42.息子、モンスターに囲まれるが、最強の母娘に助けられる【後編】
森の中の、牛鬼の巣へとやっていたリュージたち。
やつらの巣である洞窟の中から、聞き慣れた、母の声がした。
洞窟の中から、長身の黒髪美女、母カルマが、人間の姿で出てくる。
その顔や体には、返り血らしき、緑の液体がべったりとついていた。
「BU、BOOOO……」
牛鬼たちはびびって、その場でへたり込んでしまう。
2匹の牛鬼の前に、母が到着する。
その目は……恐ろしかった。
恐ろしく冷たい目をしていた。
「ああ……。巣へ戻り、体勢を立て直そうとしているのですか。残念ですがそれは無理な話です」
「BU、MO……?」
がたがたがたがた……と牛鬼たちが恐怖で失禁する。
母は、キレていた。
体から黒い禍々しいオーラが漏れている。
「息子たちの様子は、上空から見てました。孫を背中に乗せて空を飛んでいたのですよ」
母と娘の姿見えないと思ったら、そういう感じでついてきていたのか……。
「それで息子たちが危ない場所へ近づこうとしているのを気付いて、一足先にテレポートして巣の中に入り、私、あなたのお仲間を全滅させたのです。この巣の中には、仲間は1人としていませんよ」
母の姿が見えないと思ったら、先に洞窟の中で暴れていたみたいだ。
「本当はりゅー君の前にすぐに現れたかったのですが、仲間を呼ばれては少々面倒です。100体くらいいましたもんね、お仲間」
なんとそんなにいたのか……。
「まあ、私の敵ではありませんでしたがね。……さて」
カルマが一歩、牛鬼に近づく。
「あなた、先ほどりゅー君の肌に傷をつけましたね」
こつん。
と、反対側から、ルコが、牛鬼に近づく。
「ぱぱ。きず。おまえら。ぜったい。ゆるさない」
「ええ、同感です。ルコ。ということで……」
リュージは、母と娘から、膨大な量の魔力を感じ取った。
ふたりの体から魔力が噴出し、嵐となって、森を、そして牛鬼を震撼させる。
「「変身!」」
その瞬間、母は邪竜へ。
娘は鎧の悪魔へと、変化する。
見上げるほどの大きさの黒い竜と、黒い甲冑に全身を包んだ大悪魔が、その場に出現した。
【息子を】【ぱぱを】【【いじめてるんじゃねえええええええええええええええええええええええええええええ!!!】】
ずっがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!
ビゴオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
大悪魔は地面に向かって拳を振り下ろし、大爆発を起こした。
上空へ吹き飛んだ牛鬼たちに、カルマが極大のブレスをお見舞いする。
見事なコンビネーションにより、牛鬼2体は、跡形もなく消し炭になった。
魔力結晶すら残さず、牛鬼は消滅。
リュージたちはその場から一歩も動けず、呆然としていた。
母と娘は変身をといて、リュージたちの元へ駆けてくる。
「うわああああん! りゅー君大丈夫でしたかあああああああ!」
「ぱぱぁ。しーらぁ。わーーーーーん」
2人が子供のように大泣きしながら、リュージたちに抱きついてくる。
「息子が大けがを負ってしまったぁああ! すぐに回復魔法をおおお!」
「だ、大丈夫だから……無事だよ」
「ほんと? しーら? ぶじ?」
「は、はひ……無事なのです……」
すると最強ふたりは、ほっ……と安堵の息を吐く。
「ルコ、よくぞ息子たちのピンチを救いました。偉いですよ」
「かるま。ぱぱ。しーら。ぴんち。すくった。ほめて。つかわす」
いえーい! と母と娘が、ハイタッチをかわしていた。
その姿をリュージは見て思いだす。
母が強いのは前から知っていた。だが娘も、そう言えば魔王四天王のひとりであり、普通に強いのだった……と。
「さっ……! ピンチは去りました。とっとと家に帰りましょう!」
「どーい。ぱぱ。しーら。かえろ。かえろー」
「う、うん……」「は、はいなのです」
無邪気に笑う最強たちを見ながら、リュージとシーラは、その強さに戦慄を覚えるのだった。
お疲れ様です。
次回もよろしくお願いします!