33.邪竜、トラップをものともしない【前編】
お世話になってます!
息子達と遺跡探索にやってきている、カルマ。
リュージ達の仕事は、ダンジョン内を歩いて、地図を埋めるという作業。
そのときに出会ったモンスターやトラップには、各自対処し、報告しろと指令を受けている。
未知の遺跡に未知のモンスター。
通常なら、遺跡探索など、未知が多すぎて、全然進まないだろうが……。
「あ、敵。てい」ザシュッ!「あ、倒してきました」
と、カルマがいちはやく敵を見つけて、一瞬で敵と距離を詰めて、剣で倒す。
と敵を秒で倒すため、息子達は安全に、地図を作る作業に没頭できている。
……これが母の姿なら、余計な事しないでと息子に言われる。
だがこの冒険者の姿なら、さすがと褒めてもらえる。
マジ良いわぁこの姿ぁ……。
とうっとりするカルマであった。
さておき。
「ここなんか、部屋がありますね」
カルマ先頭で、遺跡内をぶらつくこと1時間。
×印のない部屋を、リュージ達は発見した。
石造りのドアだ。
表面に不思議な絵が描かれている。
「あのえと、印がないってことは、入った人がいないってことなのです?」
「たぶん……」
息子が部屋の前でウーン、と考えている。
「どうしました?」
「あ、うん。入ろうかどうしようかって」
「? 入れば良いではないですか」
何を悩んでいるのだろう、とカルマはドアノブに手をかけて、
「失礼しまーす」「ちょっっ!?」
息子達を残して、カルマが部屋の中に入る。
4畳半ほどのスペースだ。
部屋の中央には宝箱があった。
「リュージさん。宝箱あるだけで他は何もないですね」
カルマが半身を引いて、リュージ達に中の様子を見せる。
「カーサン。危ないから急に開けるのはやめようましょうよ……」
とため息をついた。
「大丈夫大丈夫。危ないことなんてないですよ。ほら宝箱しかない安全な部屋ですよ」
カルマは息子を安心させようと、ひとり、部屋の中に足を踏み入れる。
と、そのときだった。
ガッシャンッ!!!
と、部屋の床がパカッ、と左右に開いた。
宝箱があったところ以外の床が消える。
宝箱は柱の上に立っていたので落ちなかったが。
「おっと。落とし穴トラップですか?」
ひゅぅうううう………………ん。
とカルマが下に落下しながらつぶやく。
眼下には何本もの槍がおいてあり、上から落ちてきた人間を、串刺しにしようとしていた。
それに対してカルマは……。
何も、しなかった。
当然、槍がカルマの身体に突き刺さり、串刺しにする。
が。
パッキィイイイイイイイイイイイイイイイン!!!
と、カルマの身体に刺さった槍の方が、粉々に砕け散ったではないか。
「なんですこの耐久値と攻撃力の低い槍は。こんなのでは私を殺せませんよ」
カルマのステータスは、1万回の弱化魔法をかけているとは言え、オール9000以上。
カルマの頑丈さのステータスは、槍の攻撃力と耐久値を上回っていた。
結果槍は身体に刺さらず、壊れた、という次第だ。
「カーーーーーーーーサーーーーーーーーーーーーーーーン!」
と息子の声がする。
「今行きますよぉ!!!」
と前置きしてから、ぐぐっ、と身をかがめて、ビョンッ! と飛び上がる。
びゅぉおおおおおおおお!!!
と風を切る音とともに、カルマは地上へと戻ってきた。
「よっと着地」
カルマはそのまま、宝箱の上に、華麗に着地して見せた。
「リュージさん。ただいま帰りました」
すると息子達は……その場にぺたん、とへたり込んでいた。
「だだだだ、大丈夫ですか-!?」
カルマはびょんっ! とジャンプして、リュージとシーラのもとへ。
そしてふたりをぎゅーっとハグする。
「大丈夫!? ケガ!? 私がいない間にモンスターの襲撃を食らったとか!?」
「ち、違いますよぉ……」
「カーサンさんが無事で良かったぁ……」
ふたりがワンワンと泣くではないか。
「? ?? あの……なぜ泣いているのですか?」
「だって……ぐす……。落とし穴に落ちていって……」
「しかもぉ……槍が串刺しになって……うえええん……」
どうやらとても心配させてしまったみたいだ。
「ああっ! ごめんなさいぃいい! リュージさんを泣かしてしまった罪深い私を、おゆるしくださぃいいいいいいい!」
とカルマまで泣いてしまう始末。
その後3人は、抱き合ったまま、わんわんと泣くのだった。