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05.邪竜、面接する【前編】

今回は前後編となってます!



 カルマたちが薬草採取クエストをこなした、数時間後。


 リュージは、母カルマとともに、【面接】を行っていた。


 場所は拠点の町カミィーナの片隅。元々空き地だった場所に、カルマが万物創造スキルを使って、掘っ立て小屋を作成(無許可)。


 小屋の中はテーブルにイスだけという、簡素な内装。


 長テーブルの後ろに、カルマとリュージの座るイス。


 テーブルを挟んで向こう側、部屋の中央に、イスがひとつ置いてある。


「ではどうぞお入りください」


 カルマがドア向こうにいる【その子】に向かって言う。


「し、失礼しますっ!」


 がちゃっ、とドアを開けて入ってきたのは、小柄な獣人の少女だ。


 うさ耳をはやした、10代前半の女の子だ。


 栗色の髪の毛に、同じ色のウサギ耳。耳はぺちょんと垂れ下がったロップイヤーだ。

 顔つきも幼く、目尻は垂れ下がっていて、どことなく頼りなさそうな印象を与えていた。


 うさぎ獣人は部屋の中をきょろきょろと見回し、部屋の中央にあるイスに気づく。


 てくてくと歩いて、そのイスに腰を下ろした。


 その瞬間、


「ふぅうううううう………………」


 とカルマが大きなため息をつく。


 そして手元の用紙に「減点5ポイント」といいながら何事かを書き込む。


「はうっ! えとえと……わたしなにか減点されるようなこと、してしまったのでしょうか?」


 うさぎ少女がカルマと、そしてリュージを見て言う。


 リュージは聞かれてもわからなかった。減点されるようなことを、このウサギ少女はしただろうか……?


 カルマはすちゃっ、とメガネ(スキルで出した)をかけなおすと、


「面接では座って良いと言われるまでは、イスに座らないこと。これは社会人の常識のはずですが、ご存じないみたいなので減点させていただきました」


 くいっ、とメガネを指で押し上げて、カルマが淡々と告げる。


 さながら新卒者を評価する面接官のようだった。……否、ような、ではない。


「ご、ごめんなさいなのですっ!」 


 ウサギ少女は立ち上がると、ばばっと頭を下げる。垂れ下がったうさ耳がふぁさっ、と前に垂れ下がる。


「謝まられても困ります。面接はもう始まっているのです。さ、お早くおかけになってください」


「は、はいぃ……」


 うさぎ獣が頭を上げる。ぺちょん、と垂れ下がったロップイヤーが、さらに垂れ下がった。


「母さん……彼女をいじめないでよ」


 カルマの隣に座るリュージが、母に向かって言う。


「いじめてなど断じていません」


 きりっ、とした表情でカルマが答える。


「これは彼女の能力を客観的に測っているだけです」


「だからって言い方ってものがあるでしょ……」


「言い方? 面接官に、相手を思いやる必要はございませんよりゅー君。必要なのは相手をしっかり見極めること。それだけです」


 カルマはリュージから、ウサギ少女に視線を戻す。


 彼女はおどおどしながら、いすの前に立っていた。


「いつまでたっているのですか? あなたが座らないせいで面接が始められませんよ?」


「はぅっ! ごめんなさいなのですっ!」


 ぺこぺこ、とうさ耳少女が頭を下げる。


「……いや始まらなかったのは母さんが僕と話してたからでしょ」


「りゅー君。お静かに」


 しっ、と口の前に指をやるカルマ。都合の悪いことはスルーするつもりだ。


「ごめんなさいごめんなさい……」とウサギ少女が頭を下げまくっていた。


 気の毒なくらいおどおどしているな、とリュージは思う。


「いつまで突っ立ってるのです。座りなさい」


「は、はひ……」


 泣きそうになりながら、ウサギ少女がイスに座った。


「【人に言われないと行動ができない。典型的な指示待ち人間である】……マイナス10ポイント」


 しゃしゃしゃばばばっ! とカルマが手元の用紙にペンを走らせる。


 どうやら少女の評価をかいているようだ。

「さて……では面接を始めましょう。まずはお名前をどうぞ」


 イスに座るカルマが、ウサギ少女に尋ねる。


「は、はい……。えとあの、し、シーラと言うのです!」


 うさぎ獣人の少女、シーラが名乗る。


「ふむ……。【敬語を正しく使えない】マイナス2ポイント」


「はぅっ……! またやってしまったのです~……」


 シーラのうさ耳がぺちょと垂れる。


 見ていて申し訳なくなったリュージは、隣に座る母の服をひっぱり言う。


「母さん、ほんとやめようよこういうの……」


「やめません」


 ぴしゃり、とリュージの言葉をカルマが突っ返す。


「りゅー君の言うことなら、たとえ火の中に飛び込めと言われても喜んで実行します」「するんだ……」「ですが」


 くいっ、とカルマがメガネを押し上げて言う。


「このシーラという少女は、恐れ多くもりゅー君とパーティを組みたいと言ってます」

 

 ちらっとシーラを母が見た後、リュージに視線を戻して続ける。


「このメスがマイ天使・りゅー君にふさわしい人物かどうか、見極める義務がお母さんにはあるのですよ」


 ふふんどやぁ、と得意げに胸を張るカルマ。


「はぁ……」


 リュージは深くため息をつきながら、ここまでの経緯を思い出す。


 カルマによって、オークを撃退した後。


 リュージが目を覚ますと、冒険者ギルドに戻っていた。


 どうやら母が全てを解決してくれたらしい。


 そのとき助けた少女がシーラであり、彼女はお礼をし、そして身分を明かす。


 彼女もリュージと同じく、今日冒険者になったばかりだという。まだ仲間はいないという。


 なら一緒にパーティ組まない? とリュージが誘うとシーラは「はいっ!」と即答。

 かくしてパーティが結成された……かに思えたのだが、そこで母が、


【いけません。こんなどこの馬の骨ともわからぬメスに、うちのエンジェルの背中を任せられません!】


 ということで、シーラが息子の仲間になるのにふさわしい人物かどうかを見極めるべく、面接を行うことになった次第だ。


「仲間作るのも自由にさせてくれないのかよ……」


 げんなりするリュージの言葉を、カルマはスルーする。


 シーラを見やり、


「さて、では次の質問に移りましょう」


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