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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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177.息子、立ち上がる【中編】



「どうして……ですって? そんなの決まってますよ」


 カルマはまっすぐリュージを見やり、正面からハグをする。


「あなたが私の、大事な息子だからです」


 母の甘い匂いと、柔らかなぬくもり。


 それは落ち込んでいたリュージの心を、甘く優しく包み込む。


 カルマは全て知って、それでも自分を、息子だと認めてくれた。


 どうやって、何を使った創られたかわからない、人造物を。


 自分を殺す目的で創られた、殺人兵器を。

 この人は、拒むことなく、息子と呼んで抱きしめてくれた。


「……でも、でもぉ」


 ぽろぽろと涙を流しながら、リュージは母に言う。


「僕は……母さんを傷つけたんだ……」


「ううん、全然痛くなかったし、傷付いてなんかいませんよ」


「僕は……母さんの人生を狂わせてしまったんだ……」


「そんなことない。あなたが来たことで、私の人生はバラ色ハッピーになりました」


 カルマは顔を話し、大輪の花のごとく美しい笑みを浮かべる。


「私の長い長い孤独をいやしてくれたのはりゅーくん、あなたです。あなたがいたから私は今日まで生きて来れたんです。人生を狂わされたなんて一度も思ったことはありませんよ」


 母の瞳は一変の曇りもなかった。


「あなたを拾ったあの日、私は世界で一番の宝物を見つけたと思いました。そしてその気持ちは、今も全然、変わっていません」


 本心でそう言ってくれているのだ。


「でも……僕は……母さんを殺すために、創られた命なんだよ? 母さんは利用されてたんだ。僕という、自分を殺す兵器を15年もかけて……無駄な時間を、かけさせられて……」


 それはぬいぐるみを、自分の子供と思い込んで15年育てていたのと同じだ。


 こんな命に意味は無い。

 15年は無駄だったのだ。


「そんなことはない。あなたはリュージ。私の愛しいひとり息子」


 カルマはリュージの言葉を、一つ一つ受け止めて、肯定してくれる。


 全てを知ってなお、彼女のなかでは、リュージは、自分の息子なのだ。


「……嘘ついてるよ」


「そんなことないです」


「嘘だよ、だって……自分を殺すために、誰かが与えた偽物の息子なんだよ? それを……どうして本物の息子だって言えるのさ?」


 カルマはリュージをまっすぐ見て答える。


「そこに、愛があるからです」

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