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42.息子、モンスターに囲まれるが、最強の母娘に助けられる【前編】

お世話になってます!




 みんなで並んで眠った翌日。


 リュージは街からちょっと離れた森の中で、牛鬼オーガ退治へと出かけていた。

 近頃、牛鬼オーガが森の中で巣を作ったらしく、それを調査しにやってきたのだ。


「るーちゃんたち家出おとなしくしてるでしょうか……?」


 隣を歩くシーラが、心配そうに首をかしげる。


「ううん、どうだろう……」


 リュージは今朝のことを思い出す。


 朝。リュージが冒険に出かけようとすると、娘のルコがダダをこねる。


 じゃあ昨日のように母同伴で、冒険についてこようかとなったのだが、リュージはそれをやめてくれと頼んだ。


 さすがに母娘同伴の冒険は、恥ずかしくてしたくなかった。


 これにルコが大泣き。ついてくとダダをこねまくった。


 困り果てたリュージだが、カルマが何かを気付いたような顔になる。


 ぼそぼそ……と母が娘に耳打ちをすると、【るぅ。おるすばん】と言ってきたのである。


「果てしなくいやな予感がするよ……」


 雑談しているうちに、目的地である、森の中の洞窟へとさしかかった。


「いた。牛鬼オーガだ」


 今回は牛鬼の巣が本当にできたかどうかの調査だ。


 牛鬼オーガ


 名前の通り、牛の顔をした鬼である。


 体は筋骨隆々。肌の色は緑色で、大きな顎と牙が特徴的だ。


 頭の側頭部から牛の角と、額から一角獣を彷彿とさせる大きな角が生えている。


 討伐難易度は20。


 レベル20の冒険者なら、ひとりで相手できる程度の強さだ。


 リュージたちは前回の遺跡調査を経て、レベルが30代になっている。


 冒険者になって1ヶ月ほどで、中堅レベルまでに成長しているリュージたち。


 彼らにとって牛鬼は取るに足らない存在だが、油断はできない。


 あくまで討伐難易度が20というのは、1対1のシチュエーションでの話だ。


 複数で囲まれたらひとたまりもない。


 それはさておき。


 リュージたち茂みにかくれて、こっそりと、洞窟内部の様子をうかがう。


「入り口には牛鬼が2匹か」


「巣を作っているは本当みたいなのです」


「いや、2匹だけじゃ巣を作ってるか判断できない。少し中に入って様子をうかがう必要がある」


「は、はいなのです」


 2匹程度ならこのふたりで対処できる……と思ったそのときだ。


「GUGYAGIGI!!!」


「GAGAGA!!!」


 牛鬼たちがリュージたちに気付いた。


「気付かれた! 戦闘準備!」

「は、はい!」


 リュージたちは茂みから出て、武器を手に取る。


 だが……。


「BUMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」


 牛鬼が、暴牛のごとく吠える。


 すると洞窟内部から、ぞろぞろと、他の牛の鬼が出てきたではないか。


 その数10。


「くっ……! 10対2か!」


「か、勝てるのです?」


「無理! 撤退しよう!」


 だが牛鬼の一体が、すばやくリュージたちに近づいて。


 ブンッ! と腕を振るう。


 狙いはシーラだった。


「あぶない!」


 リュージはシーラに飛びつく。


 間一髪とのところで、シーラを押し倒し、牛鬼の攻撃がリュージをかすめる。


「くっ……!」


 かすっただけだが、服がやぶれて、皮膚に擦過傷ができた。


 それだけでかなり痛い。


「りゅ、リュージくん! 大丈夫なのです?」


「だ、だいじょうぶ。それより逃げるよ!」


 リュージたちは立ち上がって逃げようとした。

 

 と、そのときである。



「その。ひつよー。ない」



 平坦な声音が、どこからか聞こえてくる。

 聞き覚えある声がしたと思った……そのときだ。


 どがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!


 牛鬼たちの背後で、大きな爆発が起きる。


「BUMOOOOOO!」「BUBOOOOOOO!!」「MOOOOOOOOOOO!!!」


 爆発により、牛鬼10体のうち3体が、爆発によって体を木っ端みじんにする。


「な、何なのです……?」


「さ、さあ……?」


 爆発による煙が晴れると……。


 そこにいたのは、見覚えのある、金髪褐色幼女。


「るーちゃん!」「ルコ!」


 ぬぼっとした表情の少女が、いつの間にか立っていた。


「ぱぱ。いじめる。ゴミ。ゆるさぬ」


 ルコからは怒りのオーラがゆらりと立ち上がっている。


「BUMOOOOOOOO!!!」


 仲間のかたきだ! とばかりに、牛鬼がルコに殺到する。


「あ、危ないルコ!」


 リュージが剣を抜いて、ルコの前に立とうとした……が。


 ルコは超スピードで牛鬼の背後に回ると、その背中にタッチする。


 どがあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!


 ルコが触ったところに、魔法の青い爆炎が上がる。


 先ほど同様、木っ端みじんになる牛鬼。


「ぱぱ。しーら。いじめる。るぅ。だいじ。ひと。いじめた。おまえら。ころす」


 牛鬼たちをルコが、にらみつける。


 シュンッ……!


 とルコが消える。


「ど、どこにいったの……?」


 娘を見失ったリュージは、あたりを探すが、しかしルコはいない。


 代わりに。


 どごおおおおおおん! ばごおおおおおおおおん! ずごおおおおおおおん!

 ばっごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!


 と4連続で、爆発があがる。


「BUGIIIIIIII……!」「BUOOOOOOOO!……」「BUGYAAAAAA……!!」「GAAAAAA…………!!!」


 立て続けに、牛鬼たちが断末魔をあげる。

 声のする方を見やると、牛鬼はすでにおらず、あとには魔力結晶ドロップアイテムのみが残されていた。


 目にもとまらぬ早さで、ルコは移動し、あの魔法の爆発で、牛鬼を粉みじんにしたのだろう。


 これで残る牛鬼は2匹。


「B、BUMOO……」

「BUMOOOO!!」


 牛鬼たちは、ルコに恐怖し、巣へと逃げていく。

 

 仲間を呼びに行ったのだろう。


 だが、そのときだ。


「どこへ行こうというのですか?」


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