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44.息子、みんなで温泉(母お手製)に入る【前編】

お世話になってます!



 母が森で裏方作業をした、その翌日の夕方。


 リュージはクエストを終えて、家に帰ってきた。


「ただいま~……」


 ふぅ、と息を吐く。


 肩が重い。ふくらはぎも張っている。そして体はヘトヘトで、汗びっしょりだ。


「おっかりりゅーくぅんー!」


 と、母が帰宅のあいさつをする。……自分の背後から。


「ぱぱ。おかえり」


 と、娘も母と一緒にあいさつ。……自分の後から。


 くるり、と振り返る。


 カルマがルコを抱っこして、リュージの背後に立っていた。


 何を隠そうここ数日、カルマたちはリュージの冒険についてきているのである。


 こんな感じで。


『ぱぱぁ。いかないでー』→『ルコ、パパの冒険について行きたいのですか?』→『うん。ついてきたいー』→『じゃあお母さんと一緒についていきましょう! だいじょうぶ、お母さんがこの子見張ってますから-!』


 と。


 どうやら、息子の冒険についていく良い大義名分ができた……と思っている節が、母にはあった。


 母がルコを抱っこして見張っているため、仕事の邪魔はしてこない。


 ……ただまあ、外野からきゃあきゃあと黄色い声で応援だったり褒められたりして、結構恥ずかしいのだが。


 それはさておき。


「りゅー君。おかえりなさい。ご飯にします? それともお風呂にします?」


 にっこにこしながら、カルマがリュージに聞いてくる。


 母はルコを下ろそうとしたが、「かるま。おろす。だめ」ときゅーっと抱きついていた。


 以前よりルコが、母になついているように感じるリュージだった。


「うん……お風呂入ろうかな。結構疲れたし」


 今日のクエストは森での珍しいキノコ採取だった。


 なかなか見つからず、時間がかかったのだ。


 朝から森に入り、あちこち探し回って、夕方になってようやく発見。


 へとへとで、汗だくだ。風呂に入ってさっぱりとしたい気分である。


「あ゛あ゛あ゛ごめんねりゅーくぅうううううううううううん!!!!!!」


 カルマが唐突に、大きな奇声を発した。


 母はルコをおろし、その場に膝をついて、うわんうわんと泣き出す。


「りゅー君がお疲れだったというのに! お母さんってば気付かずにいて! ああごめんねりゅー君! この愚かなお母さんをおゆるしくださいぃいいいいいいいいいいいい!!!!!」


 あ゛ー! とカルマがギャンギャンなく。

「かるま。うるちゃい」


 ルコが隣で耳を押さえている。


「母さん……ルコがうるさいって」


「あ゛ーーーーーごめんねふたりともぉ! お母さんいま声帯をつぶして永久に黙るからまっててくださいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」


 リュージは慌てて母を止める。止めなかったら、右手を自分ののど元に突き刺しかねなかった。


「仲が良いのです。羨ましいのです。ね、るーちゃん」


「うん。かるま。ぱぱ。なかよし。うらやましー」


 その様子を、ウサギ獣人のシーラとルコが見ていた。


 ややあって、母の暴走がとまる。


「しかしりゅー君がお疲れと言うことなら……うん! わっかりました!」


 母が目をキラキラさせながら、ドンッ! と自分の胸を叩く。


 ばるんっ、と母の大きな乳房が揺れたが、リュージはそこにセクシャルを感じなかった。いや普通にこの人、自分の母親だし。


 ……むしろ嫌な予感がする。


「母さんのそのわかりましたって、ほぼ100%何もわかってないんだけど……。何する気?」


「まあまあ。まあまあまあ。ちょっとお母さんでかけてくるんで、ちょっとお待ちを」


 そう言って、母がスキルを使って、その場からテレポートする。


「果てしなく嫌な予感する……」


 少しして、


 どごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


 ずずうぅううう……………………ん。


「わわっ、地震なのですっ?」


 あわあわ、とシーラが慌てる。ルコをかばうように抱きしめる。


「いや……たぶん違うよ」


 揺れの前に、なにかが爆発するような音が、遠くから聞こえてきた。


 母と無関係とは思えなかった。


 ややあって、テレポートで母が帰ってくる。


「おっまたせしましたー!」


 子供のように無邪気な笑みを浮かべながら、母がリュージたちの前にやってくる。


「さっ! いきましょう!」


 カルマがリュージとシーラ、そしてルコをまとめてハグしてくる。


「ど、どこに行くのさ?」


「まあまあ。行けばわかりますよぅ」


 そう言って、母がリュージたちを連れて、その場からテレポートした。

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