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41.息子、みんなそろって川の字(+1)で寝る

お世話になってます!



 母と娘と風呂に入った、数時間後。


 風呂から上がり、夕飯を食べて、さて寝るぞと言う段階。


 リビングのイスに座るルコが、うとうとしながら言う。


「ぱぱ。るぅ。ねむい……」

「るぅちゃんおねむなのです?」

「うん……。とても……。くわぁああ……」


 褐色幼女は、大きく口を開く。ちらりと尖った犬歯が見えた。


「ではお母さんはルコを寝かしつけてきますね」


 カルマは立ち上がると、ルコをヨイショと持ち上げ、抱っこする。


「やぁ……。ぱぱぁ……」


カルマの胸に抱かれたまま、ルコがイヤイヤと首を振るう。


「ぱぱぁ……。いっしょ。ねるぅー……」

「ワガママ言ってはいけませんよ」


「やぁ。やだぁ。ねる。ねる。ぱぱ。ねる」


 ルコは母の大きな胸をぐいっと押しのけて、地面にぴょんと降りる。


「あ、こらこらダメですってば」


 カルマの制止を振り切り、ルコがリュージの方は駆け寄ってくる。


 ルコは現在、かわいらしい黒のパジャマに身を包んでいる。


 その娘がリュージの腰にしがみつくと、いやいやと首を振る。


「ぱぱ。ねる」

「るぅちゃん、それじゃあ、しーらと寝ましょうなのです」


 見かけたシーラが、助け舟を出す。そう言えばこの悪魔娘は、シーラにもなついていた。


 彼女の言うことなら聞くかもしれない……と思ってそのときだ。


「それ。いい。るぅ。シーラ。ねる。ぱぱ。いっしょ。ねる」


 ……今の言葉を翻訳すると。


 ルコはシーラと、そしてリュージと一緒に寝ると言ってきたのだ。


「「え、えええ!?」」


 二人は驚き、顔を見合わせる。


 気になる異性と、同じベッドで寝る。それはとても気恥ずかしく……しかしちょっとだけ嬉しいかも。


 ルコはリュージの手と、そしてシーラの手をつかみ、きゅっとたぐりよせる。


「るぅ。シーラ。ぱぱ。さんにん。いっしょ」


「ど、どうするシーラ?」

「し、しーらはその……恥ずかしいのです。けど、るぅちゃんのためなら……」


 シーラの顔は真っ赤だが、嫌がってる様子はまるでない。


「僕も恥ずかしいけど、でも……」


 と、そのときである。


「いけませんよぉ!」


 どがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!


 音源を見やると、そこには邪竜の姿に変身した母、カルマの姿があった。


【いけませんいけません! いくらシーラ、あなたを嫁候補かっこかりと認めたとは言え、付き合う前から同じベッドで寝るなんて! お母さん許しませんよぉ!】


 見上げるほどの邪竜が、家の天井を突き破っている。上を向いてごぁあああ!


 と怒りの炎を吐き出していた。


「あの、この真上、僕の部屋なんだけど……」


【あとでキレイに戻します! それよりシーラ、どうしてもりゅー君と一緒に寝たいと言うのなら、この母を倒して正式な嫁と認められてからにしなさい!】


「む、無理なのですぅ〜……」


 泣きそうなシーラ。それはそうだ。母は邪神をくらい世界最強となった。


 そんな最強ドラゴンを倒せるわけがない。


 というかシーラと付き合うためには、母討伐が必須になるのか……。難しい通り越して無理ゲーすぎた。


 シーラが無理だと言うと、母は冷静さを取り戻し、邪竜の姿へと戻る。


「そう言うわけですルコ。諦めてお母さんと一緒に寝ましょう」


 するとルコは、顔をくしゃりとしかめる。


「や!」


 どうやらさっきの天ドン(天井をドカンと破壊するの意味)の爆音で、目を覚ましたらしい。


 ルコはリュージとシーラの手を握って離さず、ぶんぶんぶん! と首を振るう。


 リュージとシーラの3人で寝るのは、ルコの中で決定事項らしい。


「ルコ。落ち着きなさい。あなた感情がたかぶるとものを爆破するのですから。いくらいとしい孫とは言え、息子に危害を加えると、お母さん許しませんからね」


「や!」


 ルコがぐずり出す。どうにも3人で寝たいみたいだ。


「ワガママ言わな……」


 そのときだ。


 母が、ピーン、と何かに気づいた表情になる。


 これは大チャンス! みたいな表情に、リュージは見覚えがあった。


 何を隠そう、先ほど風呂に入るときに見た母の表情と同じだったからである。


 猛烈に嫌な予感がした。


「りゅー君、りゅー君! お母さんとぉってもナイスなアイディアを思いつきましたよー!」


 ニッコニコしながら、カルマがリュージに言う。


「なに……?」


 悪い予感を抱きつつ、リュージが尋ねる。


「あのですねりゅー君。こうすれば万事解決だと思うんです!」


 カルマはそういうと、リュージに近づいてくる。


 リュージと、ルコ、そしてシーラの3人を、「えいやー!」と腕を広げて、抱擁する。


 母の大きな胸に、ぎゅっと抱きしめられるリュージたち。


「で、このままテレポート!」


 カルマはスキル【最上級転移ハイパーテレポーテーション】を発動させる。


 気づけば全員、リュージの部屋にいた。


 そしてベッドの上に寝ていた。


 といっても、自分が使っている小さなものではなく、いつのまにか、巨大なベッドにいた。


「全員で寝ましょう。これなら誰も文句はないはずです!」


 並びはと言うと、カルマ、リュージ、ルコ、シーラという順番だ。


「 これならどうですルコ」

「ん。よい。ぐあい」


 左右にリュージとシーラがいて、ご満悦のルコ。


「ルコは2人と眠れて幸せ。お母さんはりゅー君と寝れてちょー幸せ。誰も不幸にならない。win-winです」


「はぁ……もういいや。ごめんね、シーラ。母さんが迷惑かけて」


 娘ごしにリュージが言う。


「いいえ、迷惑なんて思ってないのです。こうすれば誰も不幸にならないなら、これが最善の方法だと思うのです。みんな幸せ、しーらも幸せなのです」


ニパーッと笑うシーラ。


母が迷惑かけてるというのに、気にしないでと言ってくる。なんていい子なんだ。


「くふふ……親子3人川の字で寝る。ああ! この家族っぽい感じ、しあわせすぎて死にそうですよー!」


 母はこの状況を楽しんでいた。


 リュージは、まあ母が楽しそうで良かったと思って、目を閉じる。


「ぱぱ。おやすみ」

「うん、おやすみ、ルコ」


「おやすみなさい、りゅー君! おやすみのキスは!?」

「おやすみ母さん。あとキスはダメ」


「おやすみなさいなのです、リュージくん」

「うん……ふぁああ……おやすみシーラ」


 今日の疲れがドッと押し寄せ、気づけばリュージは、眠りに落ちたのだった。


おつかれさまです!


次回もよろしくお願いします!

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