37.邪竜、孫に服を作りまくる【前編】
お世話になってます!
息子が孫を生んだ、数十分後。
リビングにて、ウサギ獣人のシーラが、初孫ルシファーのルコを見ていた。
「わぁ! かわいいのですー! とってもとってもかわいいのですー!」
きゃっきゃっ、とシーラがはしゃいでる。
「えとえと、お名前は? しーらはシーラなのです!」
シーラの問いかけに、
「るぅ。ルコ」
「ルコちゃんって言うのです? かわいい名前なのです!」
「うふふ、そうでしょうとも、わかりますかシーラっ!」
カルマは得意顔。
なにせ名前を決めたのは孫の祖母……つまりカルマである。
一方でルコは、ちょこちょこ、とシーラに近づくと、抱きつく。
「るぅ。おまえ。すき。いい。におい。する。あと。ほめた。おまえ。すき」
ぬぼーっとした表情のまま、ルコがシーラに抱きつくと、ほおずりする。
「えへっ。かわいいのです。だっこしてもいいのです?」
「いい。かまわない。ゆるす」
んっ、とルコがシーラに手を伸ばす。
よいしょぉっとだっこすると、シーラがよしよしと、ルコの頭を撫でる。
「ああっ! シーラずるいですよっ! お母さん、お母さんにもだっこさせてくださいぃ!」
「はいなのです! ルコちゃん、ほら、カルマさんですよ」
シーラがカルマに、小悪魔を手渡そうとする。
だがルコは、ぷいっ、と顔を背ける。
「や。るぅ。かるま。きらい」
「そんなぁ……。家族は仲良くしないと、だめなのですよぉ?」
ぐすん、とシーラが涙目になる。
「なぜ。シーラ。ないてる?」
「家族は仲良しさんが一番なのです」
「でも。るぅ。かるま。や。シーラ。すき」
きゅーっ、とシーラに抱きつくルコ。
「いいなぁ……。いいなぁシーラ、いいなぁ」
指をくわえてカルマが言う。
「るーちゃんダメなのです。カルマお母さんを仲間はずれにしちゃ、めっ、なのです」
「でも。かるま。じゃあく。だから」
「うう……なんですかその理由~……。でもっ! そんなところをまた愛嬌! かわいいです!」
あばたもえくぼとは、よく言ったものだ。
いくら態度が悪くても、嫌われていようとも、【リュージの息子】という条件が加わる。
それだけで……この悪魔が愛しく思えてくる。
やはり息子は凄いな! と思うカルマだった。
「ところでカルマさん。るーちゃんにお洋服着せてあげないのです?」
「おおっ! そうでしたっ!」
ルコが着ているのは、リュージのパジャマの上だ。
ぶかぶかで、しかも男物。
「このままじゃいけませんねっ!」
「はいなのですっ! もっとかわいいお洋服がいいのです!」
「ああでもっ! ああっ! 女物の服って、私作ったことがありません!」
なにせ息子は男だ。
男物の服なら腐るほど、スキルで作ってきたが、女のものはわからない。
「カルマさん、しーらにお任せなのです!」
てててて、とシーラがいったん部屋に引っ込んで、スケッチブックを持って帰ってくる。
ペンを使って、しゃしゃしゃ、と即興で絵を描く。
そこには可愛らしい、フリルのついた、見事な服が書いてあった。
「素晴らしい! 絵の才能があるのですね!」
「えへへっ。これをるーちゃんに着せるのはどうでしょう?」
「ナイスアイディアですよシーラ!」
そう言って、カルマが【万物創造】スキルを使用する。
前触れもなく、ルコの体に、可愛らしい洋服が出現する。
「びっくり」
ぬぼっとした顔のまま、ルコが言う。
「かわいー!」
「きゃー! とってもお似合いですよ!」
きゃあきゃあ、とカルマとシーラがはしゃぐ。
「シーラ。あなたのデザインの腕、もはやプロ級ですよプロレベルですよ!」
「ううん。カルマさんのスキルがなかったら、ここまでキレイに作れなかったのです」
ハッ……! とカルマとシーラが顔を見合わせる。
「も、もしかして私とシーラがいれば」
「るーちゃんに、かわいいお洋服、たくさん着せられる……!」
うんっ! と強くうなずく。
一方でルコは、シーラの(いちおうカルマも)作った服に、ご満悦だった。
「るぅ。かわいい。おようふく。すき」
ぬぼっとしたまま、ルコが口元をゆるます。
「ではシーラ。私と協力してかわいいお洋服をたくさんつりましょう」
「はいなのですっ! 腕が……なるのですー!」