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死域からの生還者  作者: 七夕 アキラ
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プロローグ


 四月上旬の某日、まだ時間は朝の六時。既に来栖野市では異常が始まっていた。年齢も職業も性別も違う十人の男女は、異様な発汗と高熱に悩まされながら来栖野駅へと向かっている。

 来栖野駅へと向かう途中で、顔色を土気色から真っ青にそして青白く変化させていった一人の三十代前後のOLが突然、血を吐いて道路へと倒れ込む。

 呼吸が浅く早く過呼吸のような状態で、身体を何度も痙攣させながら吐血を繰り返す。たまたまそれを目撃した中年男性のタクシードライバーが、車を近くに止めて降りた。


「大丈夫かい? 救急車でも呼ぼうか?」

「っひぅ、げふぉ、っこふぉあ」

「なにか持病でもあるのかい!?」

「ひべ、かひゅ、げふぉ」


 何か重大な持病でもあるのかと思ったらしいタクシドライバーは駆け寄る。声を掛けても返ってくるのは苦しそうな呼吸と、何回かの吐血のみ。


「どうしたんです?」


 そんな様子を見たランニング中の一人の青年が、何かあったのは間違いなしと判断して接近してきた。


「わからない。タクシーを運転していたら、あまりにも具合が悪そうにしていたもんでね。どうしたのかと思って声を掛けたんだが、返事がないんだ」


 青年の声に顔を上げたタクシードライバーは、青年に自身が目撃したことを話す。短い内容だったが、放置するべきではないと判断して青年がスマフォを取り出して救急に発信を行う。

 その間にも苦しそうな浅く早い呼吸音は二人にも聞こえている。


「げふぉ」

「大丈夫かい!?」


 急にOLがあまりにも大きく吐血。中年男性が振り返って声を掛けた時には、口から黒い液体を流していた。しばらく身体を激しく痙攣させていたものの、一分以内にはそれも終了。呼吸も完全停止状態だった。


「もしもし、救急車をお願いします。来栖野市でOLと思われる女性が――」


 青年が救急車の出動を要請をし始めた頃、タクシードライバーの中年男性は心臓マッサージだけでもと救命処置を開始した。人工呼吸をしないのは、OLの口回りが汚いからだろう。本能的な忌避感を抱かせているのだ。


「はい。場所は言った通りです。すぐにお願いします」

「どれくらい掛かりそうだって?」


 心臓マッサージの手を止めて、青年の方に身体を向けてしまった彼。


「つい今さっき、急病の患者を搬送したらしく上戸森市の消防署から救急車を回すそうです」

「そうか。すぐにでもき――――」


 すぐにでも来てもらいたい、そう言おうとしたのかもしれない。だが言えなかったのだ。彼が視線を外していたOLが背後から口をしっかりと開けて首へと噛みついたせいで。


「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁあ」


 首筋を思いきり噛まれただけではなく、周囲の筋肉がブチブチっと音を立てて食い千切られる。


「なにしてんだ!!」


 青年が慌ててOLを中年のタクシードライバーから引き離そうとする。


「いてぇ!! なんで噛むんだ!? 離せ!!」


 背後に回って羽交い締めにしようとした青年の腕を、死んでしまったと考えられることが出来たOLが噛み付く。そして、そのまま食い千切ってしまった。


「おっさん、だいじょ――――」


 大丈夫かと問おうとした青年は、腕を噛まれただけなのに急に吐血する。視線の先には噛まれたタクシードライバーも血を吐いていた。

 無事な腕で今度は警察へと電話を掛けようとした直後、OLが体当たり。青年は仰向けに倒された。その直後に彼は腹部に強烈な痛みを感じる。


「へ?」


 スマフォを取り落として、ゆっくりと首を上げて見えたのは、自分の腹部を食らうOLの姿だった。そこからは、激痛と絶叫のあまりに思考が働かず、ランナーの彼はただ食べられるだけの運命に。

 自分がこの後にどうなるか、そんなことを考えもせず、思いもしなかっただろう。そしてこの時、残り九人の人間も同じような状態になっていた。


 心配して近付いてきた人々に噛み付き、その身体を貪り始めていたのだ。この様子を一部の人間が撮影して、動画サイトに投稿するも、閲覧数が増えるのは事態が大きくなってからだった。

 そしてこの時、この光景というか事態は日本国内のみならず世界規模で起こっているのをまだ誰も知らない。

作者、初めてのゾンビ作品です。拙い文章ですが、お付き合いください。


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