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56.息子、邪竜に連れ去られる【後編】



 夜。

 ホテルの部屋にて。

 シーラと良い雰囲気になって、キスしようとしたところに……邪竜カルマが登場。


 カルマは変身をとき、邪竜から人間へと、その姿を変える。


 黒髪ロングの、美しい女性が、そこに出現する。


 こつ……こつ……こつ……。


 と足音を立てながら、リュージたちのいるベッドへと、近づいてくる。


 カルマの体からは、形容しがたい、禍々しいオーラがダダ漏れていた。


 暗黒を固めたような、どす黒いオーラが、カルマの体全身から放出されている。


「ひぐ……っ!」

「シーラっ。だ、大丈夫。僕が守るから!」


 リュージはシーラをかばうようにして、母の前に立つ。


「…………」


 ぴたっ、とカルマが足を止める。


「りゅー君」


 不気味なほど、穏やかな声音。

 母の顔は見えない。


 体からわき上がる漆黒のオーラが、顔のシルエットを隠す。


 ぎら……っと、目だけが、真っ赤に光り輝いていた。


「これはいったい、どういうことですか……?」


 これは、とは、この状況を言っているのだろう。


「どうしてりゅー君とシーラが、ホテルに泊まっているのですか? どうして、同じベッドにいるのですか?」


「そ、それは……」


 声だけで、体が重くなった。

 息が苦しい。


「ああ、失礼しました。オーラのせいでしゃべりにくいですね。すみません、すぐに消します」


 ふっ……とカルマがオーラを引っ込める。

 呼吸ができるようになった。


「りゅー君。教えてください」


 カルマが近づく。

 すぐ目の前までやってきて、リュージとシーラを見て、言う。


「ふたりは、今何をしようとしていたのですか……?」


 カルマが無表情のまま、リュージたちに問いかける。


 今、何をしようとしていたか……。


「…………」


 正直に答えると、どうなるか。

 そんなの明白だ。


 母がぶち切れて、ホテルを怒りにまかせて破壊するかもしれない。


 王都を火の海に沈めるかも知れない。


 母は最強のドラゴンだ。

 破壊の化身だ。

 正直に答えて、良い未来が待っているようには、思えない。


 最悪、シーラを……。


「りゅー君?」

「…………」


 震える。怖かった。母に真実を告げることが……。


 だが、しかし。


「リュージくん……」


 背後で、愛しい彼女が、震えていた。

 その瞬間、リュージの体に活力が宿る。


 守らないと、という強い使命感に駆られた。


 この愛おしい少女のことを、絶対に守るんだ。


「母さん。聞いて」


 リュージは覚悟を決めた。


 きっ……と母を見やる。


「僕は……シーラとホテルに泊まりに来たんだ。1泊2日の旅行券が手に入ったんだ。……僕はシーラとここに来たかったんだ」


 リュージの返答を聞いて、しかしカルマは黙っている。


「それは……お母さん、聞いてませんでしたよ」

「……い、言わなかったんだ。言ったら、止められると思って」


 母からの圧が、大きくなった気がした。


 その場で倒れそうになるのを、ぐっと答える。


「止められると思って、黙ってここへ来た、ということですよね。なぜでしょうか?」


「それは……それはっ!」


 言え。

 言うんだリュージ。男だろ!


 好きな女に、告白するためだ。

 好きという気持ちを伝えるのを、母に邪魔されたくなかったから。


「僕は……僕は! シーラのことが!」


 思いを伝えようとした、そのときだ。


「変身!!!」


「へっ?」


 カルマが、邪竜の姿に変化する。


 天井を突き破るほどの、巨大なドラゴンが出現。


「うわああああああ!」

「りゅ、りゅーじくんっ!」


 カルマはガバッ……! と大きく口を開くと、ひょいっ、とリュージをつまむ。


 背中にぽいっとリュージを乗せると。


 バサァッ……!! と大きく翼を広げた。

「母さん! ちょっと何してるの!」


 リュージの言葉を無視して、カルマはそのまま、勢いよく上空へと飛び立つ。


 ばごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!


 ホテルの天井を突き破ると、カルマは光の速さで、空へとすっ飛んでいく。


 リュージの体は、いつの間にか薄い膜のようなものが覆われていた。


 たぶん、無属性魔法【結界バリア】だろう。


 母の背中に乗せられて、リュージは動けなかった。


 カルマがあまりの早さで、空へ空へと飛んでいくからだ。


 さらに上へと飛んでいく。


 凄まじい速度だ。

 あっという間に地上が小さくなり……。


 ……気付けば、黒い空間にいた。


「こ、ここ何……? どこ……?」

 

 リュージが戸惑っている間にも、カルマが黒い空間を飛んでいく。


 ややあって、大きな石? の上に着陸した。


「か、母さん……? ここは?」


 リュージは母に尋ねる。


【ここは月です】

「つ、月!?」


 月とは、空に浮かぶあの月のことだろうか?


 つまりカルマは、自分を乗せて、ここまで飛んできたのだ。


 遥か上空、月のある場所まで。


「ど、どうして……?」


 するとカルマは、リュージを乗せたまま答える。


【しばらくここで暮らしましょう】



 

次回もよろしくお願いいたします!

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