ――ズドーーーーン!!

 ――カチャリ


「ふははははははははははは! ゾンビにはやはり、ショットガンと電ノコなのだよ!! これぞ絶対で王道でロマンで必須で奇跡で伝説で神話で世界史なのだよ!!!!

 さぁ、ゾンビ共よ! 僕に殺されるのを誇りに思いながら、さっさと死ぬといいのだよ!! くはははははははははははははははは!!!!!!!!!!」


 ――ズドーーーーン!!

 ――ズリュリュリュリュリュリュリュ!!

 ――カチャリ

 ――ブシュシュシュシュシュシュシュ!!

 ――ズドーーーーン!!

 ――カチャリ

 ――ズシュシュシュシュシュシュシュ!!

 ――ズドーーーーン!!

 ――カチャリ

 ――ドリュリュリュリュリュリュリュ!!

 ――ズドーーーーン!!


「あーはははははははは、くはははははははははは、むふははははははははははは! これぞゾンビ退治!! これこそ新たなストレス発散方法、ゾンビ殲滅!!! 画期的なまでのゾンビゲームなのだよーーーー!!!!!!!」


 頭がおかしいのではないか。ゾンビとゾンビ犬を殺し、実に楽しそうに笑い、ショットガンと電ノコを振るう少年。誰もが思うだろう。

 これなんてホラー映画じゃないのか、と。病院の避難男性陣は創太のゾッとするほどの笑顔を見て、顔を真っ青にしながら数歩ほど引き下がっていく。


「フェンスまで切るんじゃないぞ、いいな! 返事しろ創太!」

「くあーははははははははははは!! 大丈夫なのだよーーーー!!!! ゾンビ犬がもういないだと!? 誰なのだよ!! 僕の大切なゾンビ殲滅伝説の邪魔をする(やから)は!!!」

「自分で殺してただろうが!!!」

「なんだとーーーーーなのだよーーーーーー!!!!!」


 ――ズドーーーーン!!

 ――カチャリ

 ――ズドーーーーン!!

 ――カチャリ

 ――ズドーーーーン!!

 ――カチャリ


「電ノコが届く範囲にゾンビがいないのだよ。これじゃ退屈でしかない。僕は夕飯のメニューでも聞いてくるのだよ」

「あれだけ殺して退屈だと!?」

「ゥゥゥウウウ」

「ァッァァアアアア」

「ギュヤァァァアア」

「ギィィィイイイイ」

「ゥゥゥアアアオオ」

「さぁ諸君、ゾンビ退治を楽しむのがいいのだよ」


 創太による一方的なゾンビ殺し。その被害を免れていた他のゾンビもいたが、()る気を刺激された避難男性陣によって全身を滅多刺しにされて、一騎を含めた銃で武装した全員から頭に鉛弾を浴びせられて死亡するのだった。

誤字脱字報告、ありがとうございます。

可能な限りチェックしているのですが、どうしても見落としは避けられないので、本当にありがたいです。

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