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06.邪竜、冒険へ出かける準備する【後編】

前後編の後編です!前編まだ読んでない方は、そちらから!



「身体の調子でも悪いのですか!?」


 新居1階のリビングスペース。


 リュージがひとりで寝るとかいったものだから、カルマは息子の体調を気にしてきた。


 カルマが最上級光魔法(治癒魔法)を発動させようとしたので、「違うよ」とリュージは答える。


「そうじゃないよ。なんかその……嫌なんだよ。すっごく」


 ……以前ならば、周りの目がなかった。

 

 しかし今はシーラという、同世代の、しかも異性が近くにいる。


 ゆえに……リュージは、もう前のように母にべたべたとされたくなかった。


 その姿を……あのウサギ獣人に見られたくないのである。


「…………」

「ごめん。おやすみ」


 リュージは背後を振り返る。


 母が石像のように、硬直していた。


 ……ショック、だよね。


 と胸が痛むのを感じる。母は息子じぶんに邪険にされるのが、一番傷つくのだ。


 それでも……リュージは、嫌だった。


 同世代の女の子の前で、母に何かをしてもらうことも。


 母と一緒にいることも。


 前よりずっとずっと、恥ずかしく、感じるようになったのである。


 そして……翌朝。


 リュージが新居(無許可)の2階から降りていくと、


 ……母が同じ場所で固まっていた。


「母さん……」


 1階のリビングスペースには、石像と化した母がいる。


 あれから何時間もたっているのに、ずっとこの場所で立っていたみたいだ。


「母さん……。その……」


 リュージは辺りを見回す。シーラがいないのを確認し、小声で言う。


「……ごめんね」


 すると母は「ふっかつぅうううう!!」びょんっ! と立ち上がった。


 石化が解かれた母は、


「いえいえりゅー君が気にする必要ないですよう! 昨日のはあれでしょ? ちょっっと! 一時的に! お母さんと一緒にいたくない気分だったとかそういうあれですよねっ? 一時的に!」


 一時的じゃないんだけど、と言いかけて、やめた。


 また石化させたらかわいそうである。


 ややあって2階からシーラが降りてくる。


 リュージは慌てて寝癖を手で整え、「おはよっ!」と答えた。


 シーラが来た後、母の用意した朝食を、みんなで食べる。


 食後、リビングにて、リュージたちは今日の活動内容について話し合う。


「りゅー君は、このまま一日じゅう、お母さんとこの部屋で過ごすのはどうでしょうか?」


「……さて、えっと、シーラさん。今日はどうしようか?」


 母を無視スルーするリュージ。しかし「華麗にスルーする息子かっこいい!」と好意的な解釈をする母。


「えと、その……せっかくパーティを組むので、できればモンスターと、戦ってみたいのです」


 確かに、昨日と違って、今日はふたりだ。

 モンスターと戦える。


 なぜなら、片方が傷ついたとしても、もう片方がカバーできるからだ。


「いいね、そうしようよっ」


 リュージは興奮していた。


 冒険者と言えば、モンスターとの戦い。


 仲間たちと苦闘の末に、モンスターを倒して、勝利を祝う。これぞ冒険者!


 リュージのあこがれた姿である。

 

「りゅー君が戦わずとも、お母さんがいればモンスターなんてイチコロだと思うのですが?」


 はいはい、とカルマが手を上げて主張する。


 リュージは、はぁ、と吐息をはいて言う。


「母さん……」


「はいはいなんでしょ?」


「もしかしなくてもだけど……僕らに、ついてくるの?」


 言わずとも答えはわかっていた。


 だがもしもということもある。


 昨晩のリュージの拒絶に、母が一晩で【そうよね、息子はもう、子供じゃないんだもんね】


 と改心してくれた可能性が……ちょびっとだけあった。


 が。


「? 何を不思議なことをおっしゃってるのですか、りゅー君」


 ……むしろ首をかしげられてしまった。


 母が冒険についてくるのは、確定事項であるらしい。


「母さん……ついてこなくて良いから。母さんはここで僕らの帰りを待っててよ」


 ちら、とリュージはシーラを見る。


 彼女は首をかしげた後、にぱーっと笑った。


 ……かわいい、と思ったあと、目線をそらす。


 そう、昨日と違って、同世代の異性シーラがそばにいるのだ。


 母には……絶対に、ぜぇったいに、ついてきて欲しくない。


 だって恥ずかしいじゃないか。15にもなって、母親同伴で行動するなんて。


 しかも、同い年くらいの女子と一緒に出かけるときに。


 だがしかし、母はついてくる気まんまんだった。


 やめてと言っても危ないからだめ、と言ってくる。


「もうっ! ついてこないでって!」


 リュージは熱心に母に説得した。


 母は全く、息子の言いたいことが、わかってないようだった。


 それでも何度も何度もついてこないでと訴えた結果、「……しょうがないですね」と折れてくれた。


「では代わりと言ってはアレですが、こちらを装備してください」


 ぱちんっ! とカルマが指を鳴らす。


 するとリュージたちの前に、どちゃり! と道具の山ができたではないか。


 ……見るからに強そうな武器、頑丈そうな防具、神秘性を秘めた水晶などなどが、山積されている。


「はわわっ。こ、これ……す、すごいマジックアイテムじゃあ……」


 シーラが水晶のついた杖を持ち上げて、恐れおののいている。


「ふつーの杖ですよ。ふつーの」


 と、母が言う。


 ……しかしこのウルトラ過保護の母が、普通のアイテムなど出すだろうか。


 きっと自分たちの身に余るほどの、超絶すごい道具を出しているに違いなかった。


 母がついて行かないのだ。ケガしないようにと、きっとすごいやつが出ているだろう。


 ……それでも、リュージたちには、そのアイテムがどれほどレアなのか、わからなかった。


 なにせリュージたちには、【鑑定】スキルがないからだ。


「武器とか防具とかアイテムとか、ちゃんと装備してくださいね。嫌ならお母さんがついて行きますよ?」


 ……拒否権は、ない。


 結局リュージは、母の出してくれた超級アイテム(推定)を身につける。


 冒険の準備は整った。


 母は、今回ついてこない。


 やっと普通の、冒険者生活がスタートするんだ!


 ……と思っていた時期が、僕にもありました。

お疲れ様です!お昼にまた更新します!……したい。する!


次回もフルパワーで書きますので、よろしければ下の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!励みになります!


ではまた!

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