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44.息子、みんなで温泉(母お手製)に入る【後編】


 母がリュージたちを連れて、やってきた場所はというと……。


 拠点であるカミィーナの街からほど近い森の中。

 

 というか、今日行った森。


 そこの奥地に……。


「お、温泉って、あったっけこんなの?」


 そう、森の中に、見事な露天風呂があるではないか。


 ここカミィーナの近くには、【天竜山脈】という、活火山がある。


 なのでカミィーナや、その近くのズーミアには、温泉がたくさん沸いているのは、知識として知っていた。


 ……だが、こんな森の中という、へんぴな場所に温泉が湧いているなんて知らない。


 たぶん、自然にできたものではないだろう。


 床とか石が敷き詰められているし、木のいすとか、おけとか、まるで大衆浴場のようではないか。


 人の手が加わっている。……いったい誰がなんて、聞く必要もなかった。


「どうですお母さんお手製の温泉はっ?」


 背後を振り返ると……。


「か、母さん!? し、シーラもっ?」


 裸にバスタオル一枚という格好の、女性陣がいた。


 モデルも裸足で逃げ出す、魅惑のボディの母。


 その体をタオル一枚だけが覆っている。だが何度も繰り返すが、特にリュージは母を見て何も感じない。


 それよりも……。


「あぅ……恥ずかしいのです……」


 隣で顔を真っ赤にして、うつむいている少女の方に、リュージは目がいってしまう。


 シーラは年齢の割に、体つきはだいぶ幼い。


 胸にも尻にも、肉が全くついていない。ほぼ絶壁のそれだ。


 だが真っ白な素肌を眼前にさらし、顔と首元まで真っ赤に染めて、恥ずかしがっている……。


 それを見て、リュージは自分も顔を赤くして、さっ……と目をそらす。


「ぱぱ? かお。まっか? かぜ?」


 娘のルコが、ちょこちょこと近づいてきて、リュージに問いかける。


「だ、大丈夫だから……ルコはタオルを体に巻こうね」


 ちなみに5歳の娘は、すっぽんぽんの全裸だった。


 褐色のつるりとした肌を、おしみなくさらしている。


 だがこの子には異性という感じがしなかった。


「や。たおる。きらい」


 ぷぷいっ、とルコが顔をそらす。


「か、母さん……なんでみんなで服脱いでるのさ」


 リュージは特にシーラから目をそらして、母に問う。


「この温泉、男湯と女湯が一緒なんですよ」


「それはまたなんで……?」


「? 息子とお風呂に入りたいからですけど?」


 それが何か? と真顔で首をかしげる母。


「ハァッ! しまったあああああ! しゃべってしまった! くっ……! 母の企みを暴くとは……名探偵りゅー君!」


「暴くも何も自分でいってたでしょ……」

 

 それはさておき。


 このまま裸でいると風邪を引く、ということで、みんなでお風呂に入ることにした。


 シーラは恥ずかしがっていたが、嫌がってはいなかったし、リュージも同感だった。


 ちょっぴり嬉しい。


「ハァッッ! しまった不純異性交遊だったかぁああああ! 今から女湯を作るか? ああああでも息子とはお風呂に入りたいいいいいいい!!!」


 と母の葛藤があったが、結局息子とお風呂に入りたい気持ちが勝ったらしく、一緒に入ることになった。


 体をお湯で清めた後、リュージは湯船に入る。


「はぁあ…………」


 ほどよい温度のお湯に浸かっていると、体が蕩けるような心地よさを覚えた。


「ぱぱー」


 すいーっ、とルコが泳いできて、自分のすぐ横までやってくる。


「ぱぱ。おひざ。のせて」


「え、ああ……。うん、いいよ、おいで」


「わーい」


 ルコが膝の上に載ってくる。ぷにっとした張りのあるおしりの肉の感触があたって、むずがゆい。


「はぁあああ! ずるいですよルコぉおおおおお! お母さん! お母さんも膝の上にのせてくださいいいいい!」


「つ、潰れちゃうよ……」


 母はリュージよりも背が高い。


 体重も実は母の方が若干だが重いのだ。


「うう……ルコ。ずるいです……」


「かるま。どんまい」


 母がリュージの隣に腰を下ろす。


 ぽんぽん……とルコがカルマの肩を叩いて、慰めていてた。


「ふたりとも……そう言えばいつの間にか仲良くなったんだね?」


 ふと気になってリュージが尋ねる。


「いつの間にかもなにも、最初から仲良しですよぉおお! ね、ルコ~? ね、ねっ!」


 カルマが喜々として、ルコに尋ねる。


「かるま。うるちゃい」


 ルコが迷惑そうに、耳を両手でふさぐ。


「あ゛あ゛あ゛ごめんなさぃいいいいいいいい!」


「うるちゃい。そーゆー。ところ。きらい」


「ご、ごめんなさい……」


 しゅん、と凹む母。


 でもなんだろう。


 リュージにはその光景が、楽しそうに見えた。


 ルコはぬぼっとしていて、表情の変化に乏しい。


 それでもルコからは、前にあった、母に対する拒絶の意思は感じられなかった。


「仲良しさんだね、ルコ」


「?」


 リュージはルコの髪の毛を撫でる。


 ルコは嬉しそうに、んふー、と息を吐く


「仲良しさんなのです!」


 ちょうどやってきたシーラが、リュージのあいている方の隣に、座る。


「え、あ、し、シーラっ?」


「え、あ、りゅ、リュージくん……」


 肌が触れあう。は、恥ずかしい……。


「あ゛あ゛あ゛! ラブコメ禁止-! ラブコメはまだ早いいいいいいいいい!」


 カルマがざばああああ! と立ち上がって、2人をさして言う。


「ちょっ……! 母さん! なんでタオルを巻いてないのさ!」


 先ほどはタオルを巻いていたはずなのだが、今は何も身につけてなかった。


「湯船にタオルを入れないのは常識でしょう?」


 きょとんと首をかしげる母。

 

 規格外あなたが常識を語って欲しくなかった……。


「しゃがんで!」


「はいっ!」


 勢いよくカルマがしゃがむ。


 だが勢いがつきすぎた。邪神を食らってカルマの強さは神を超えている。


 最強過ぎるパワーとスピードを持って、全力でその場に、湯船にしゃがみこむ。


 するとどうなるかというと……。


 ざばぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!


「わああああ!」「はぅううう」


 リュージたちはお湯の直撃を体に受ける。

「あ゛あ゛あ゛ごめんなさいふたりともおおおおおおおおおおお!!!!」


 カルマは湯船からビョンッ! とジャンプして、リュージとシーラの元へ行く。


「だだだだ、だいじょぶ!? ケガない!? お湯を飲んで窒息してない!?」


 母がリュージたちを抱きしめて、尋ねてくる。


 ぷるんっ、と大きな白い果実が、目の前にあって、


「大丈夫だから! 体隠してって!」


「あ゛あ゛あ゛もうしわけないいいいいいいい!!」


 ……とドッタンバッタンの大騒ぎを繰り広げる。


「みんな。うるちゃい」


 膝の上でルコが、両耳を手で押さえながら言う。


「「「はい、すみませんでした……」」」


 と反省する、リュージたちだった。

次回もよろしくお願いします!

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