表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/383

54.邪竜、息子の(貞操の)危機に気付く

お世話になってます!




 リュージたちが王都のホテルに到着し、部屋の探索をしている、一方その頃。


 深い眠りから目覚めた、邪竜カルマアビス。

 

 場所は寝室だ。

 部屋を見回す。


「ハッ……! 息子がいない……!」


 ぴきゅーんっ! とカルマは直感的に気付く。

 母ならば、息子がそばにいないことに、すぐに気がつけるのだ(本人談)


「冒険? 仕事でしょうか?」


 すると……。


「とーう」


 ぴょんっ、と小さな女の子が、カルマの体に抱きついてくる。


 褐色に金髪。ぬぼっとした表情がかわいらしい、名前をルコ。

 リュージが生んだ(誤用にあらず)、リュージの娘であり、カルマのかわいい孫娘である。


「おばあちゃま」

「あーん、なんですかルコぉ~」


 カルマは孫から、祖母と呼ばれることに、あこがれを抱いていたのだ。


 よいしょ、とカルマはルコを抱き上げる。

「すきあり」


 きらーん、とルコが目を輝かす。

 手から紫色の雲が発生する。


「るぅ。ひっさつ。これ。つかった」


 だがしかしだ。


「? 何ですかこれ……?」


 眠りの雲が発生しているというのに、なんとカルマは、眠っていなかった。


「!」


 これには瞠目するルコ。


「おかしい。だって。きいてた。さっき。ぐっすり」


 戦慄する孫をよそに、カルマはケロリンパとしている。


 カルマはあずかり知らないことだが、ルコの超強力な魔法に対する耐性を、カルマが無自覚に獲得していたのである。


 象さえも一撃で眠らせるほどの、強力な眠りの力。

 それさえも、何度か食らっただけで、効かなくなっている。


 まさに規格外だった。

 というかそもそも、何度か目覚めてる時点でおかしい。

 これは一度眠ったものは、術者が許可しない限り、目覚めないはずなのだから。


「ルコ。どうしました。きゅー」


 カルマが嬉しそうに、ホントに嬉しそうに、ルコのことを抱きしめる。


 ルコは焦った。

 この母を、早く眠らせないと!


 すでにリュージ不在は気付かれている。

 そこから一歩、じゃあどこへいるのか……? へと進まれると困る。


「おばあちゃま。るぅ。ねむーい」


 ルコは別の手に出ることにした。

 強制的に眠れないのなら、一緒に寝れば良い!

 

 注意を自分に向けることで、リュージへの気をそらす作戦だ。


「そうですか! ではおばあちゃまと一緒におねんねしましょうね!」


 よしよしこの流れだ。

 これでルコと一緒に寝れば良い。


「でもちょっと待ってくださいね。ちょっとりゅー君が今どこにいるのか、確認してから。そしたらおねんねしましょう」


 しまった! カルマはリュージを、何よりも優先させる人だった。


 ルコは焦った。

 このままではまずい。


「あ、あーん。わーん。ねむいよー」


 秘技・泣いて気を引く作戦だ。

 これなら放ってはおけまい!


「おーよしよし。かわいそうに。そうですか、ではお婆ちゃまが眠くなるよう、魔法をかけてあげますね」


 そう言うと、カルマの右手に魔力が集まる。

 何だと思っていると……そこには、紫色の雲が発現する。


 何を隠そう、ルコが使った強力な眠り魔法【眠雲スリーピング・クラウド】だ。

 ルコはにやり、と内心で笑う。


 自分の得意な魔法だ。

 得意な魔法が、食らうわけがない。


「はい、ねんねんころりーよー」


 カルマがとっても上手に子守歌を歌いながら、眠りの雲をルコに近づける。


 甘いわ。そんなもの、食らうわけが「ぐぅー……」


 ……と、ルコが秒で、眠った。


「初めて使いましたけど、すごい効き目ですね、この魔法」

「ぐー」


「というか私、こんな魔法覚えてましたっけ?」


 はてな、とカルマが首をかしげる。


 邪神ベリアルを食らい、神を超える能力を得たカルマ。


 彼女の保有するスキル・魔法の数は、それこそ、持っている本人が把握しきれないほどである。


「ま、いいです。なんか孫を眠らせたいぜと思ったら出ましたが、都合良く眠りの魔法だったみたいですね」


 そんな理由で魔法を……とこの場でツッコむものはいない。


 ルコは眠っているのだ。


「ではりゅー君はどこにいるのでしょーか?」


 カルマは万物創造スキルで、【鏡】を作る。


 これは町の上空に浮いている、天空城。

 そこから監視映像を映し出す、特別な鏡だ。


 天空城の自動息子追尾システムを起動させる。


 と、そのときだ。


「だ、めぇ……」


 ルコが目を覚まして、カルマから鏡を奪ったのである。


「ルコ。おねむじゃないのですか?」

「だ、め。ねむい。だめ。ぱぱ。まもる。これ。だめ」


 ルコは鏡を体に抱えると、その場にうずくまる。

 まるで卵を守る、母鳥のようなけなげさだ。

 

「…………」


 カルマは、さっきのセリフに違和感を覚えた。


「ルコ。りゅー君を守るとは、どういうことですか?」


 この子が息子を守る。

 文字通りの意味には、どうにも思えなかった。


「いえない。やくそく。るぅ。ぱぱ。しーら。まもる」


 んふー! と鼻息をつくルコ。


 おや、おやおやおや。

 何かまた、孫が墓穴を掘った気がしましたよ。


「…………るーこ。パパとシーラは、一体どこへ行ったのかな~?」


 カルマの体が、かたかたかた……と震える。

 いやまさか、そんなことない。

 だが……という悪い予感が、まとわりついて離れない。


「いえない。やくそく」

「そうですか。何を言ってはいけないと約束しているのですか?」


「いえない。ぱぱ。しーら。おでかけ。する。いえない」


 ……。

 …………。

 …………イマ、ナント?


「は。しまった」


 言ってしまった。

 放ってしまった言葉は、撤回できない。


 カルマの耳に、しかと届いた。


 息子が。

 友達と。

 おでかけ。


 カルマは音速で、新しい【鏡】を作る。


 監視映像が鏡に写りだそうとした……そのときだ。


 ピチュンッ……!

 ぱりぃいいいいん!!!


「…………」


 光線が走り、カルマの鏡を割ったのだ。

 

 見やるとそこには、ルコが指で鉄砲を作っていた。


 魔力の残滓を感じる。

 おそらく、魔力を弾にして、射出したのだろう。


「……。ルコ、何を隠してるのですか?」

「いわない。るぅ。まもる」


「そうですか……」


 孫と、そして息子が、なにかを隠れてやっていることは確定したようだ。


 ルコはリュージが、シーラとでかけたと言った。


 これは……まさか、デートだろう。

 息子が、母に黙って、女の子とデート。


「守らないと……りゅー君を、貞操を守らないと-!」


 カルマは転移スキルを発動させようとする。


 ピチュンッ……!

 ばしいぃっ!!


 ルコが魔法弾を打ち、カルマの足下に、穴が空く。


「ルコ……。止める、ということですか?」

「るぅ。とめる。ぱぱ。まもる」


「…………」

「…………」


 しばしの静寂。

 

 ややあって、ふたりは口を開く。


「「変身!」」


 次の瞬間……。


 ばごごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!


 カルマの家が大爆発を起こす(平常運転)


 ビュンッ……! と遥か上空に、超スピードで、巨大な物体が飛び上がった。


 空の上には、2体の化け物が相対する。


 見上げるほどの、漆黒の邪竜。

 同じく巨大な、半竜の暗黒騎士。


【ルコ……。どきなさい】

【むり。できない】


【そうですか……ならば、押し通す!】

【かかってくる。るぅ。つよく。なった】


 最強の邪竜と元魔王四天王の暗黒騎士。

 遥か上空にて。

 ふたりが、激突したのだった。

次回もよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] リュージサイドの2人とカルマサイドの2人のやってることの温度差が激しすぎ!笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ