173.エルフ、メデューサと戦う【後編】
「ハァッ!」
チェキータは手に持った長剣で、メデューサに斬りかかる。
裂帛の気合いとともに繰り出される突きは音速。まさに不可避の一撃。
白髪蛇女は避けれない。
否、回避しない。
ザシュッ……!
「や、やったのですっ?」
「くく……可愛い攻撃ね、デルフリンガー」
チェキータの剣は、メデューサの眉間を串刺しにしている。
だというのに、メデューサは生きていた。
「そ、そんな! どうして生きてるのです……?」
「知らないの、ウサギのお嬢さん? わたくしは不死の魔女なのよ」
くすくす……とメデューサが笑う。
蛇を出して、身体中にささった矢を抜く。
「……毒も効いてなかったのか」
「そ、そんなぁ……勝てるわけないのです……」
「……そんなはずはない。きっと、からくりがあるはず」
落ち込むシーラに、ルトラが励ます。
チェキータはだんっ! とメデューサを蹴って距離を取る。
離れると同時に手に魔法の炎を宿し、それを投げつける。
ドガァアアアアアアアアアアアン!
床の壁が解けるほどの炎。
しかしメデューサはピンピンしていた。
「これが全力? デルフリンガー。あなた、昔より弱くなったのではなくて?」
メデューサは両手を広げる。
その袖から、大量の白蛇が湧き出る。
蛇たちは津波のように、チェキータ……ではなく。
「こ、こっちきたのですー!」
「しーちゃん! ルトラ!」
シーラたちを狙った攻撃だったのだ。
メデューサは急いで、シーラたちへ向かって走る。
ふたりを抱きかかえて、チェキータは大きく距離を取る。
「まぁまぁ。デルフリンガーったら。どうしてそんな、役立たずを二人も連れてきたのかしらね?」




