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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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174.邪神王、完全復活する【後編】



 邪神王が復活した。


 その瞬間、バブコ、そしてルコはその場に崩れ落ちそうになる。


「ばぶこ。……やばい。べりある。まえより。つよい……」


「ああ……わしにはわかる。あの肉体は元は勇者ユートのもの。そこにベリアルの魂が完全に定着している。聖なる最強と、邪悪なる最強。ふたつの無双の力が、完全に融合しておる……」


 バブコたちは、立っているだけでもやっとだ。


 新生ベリアルの発する強大な魔力を前に、体がバラバラになりかけている。


 それもそのはず。


 ルコたち魔族の体を、勇者の聖なる魔力が打ち消そうとしているからだ。


 勇者には破邪の力。

 すなわち、モンスターや魔族に対して有効な、聖なる力を持ち合わせる。


 魔族であるふたりにとって、勇者は天敵。

 天敵が、元々ある最強の、邪神能力を持っている。


「無理……るぅたち、かてっこないよ……」


「ばかもの! あきらめるな! リュージを救う、そうきめただろうが!」


 バブコに叱咤され、ルコはこくり……とうなずく。


「わしらを救ってくれた、あの優しい親子のため、死力を尽くすはいまぞ!」


「バブコ……わかった。るぅ……がんばる!」


 ふたりは魔力を高める。


 ルコは念動力で、万力の力でベリアルを閉めあげる。


 バブコは先ほどの何十倍もの大きさの、爆炎虫の塊を作り出す。


「「はぁああああああああ!」」


 渾身の力を、ベリアルにたたき込めようとした、そのときだ。


「ひれ伏せ」


 グシャッ……!


 ルコとバブコが、地面に体を勢いよくたたきつけられたのだ。


「ガハッ……!」


 まるで、とてつもなく重いものが、背中に乗っているかのようだ。


 だが魔法を使っている痕跡もなければ、そもそも何ものっていない。


「まさか……言葉だけで、わしらを押しつぶしてるのか……?」


 能力でも技能でもなく、純粋に。


 体が、ベリアルの言うことを、効いてしまっているのだ。


 逆らえば死ぬと細胞が震える。

 ゆえに、無自覚に、相手の命令に従ってしまったのだろう。


 ベリアルはわずらわしそうに、手を払う。

 それだけで、ルコの最大出力の念動力をはじき返す。


 ふぅ……とベリアルがため息をつく。


 爆炎虫は、かき消された。


「なんという……強さじゃ……」


 ぐぐ……っと力を込めて、なんとか立ち上がるふたり。


「あきらめる?」


「ハッ……! まさかじゃろ」


 ぐいっ、とバブコは口元の血をぬぐう。


「わしらは、決して諦めぬ。生きて、みなのもとへ帰るのじゃ!」


 それは決意表明ではなく、己を鼓舞しているだけに過ぎなかった。


 ふたりとも、自分が死ぬという確信があった。


 それほどまでに、完全復活したベリアルは強い。


 きっと、もう二度とリュージたちには会えないだろう。


 それでも、戦わなければならない。


 母親カルマが、息子リュージと再会する時間を、少しでもかせぐために。


 二人の娘は、決死の覚悟で、地上最強ベリアルに挑むのだった。

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