178.息子、完全復活する【中編】
ベリアルたちの居る、魔王の間。
広いホールの天井に穴が開いた。
そして、そこから強烈な光が漏れる。
「……っ!」
あまりのまぶしさに、ベリアルは最初太陽が差し込んできたのかと思った。
だが違う。
そこにいるのは、輝く黄金を背に立つ……勇者の姿だった。
「リュージ……それに、カルマ……」
光の発生源は、彼の持つ聖剣だった。
あれは以前勇者ユートが使っていたもの。
だがリュージは完全に聖剣を使えなかった。
「……勇者の力を、物にしたか」
リュージの右手に収まる聖剣は、ユートの持っていたときと同じ色をしている。
日輪を手に持っているかのような、強く輝く黄金の色。
「りゅーじ! やったのだな! ついに己に打ち勝ったのじゃな!」
バブコが涙を流しながら、リュージを見上げる。
彼は微笑むと、その姿が消える。
ザシュッ……!
「ほう……」
先ほどまでバブコを掴んでいた腕が、いつの間にか切断されていた。
リュージはルコを回収し、バブコの隣に着陸する。
「待たせてごめんね、ふたりとも」
彼の微笑みに、ルコが静かに涙を流す。
「良かった……ぱぱ。元気……なって……」
リュージは不思議なほど、穏やかな表情を浮かべていた。
そこにいたのは、母の後ろで甘ったれていた少年ではない。
聖なる剣を持ち、人々の平和のために剣を振るっていた勇者……でもない。
なんとも形容しがたい。
だがこれだけはいえる。
今のリュージには、ついさっきまでなかった自信に満ちている。
それだけは、ベリアルは確信を持って言えた。




