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45.邪竜、孫と二度目のバトル【中編】



 息子が孫を追って、いずこへと消えてしまった。


 カルマはその瞬間に、動き出す。


「シーラ!」

「え?」


 カルマはまず、【最上級転移ハイパー・テレポーテーション】を使って、シーラを安全な、ダンジョンの外へ連れ出す。


「あなたはここで待機を! 私はりゅー君たちを助けに行きます! 良いですね!?」


「は、はい! いってらっしゃいなのです!」


 カルマは再び、【最上級転移ハイパー・テレポーテーション】を使用する。


 神を殺して手に入れたスキルであるこれは、たとえ一度も行ったことのない場所へでも、瞬間移動できるというチートスキルだ。


 カルマはスキルを発動させ、リュージたちの元へと強く念じる。


 視界がゆがみ、たどり着いたのは……ダンジョンの内部だ。


 土のむき出しの地面。


 あたりには無数の穴が開いている。


「りゅー君!」


 地面には……息子が倒れていた。


「りゅー君!!!!!!!」


 頭が真っ白になって、カルマがリュージの元へと駆けつける。


 死という単語が頭をかすめて、我を忘れそうになる。


「りゅー君! 大丈夫っ!? りゅー君っ!」


 息子の様子を見るが……。


 しかし、息子は、無事のようだ。


 体のどこにも、ケガない。五体満足だ。

 

 一カ所だけ、ヘビにかまれたような跡が、腕にあった。


 だが毒が体に回っているような様子もない。

 

 念のために解毒の魔法、状態異常回復の最上級魔法を使ってみたが、何の変化もなかった。


 息子はすぅ……すぅ……と眠っているだけだ。


「よ、良かった……無事で……」


 カルマは心からの安堵の吐息を漏らす。


 そして……カルマは気がつく。


「な、なんですか、これは……?」


 リュージの周りには、数え切れないほどのヘビ…………の、死体が転がっていた。


「何ですか、この量……。全部死んでる……? りゅー君がやったのでしょうか……?」


 とそこで気付いた。


「! そうだ、ルコ! ルコ! どこにいますかっ!?」


 そうだ。息子は孫を追いかけていったのだ。


 バカが。息子の安否を確かめただけで、何をホッとしているのだ。


 大事な家族がもうひとり、いないではないか。


「ルコ! ルコっ!」


 と孫を探した……そのときだ……。


【か。る……。ま……】


 と、孫の聞き慣れた声がした。


「ルコっ……! 良かった無事で……」


 と、そこでカルマは気付く。


 確かに、ルコはいた。


 だがそれは……もとの、かわいらしい、褐色の幼女の姿では、なかった。


 そこにいたのは。


 巨大な、黒い鎧の、悪魔だった。


「ルシファー……」


 カルマはその姿を見たことがある。


 二度だ。


 一度は、初めて会ったとき、遺跡の中で出会った。


 二度目は、牛鬼オーガの巣で。


 だが……二度見たその姿と比べて、今のルコは、何か変だった。


 前は、巨大なただの鎧だったが。


 今は、下半身が、龍のように、変化していた。


 上半身は鎧を着込んだ人間。そして下半身は、龍。


 という、前回よりもさらに、異形の姿へと、ルコが変化していたのだ。


【か。る……。ま……】


「ルコっ! そうです、カルマです、お母さんですよっ!」


 ルコの前に、息子をかばうようにして立つ。


【ぱ。ぱ……。は?】


「りゅー君は無事です! ルコ、いったい何があったのですか!?」


 ルコは普段よりも、さらにたどたどしい口調で、事情を説明する。


 曰く。


 ここはモンスターハウスというトラップ部屋。


 穴の中から、無数のストーンスネイクが現れて、リュージたちに襲いかかってきた。

 リュージはルコをかばって、蛇の一匹にかまれた。


 ……後の記憶は、曖昧だという。


【る。ぅ。あ。た……ま。ま。しろ。き。づい……たら。へ。び。全部……こ。ろ。し……てた】


 どうやら息子のピンチを、孫が救ってくれたようだ。


 ……おそらく、その際に今の下半身龍の姿へと変身したのだろう。


「ルコ。ありがとう……。心から……あなたに感謝します。息子を……」


 救ってくれて、と言おうとしたのだが……。


【る。ぅ……の。せい……だ】


 ぶるぶる……とルコが震え出す。


「ルコ?」


【る。ぅ……が。血……。美味しそう……て。思。っ……た。せいで。ぱ。ぱ。が……。ぱ、ぱがぁ……!!!!】


 ルコはよくわからないことをつぶやくと、その目を血のように赤く染める。


【ぐ……GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!】


 次の瞬間、ケモノのような咆哮を上げるルコ……。


 否、そこにいたのは、理性を失った化け物。大悪魔……ルシファーだ。


【GUAGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!】


 ルシファーはカルマたちめがけて、その大きな腕を振るう。


「!」


 カルマは急いでリュージを回収すると、お姫様抱っこした状態で、その場からジャンプ。


 元いた場所に、ルシファーの巨大な腕が落ちる。


 どごおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


 カルマはルシファーから距離を取って、改めて相手を見る。


【GAAAAAAAAAA! GYUGAAAAAAAAAAA!】


 どうやらルシファーは、理性を失って暴走しているようだ。


「ルコ……。いったいどうして……」


 どうして、彼女は化け物の姿に戻って、暴れてしまっているのだろか。


【GAAAAAAAAAAAAA!!】


 ルシファーがカルマめがけてまた腕を振るう。


「くっ……!!」


 カルマに考える暇を与えてくれない。


 息子を抱きかかえたまま、カルマは回避行動を取る。

 

 どががぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!


 腕が地面にぶつかった瞬間、青い爆発が起きる。


 先ほどよりも大きな衝撃。


 石つぶてがカルマたちめがけて飛んでくる。


「くっ……!」


 カルマは【結界バリア】の魔法を発動させ、衝撃と石つぶてから息子を守る。


 カルマにビシ……! バシッ……! と人間の顔ほどある石がぶつかるが、無傷だ。


 邪神を食らって最強の体を手に入れたカルマにとっては、そんなもの痛くもかゆくもない。


「ルコ! 目を覚ましなさい! ルコっ!」


 カルマの悲痛な叫び。


 しかしその声は届かない。


 ルシファーは、空を泳ぐように、ぎゅんっ! とカルマたちに近づく。


 その長い龍のしっぽを用いて、カルマたちに襲いかかる。


 鞭のようにしなるそれを、カルマは手で受け止める。


「やめなさい! ルコ!」


 だがルシファーはカルマの声を聞かず、


【GU…………】


 と大きく息を吸い込む。


 魔力が、体の中で、燃焼していた。


「! あれは……!」


 その動作に、カルマは見覚えがあった。

 

 何を隠そう、自分の得意な技だからだ。


「りゅー君!!!」


 カルマはリュージを、断腸の思いで、遠くへ投げ飛ばす。


 その体に結界を張っているので、もし仮に壁にぶつかったとしても、無傷だろう。


 それよりも……。


 今は、この場にいる方が、危険だ。


「グッ……!!!」


 カルマは何十、何百という結界を、自分ではなく……リュージに張る。


 今この瞬間、襲いかかってくるであろう攻撃に備えて。


 ルシファーは体を反らす。


 莫大な量の魔力が、彼女の口周りに集まる。


 わかる。


 何が来るのか……自分自身、よくわかってる。


【GUGAAAAAAAAA!!!】



 びごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


 それは……カルマお得意の、ドラゴンの息吹ブレスだ。


 青い破壊の光が、カルマめがけて飛来する。


 圧倒的なまでの破壊力を秘めた光線に。


 カルマは……。

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