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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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180.息子、肩を並べて邪神と戦う【後編】



 リュージの体に満ちるのは、彼が出会い、絆を深めていった仲間達の力。


「セヤァアアアアアアアアア!」


 ダッ……! とリュージが地面を蹴る。


 その直線上にいるベリアルへと、攻撃する。


 ザシュッ……!


 回避した先にカルマがいて、カルマはその竜の爪でベリアルの背中を切りつける。


 ザンッ……!


「なるほど……それがおまえの力かリュージ」


 リュージはカルマの背中に乗る。


「力を束ね、一つに集束させる。それが勇者の強さか」


「そうだ! 僕は1人で戦っているんじゃない!」


 ダンッ……! とリュージとカルマが、ベリアルめがけて突っ込む。


 邪神のこぶしと、リュージ達の攻撃とがぶつかり合う。


 ドガァアアアアアアアアアアアン!


 魔王城の天井を破壊し、ベリアルは空へと吹っ飛んでいく。


 リュージはカルマの背に乗り、母は息子を連れて飛翔する。


 雲海の上に並び立つは、邪神と勇者。


 夜明けよりもなお明るい輝きを放つ勇者を見て、ベリアルは目を細める。


「……リュージ。私は感動した。貴様のような弱者が、ここまで強くなろうとはな」


 だがリュージはしっかりと首を振る。


「勘違いするな。僕は弱い。僕は力を託されただけだ」


 この体も、この力も、全部自分だけのものではない。


「そうか……道理で強いはずだ」


 フッ……と微笑むその顔に、リュージは見覚えがあった。


「ユートさん……?」


【どういうことです? ベリアルに意識を乗っ取られたのでは?】


「わからない。けど……今ユートさんの力を感じた」


【……なるほど。勇者の聖なる力が、邪神の力を中和しているのでしょう】


 ベリアルは強敵だが、本気だった場合ふたりでも適うわけがなかった。


 最強無比の邪神が完全復活している。


 一方でリュージはまがい物の勇者、カルマは魔王四天王の力の一分を持つだけのドラゴン。


 本来なら互角に張り合えるわけがない。


 それを可能にしているのは、勇者の功績だということだろう。


「さぁリュージ。幕を引け。おまえが終わらせるんだ」


 リュージはぎゅっ、と聖剣の柄を握りしめる。


「行こう……母さん」


「ええ!」


 ダンッ……! とリュージは空を蹴る。


「く、そ、がぁああ! 勇者めぇ! 最後まで邪魔をしよってぇええええええええ!」


 ベリアルの意識がまだ残っているのだろう。


 全体に向けて、万物破壊の黒い雷を放出する。


 バリバリバリバリバリバリ!!!!


 だがそこへカルマが、嵐の結界を張って打ち消す。


【ハッ……! 攻撃を当ててしまえばその雷も消える! その特性、よもや私が知らないとでも思ったか!】


 カルマは100年弱ではあったが、邪神の力を使っていた身だ。


 だからこそ、この力の利点も欠点も知っている。


「うぉおおおおおおおおおおお!」


 リュージは母の背中を蹴り再び飛翔。


「舐めるな、人間サル風情がぁああああああああ!」


 ベリアルは両手に万物破壊の雷を宿し、リュージに向けてこぶしを振る。


 ガギィイイイイイイイイイイイン!


「く……ぐあぁああああああ!」


 ベリアルは押し負け、背後へと跳んでいく。


 体勢を崩したリュージを、カルマが背中に乗せる。


「母さん……僕、うれしいんだ」


 戦いのさなかだというのに、リュージは笑っていた。


「いつも僕は、母さんの背中の後にいた。けど……今は、肩を並べて戦っている」


 記憶のなかの母はいつだって、自分の前に立っていた。


 その背中は遠くて、手が届かないと思っていた。


 けれど今は違う。


 すぐ隣に母がいる。


 守られるのではなく、力を合わせて、戦っている。


「征こう……そして見せつけてやるんだ!」


【ええ! 私たちの……最強おやこの力を】


 ふたりの体が強く、強く輝きを放つ。


 それは闇を切り裂く太陽を錯覚させる。


「【ハァアアアアアアアアアア!】」


 リュージは聖剣を振り上げる。


 黄金の魔力が頭上へと昇っていく。


 それは輝く柱のようであった。

 

 カルマは柱を螺旋を描きながら昇っていく。


 勇者と、英竜。


 ふたつの魔力が合わさり、そして一つとなる。


「消え去れ! サルどもおぉ!」


 ベリアルは黒い雷を、体から最大出力で放つ。


 カッ……!


 ゴォオオオオオオオオオオオオオ!


 黒い雷はやがて竜の姿へと変貌し、リュージ達を飲み込もうとする。


 以前のリュージならば怯えて母の助けを呼んだだろう。


 だが今は違う。


 彼は今、弱っちい竜のムスコではないのだ。


「僕はもう弱虫じゃない! 僕はリュージ! 英雄かあさんの息子! 僕らの絆は……誰にも負けないんだぁあああ!」


 リュージは聖剣を振り下ろす。


 黄金の輝きは、カルマとともに飛翔する。


 誰よりも強く輝きを放ちながら、最強の一撃となり、カルマアビスは蒼穹を飛翔する。


 空を、雲を引き裂きながら、最強のドラゴンは力強く空を泳ぐ。


 黄金の英竜と、漆黒の邪竜が、空の上で激突する。


 分厚く覆っていた雲を破り、永遠に昇ってこないと思われた太陽が、水平線の彼方から昇っていく。


【私は負けない! この背に息子を! 息子の大切な人たちを! そしてこの世界を背負っているから! 絶対に、負けないんだぁああああああああああ!】


 カルマの強大な力がベリアルの放った力を飲み込んでいく。


 邪竜を打ち破ると、英竜カルマは一直線に飛んでいく。


 圧倒的なエネルギーの波となって、カルマはベリアルを飲み込む。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 暗闇の空に、朝日が差し込む。


 そこに暗雲はなく、あるのはキレイに晴れた青い空だ。


「母さん!」


 りゅーじはカルマめがけて跳んでいく。


 カルマは人間の姿に戻り、振り返って、リュージに笑いかける。


 息子は、母の胸に自ら飛び込み、母は息子を、優しく受け止める。


 ふたりは1度抱擁し、離れる。


 リュージは拳を突き出し、カルマもまたそれに答える。


 こつん……とふたりはこぶしを付き合わせた。


 そこにいたのは、守り守られるだけの関係の2人では……ない。


 力を合わせ、難局を乗り越えた……確かな強い絆を併せ持った。


 真の親子の姿が……そこにはあったのだった。


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