180.息子、肩を並べて邪神と戦う【前編】
チェキータたちがメデューサに勝利した、一方その頃。
リュージは、邪神王ベリアルとの最期の戦いに挑んでいた。
ベリアル。
彼は今、勇者ユートの肉体に寄生している。
その顔は、クローンであるリュージに酷似している。
数年後、彼も同じ顔になるのだろう。
だがベリアルの髪は長く、そして白髪だ。
「では参るぞ偽勇者」
ベリアルは両手を広げる。
左手に、純白の光がともる。
「みんな、跳んで!」
リュージの言葉に、母達は後方へと大きく跳躍。
ズォッ……!
足元からは先の尖った岩が、突如として生えてきたのだ。
リュージの号令がなければ全員串刺しになっていたところだ。
「今度は上から来るよ! 気をつけて!」
見上げると頭上からは、無数の剣が降り注ぐ。
ズドドドドドドドッ……!
剣の雨は地上にいるすべてを串刺しにしようとする。
カルマ達に当たる前に、リュージが立ち塞がる。
「セヤァアアアアアアアアア!」
リュージは手に持った光の剣を、思い切り縦に振る。
ズバンッ……!
日輪の輝きは斬撃となり、降り注ぐ剣の雨をなぎ払った。
剣はリュージ達を避けるように、地面に突き刺さる。
「ほぅ。貴様、見えてるな。少し先の未来が」
リュージはまっすぐにベリアルを見やる。
聖剣の持つ本来の機能の一つだ。
【未来視】。やつが言ったとおり、少し先の未来が見えるスキルである。
「かつての勇者ユートも使っていたな。なるほど、100%力を引き継いだわけだ。やるではないか」
ベリアルが左手を向ける。
今度は無数の吸血コウモリたちが、リュージ達に襲いかかってきた。
「母さん!」
「任せなさい! バブコ! いきますよ!」
カルマは右手に嵐を宿し、前方めがけて魔法を発動。
ビョォオオオオオオオオオオオ!!!
そこにバブコの爆炎虫が混じり合い、コウモリ達へと殺到。
ドガァアアアアアアアアアアアン!
爆発による煙にまぎれ、リュージがベリアルの懐に潜り込む。
「空歩。空気を蹴り移動するスキルか。……それも、見たぞ」
「やぁっ!」
リュージが鋭い一撃を、ベリアルの首めがけて振るわれる。
ベリアルは半身を倒して回避。それと同時に回し蹴りをリュージに喰らわそうとする。
「させない!」
バブコの念道力が発動。
ベリアルの蹴りが見えない力で止められる。
「せやぁああああああああ!」
動きが止まった隙を見て、リュージが上段斬りをくわえる。
ザシュッ……!
ベリアルの胴体に一撃を入れる。
邪神王が完全復活して初めて、ヤツにダメージが入ったのだった。




