177.息子、立ち上がる【前編】
メデューサの張った結界のなか。
何もない闇の空間で、リュージは母と再会を果たした。
カルマはしゃがみ込んで、リュージの体を抱きしめる。
久方ぶりの母のぬくもりに、リュージは叫びたいほどの安堵を覚えた。
だが同時に疑問がわく。
「母さん……触れられてる。どうして……?」
「おそらくですが、私のなかの邪神の力が失われたからでしょう」
「なっ!? そ、そんな……どうして……?」
「んー……まあ色々あって」
カルマがリュージに隠し事をするなんて、珍しいこともあったものだ。
「とにかくこれでもう私と一緒に居てもあの変なビリビリはもう発生しません。あなたは何も気にしなくていいんです」
確かに、母を傷つけることがないのなら、一緒に居ても問題ないだろう。
「さぁ、帰りましょう」
カルマはリュージを立ち上がらせ、手を握ろうとする。
だがリュージは一歩引いて、首を振るった。
「……できないよ」
「どうして?」
「だって……だって僕は……母さんの……」
リュージは、真実を口にするのが怖かった。
母は知らない。
自分が、メデューサによって創られた命だと言うことを。
するとカルマはリュージを見て言う。
「メデューサが私を殺すために創った兵器……でしたっけ?」
「ど、どうして知ってるの……?」
カルマは答えない。
ただ微笑をたたえている。
……この人は、リュージが自分を殺す兵器だと知って、それでも助けに来てくれたのか。
それでも……自分を抱きしめ、息子と呼んでくれるのか。
「どうして……? なんで僕ために、そこまでしてくれるの……?」




