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48.息子、カップルペア旅行券を当てる

お世話になってます!



 母と冒険ピクニックへ出かけた翌日。


 その日の夕方、リュージとシーラは、明日の冒険に備えて、カミィーナの街で買い物をしていた。


 カミィーナは辺境の街ではあるものの、近くに首都マシモトがあるため、人も物も多く集まる。


 マーケットには活気がある。


 夕方は一番人の混む時間帯だった。


「あぅ……リュージくぅ……ん」


「わっ、シーラ」


 人混みに飲まれて、シーラが流されていきそうになっている。


 リュージは彼女の小さな手をハシッ、とつかむ。


「あ、ありがとなのです……」


「ううん。気にしないで。……えっと、はぐれないように、手、つなごうか」


「はいっ」


 シーラが嬉しそうに、リュージの手を握る。

 

 白く柔らかな、それでいて小さな、女の子の手。


 リュージはどぎまぎとしてしまう。


 ……この場をもし母が目撃していたら。


 おそらくリュージとシーラの間で、大爆発が起きてお母さん許しませんよぉ! となるだろう。


 しかし今、カルマルコは、一足先に家に帰って、夕飯の準備をしている。


 冒険の買い出しは、母はノータッチなのだ。(人間基準で必要となる、冒険の道具がわからないため)


 リュージはシーラと手をつなぎ、つかの間のデート気分に浸る。


 ややあって道具屋の前に到着。


「ついちゃったね……」

「はい……残念……」


 照れ笑いするリュージたち。


 さておき。


 道具屋にて必要な物を買いそろえる。


 支払いを済ませると、店員さんからチケットをもらった。


「これはなんでしょうか?」

「福引きのチケットだよ。カミィーナのマーケットの入り口のところでやってるんだ」


「へぇ。福引きかぁ……」


 興味はあった。だがまあこういう手合いは、だいたいあたらないのが相場というもの。


 リュージは帰りにちょっと、記念に福引きをしていこうかなと思った。


 リュージは受け取ったチケットを持って、道具屋を離れる。


 シーラとともに店を回ると、武器や防具屋でも同じチケットをもらった。


 それらをあわせると、5回、福引きを引けるようだった。


 一通りの買い物を終えたリュージたちは、マーケットの入り口までやってくる。


 列ができており、その先にはテントと、そして【ガラガラ】がおいてあった。


「アレって正式名称、なんて言うんだろうね?」


 リュージたちは列に並びながら、雑談する。


「ううん……。ガラガラさん、とか?」


 かわいいなぁシーラは、と思っていると、リュージたちの番になる。


 受付の人にチケットをわたし、シーラが3回、リュージが2回、ガラガラを回すことになった。


「一等は王都シェアノにある高級ホテルの1泊2日宿泊券だ! さあ、一等目指してがんばってくれ!」


 すごい。王都で一番値段も建物の高さも高いホテルの、無料宿泊券がもらえるらしい。


「がんばろうね、シーラ」


「はいっ、がんばるのですっ!」


 おー! とシーラが子供っぽく両手を挙げる。


 周りで見ていた人が、微笑ましく見てきた。幼い見た目のシーラを、どうやら子供だと周りが思っているのだろう。


 実際には成人しているのだが。


「あうぅ……」


 シーラが顔を真っ赤にして、もともと垂れているうさ耳を、さらにぺちょんと垂らす。


「気にしない気にしない。ほら、シーラ回して」


「は、はい……。てりゃー」


 くるん……ぽとん。


 くるん……ぽとん。


 くるん……ぽとん。


 どれも白い玉。はずれだった。


「あぅ……残念……」


 シーラは残念賞のあめ玉をもらった。


 続いてリュージの番だ。


「頑張れリュージくん! ふぁいとー!」


「応援ありがとう」


 と言いつつ、でもやっぱりこう言うのは、1等がでないように作られてるんだろうなと、リュージは思った。


 幸運なんてそうそう起きないものである。

 半ば諦めつつ、リュージはハンドルを2回、回す。


 くるん……ぽとん。


 白。

 

 ほら、ハズレだ。こう言うのはあたらないのだやっぱり。


 リュージは諦めモードのまま、2回目へと突入する。


 くるん……ぽとん。


「……………………え? き、金?」


 そこにあったのは、金の小さな玉だ。


「大当たり-!!!」


 福引きの主催者が、ハンドベルを鳴らしながら、声を張り上げる。


「え、え、大当たりって? え、い、一等賞!?」


 リュージはシーラを見やる。


「すごいすごい、リュージくんすごいのですー!」


 シーラを含む周りにいた人たちが、ぱちぱちぱちぱち! と拍手で祝福してくれる。

「おめでとうラッキーボーイ! はいこれ、一等の賞品だ!」


 主催者が封筒を、リュージに手渡す。


 中には高級そうなチケットともに、宿泊券の文字が書いてある。


「シェアノ・メトロポリタンホテルで1泊2日! カップル宿泊券、および王都までの旅行券だ。獲得おめでとう!」


「ありがとうございます! ……って、え?」


 主催者の言葉に、リュージはハタと、気付く。


 今この人は、なんと言っただろうか。


「か、」「ぷる?」


 リュージとシーラは、ともに首をかしげる。


 主催者はニコニコ笑いながら「そうとも!」と大きくうなずく。


「カップル限定の宿泊券だ! ちょうどいいことに、君らカップルだろう? ふたりで楽しんできてね!」


 主催者の言葉に、リュージとシーラは、言葉を失う。


 ちら……とリュージはシーラを、彼女はリュージを、見やる。


 目が合うと、顔を真っ赤にしてうつむく。


「えと……」

「あの……」


 照れるリュージたち。


 せっかくの高級ホテル宿泊券。


 捨てるのはもったいないし、誰かにあげるのも、ちょっともったいなさすぎる。


「ど、どうしようか……」


「えっと……それは、リュージくんがゲットしたチケットなのです。リュージくんが行きたい人と、行けば良いと思うのです……」


「いや……そうはいっても、僕、別につきあってる人とか、いないし……」


 なら一緒に行かないか……? とリュージはいいかけた。


 だが、そのときだ。


 脳裏に、母カルマの笑顔が、横切ったのだ。


「…………」


 あの過保護すぎる母のことだ。


 シーラと一泊二日の旅行へ行くといったら、どうなるなんて、目に見えている。


 しかし、リュージとしては、シーラとともに旅行へ行きたい。


 さてどうするべきだろうか……。

次回もよろしくお願いいたします!

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