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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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172.それぞれの戦い【後編】



 チェキータやルコたちと分かれたカルマは、リュージの待つルートを歩いていた。


「…………」


 その道には、何もなかった。


 真っ黒な暗闇が、どこまでも広がっていく。


 足音も、自分の呼吸する音、心音すらも、聞こえない。


 完全なる闇。

 完璧なる無。


 それがカルマの前に、どこまでも広がっていた。


「…………」


 カルマは夜が嫌いだった。


 子供の頃、一人さみしく泣いた日々を思い出すから。


 だから、カルマは何度も息子のベッドに、滑り込んだ。


 一人が怖いから。

 夜が怖いから。

 暗闇が、怖いから。


「…………」


 けれどカルマの歩みは止まらない。

 止められない。


 なぜならもう、夜は怖くないのだ。


 暗がりを怖がっていた、幼い自分はもういない。


 ここにいるのは、息子を助けるため、まっすぐ前を向いて歩く母が一人。


 彼女を突き動かす力は、ただ一つ。


 息子ただ一人だ。


 ーーアレが息子なのか?


 暗闇から、声が聞こえた。


 それが幻聴なのか、はてまたメデューサが用意したトラップなのか、わからない。


 ーーアレは、おまえを殺す兵器だぞ。


 ーー血のつながりのない、赤の他人だぞ。

 脳内に直接響き、カルマの心を惑わせようと、何者かの声が聞こえる。


 だがカルマは止まらない。


 立ち止まらず、まっすぐに、息子の元へと歩く。


 ーー自分を殺すための道具を一生懸命育てていただなんて。


 ーー哀れだねえ。可愛そうだねぇ。


 カルマは立ち止まる。


 そして……ふっ、と笑った。


 カルマは拳を握りしめる、その拳に纏うのは嵐。


 手を横になぐ。

 すると、激しい嵐が、通路に吹き荒れる。

 それは天井に設えてあったスピーカーを破壊し、暗幕を下ろしていた結界を破壊した。


「そんなもので私が、足を止めるとでも思ったか?」


 カルマの顔には自信満ちあふれていた。


「誰が何を言おうと、あの子は私の大事な息子。たとえ血のつながりがなかろうと、そんなもの……私には関係ない!」


 ざわ……ざわざわ……と天井や床の暗闇から、モンスターもどきが湧き出てくる。


「私は立ち止まらない! 絶対に、何があっても!」


 カルマはドラゴンの姿へと変身すると、疾風のごとく駆け出すのだった。

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