SS.邪竜、息子のエッチな本を見つけてしまう
リュージが12歳くらい出来事だ。
ある日、実家の洞窟ハウスにて。
母カルマは、部屋の掃除をしようとしていた。
「いよぅし、ピッカピカにしますよー!」
ふんっ! とカルマが気合いを入れる。
「はぁあああああああ!」
カルマは手に持ったぞうきんとホウキを放り投げ、体に力を入れる。
突如、カルマの体の周りに、黒い雷がまとわりつく。
「喰らえ、【万物破壊】!」
カルマが手を軽く振る。
ズガァアアアアアアアアアアアン!
突如、部屋の中に雷が走る。
それが通った後には、跡形もなくなっていた。
「そして後は万物創造で指ぱっちんと」
パチンッ!
すると消し飛んだ家具などが、すべて新しく生み出されたではないか。
これぞ、カルマの持つチートスキル、あらゆるものを壊す【万物破壊】。あらゆるものを作る【万物創造】だ。
「やはり掃除は一気にずばーっとやるのが一番ですね。あとは、あとはりゅーくんの部屋のお掃除だけっと」
リュージの部屋だけは、今の大雑把な掃除をしない。
『息子の部屋の掃除するわたし……母親っぽい!』という大変稚拙な理由である。
「るんるーん♪ 世界一かしこいりゅーくんはぁ~、あの無駄肉と勉強中~♪ かしこいりゅーくん、天才りゅーくーん♪」
とまあ、リュージはチェキータとともに、青空教室で勉強をやっている。
息子が学校へ行っている間に掃除するわたし、母親っぽいという理由で、カルマは上機嫌だった。
ややあって。
カルマは息子の部屋へとやってきた。
「さてとお掃除ーっと」
カルマはドアノブに手をかける。
ガチッ!
「おや? 鍵が掛かってます?」
ガチャガチャッ!
「しつれいしまーす」
バキャッ!
カルマはドアノブを力尽くで回し、部屋の中に入る。
邪神を取り込み最強の力を手にしたカルマにとって、部屋の鍵を無理矢理こじ開けることなど容易かった。
「しかしどうして鍵なんて? 昨日まではかけてなかったのに……ま、いいです。それよりお掃除だっ!」
カルマは掃除道具を万物創造で作り出し、丁寧に掃除していく。
「1かけらもホコリを逃してなるものかっ。息子の部屋は常に清潔を心がけるっ。それが母親……くぅ~~~~~! 母親っ!」
カルマはえへへと笑いながら、窓のホコリをふいたり、ベッドシーツを代えたりする。
さて、ここまでは順調に掃除を終えたのだが、事件はこの後に起こった。
「そうだ、ベッドの下のお掃除もしないとね」
カルマはホウキを手に、ベッドの下のホコリをせっせとはこうとした、そのときだ。
コツンッ。
「おや? なにか当たりましたね。なんでしょうか……」
カルマは四つん這いになって、ベッドの下に手を伸ばす。
そして、そこにあった【それ】を見て、驚愕に目を見開く。
「こ、これはぁっ!?」
カルマは震える手で、それを掴んで、ベッドの下から取り出す。
「えっ、えっ、えっ……」
カルマはまるで、伝説の剣を引き抜いた勇者のように、それを高らかに掲げて叫ぶ。
「エッチな本だぁあああああああああ!」
☆
その日の夜。
リュージが寝静まった頃合い。
カルマはリビングに、チェキータを呼び出した。
「ハァイ、カルマ。どうしたの? あなたから相談ごとしてくるなんて、珍しいわね」
美貌のエルフが、楽しそうに笑う。
「本当はあなたに力を借りるなんていやですけど、緊急事態です。世界の危機です。仕方ありません」
チェキータはリビングのテーブルを挟んで、カルマの前に座る。
「それで何があったの?」
「これを見なさい」
スッ……とテーブルの上に、カルマがリュージの部屋で見つけた本を置く。
「あらあら」
チェキータは本を見て楽しそうに笑う。
「リューも男の子ねぇ。それで?」
「それで!? ふざけてるんですかっ!?」
かー! とカルマが気炎を上げる。
「息子が! エッチな本を隠し持っていたんですよっ? 15歳以上は見てはいけない……エッチな本を!」
「そうねぇ。でもリューも年頃だし、エッチなことが気になるんでしょう?」
動揺しまくるカルマの一方、チェキータは余裕の笑みのママだった。
「これはいかんともしがたい……きちんと言わないと!」
「あら、珍しい。きちんとリューを叱るのね? 15歳未満はこんな本を見てはいけないって」
カルマは首を振って言う。
「りゅーくんをしかるものですか!」
「じゃあ何を言うの?」
「そんなの決まってますよ! こうしちゃいられない、すぐに準備を整えないと!」
「またこの子、とんちんかんなことしようとしてない? まったく、あなたって本当に楽しい子なんだから」
その後チェキータとの話し合いは、夜遅くまで続いたのだった。
☆
翌朝。
リュージが目を覚ますと、となりに母が居た。
「もう……いつもやめって言ってるのに……って、えぇええええええええ!?」
起きたら母が居るのは、いつも通りだ。
しかし今朝ばかりは、妙な母が、いつも以上に妙だった。
「かあさん! なにそのかっこう!?」
カルマはエッチなスケスケのネグリジェを着て、リュージの隣で眠っていたのだ。
「もうっ! なんて格好してるの!? 母さんっ!」
するとカルマは目を覚まして、ぐいっと伸びをする。
「おはようりゅーくん。今朝のお母さんは、教育ママなのです」
「教育ママ……? なにそれ」
カルマは神妙な顔でうなずく。
「今朝は性教育の時間です!」
「せ……!? ちょっ、何言ってるのさっ!」
カルマは胸に手を置いて言う。
「りゅーくん……あなたがベッドの下に隠しているもの、お母さん見てしまいました」
「!?」
リュージが顔を真っ赤にして、動揺する。
「そしてお母さん……気づきました」
カルマがベッドの下から、エッチな本を取り出す。
そこには、髪の長い、胸の大きな女性の絵が描いてあった。
「りゅーくん……こういう母性にあふれた女性が好みなのですね」
「~~~~~~~~!」
リュージは顔を限界まで真っ赤にする。
「しかし解せません。どうして……どうして!? りゅーくんの性癖ドストライクな完璧な女性が目の前に居るのに! どうしておかずにしてくれないのですかっ!」
カルマが悲痛なる叫び声を上げる。
「お母さんりゅーくんのためなら脱ぎます! さぁ! お母さんと一緒に性教育をレッツビギン!」
リュージは体を怒りで震わせると、大声で叫ぶ。
「も~~~~~~~~~! でってぇええええええええええええ!」
その後怒ったリュージは、3日くらいカルマと口をきかなかったのだった。




