176.息子、母と再会する【前編】
リュージはメデューサの張った結界のなかで、うずくまっていた。
真っ暗な空間。
何もない闇のなかで、リュージは三角座りをしている。
「……どうして」
ぽつり、とリュージは漏らす。
「どうして……母さんが……ここに……?」
少し前、自分が塞ぎ込んでいたところ、母の声が聞こえたのだ。
母は、リュージを助けに来たと言った。
……その後は母の声はしない。
外がどうなっているのかわからない。
リュージは耳を両手で塞いで、目を閉じる。
「……こないでよ。もう、放っておいてよ」
リュージは消える決意をした。
自分が生きてるだけで、大切な人に迷惑をかけてしまうから。
と、そのときである。
『りゅーくん』
結界の外から、母の声が聞こえた。
「母さん……」
久しぶりに聞く母の声は、驚くほど穏やかだった。
その声を聞いてるだけで、リュージのささくれだった心は、癒やされる。
泣きたくなりそうになる。
母に、触れたくなる……だがそれを、リュージはグッとこらえた。
「……帰ってよ」
『嫌です。一緒に帰りましょう、りゅーくん』
「帰ってっていってるんだよっ!」




