172.それぞれの戦い【前編】
チェキータはシーラ、ルトラを連れ、メデューサの待つルートを選択した。
「しーちゃん、ルトラちゃん。こっち来てくれてありがとう」
チェキータは両隣を歩く少女たちを見て言う。
「けど……本当に引き返していいのよ。この先に待っているのは、邪悪な魔女。下手したら、死ぬことだってあり得るわ」
真剣な表情でチェキータは言う。
だがシーラたちの瞳には、何の揺るぎもなかった。
「だいじょうぶなのです! しーら……大事なもの、まもりたいのです!」
「……アタシも覚悟はできてるから。心配しないで、チェキータ」
「ふたりとも……」
「しーらはりゅーじくんと、カルマさんと、みーんなで家に帰るのです! そのためにがんばるのですっ!」
いつもおどおどしていたウサギ少女。
だが今の彼女に、おびえは一つも無い。
彼女もまた、カルマ同様に、成長したのだ。
邪竜とたくさんのイベントをこなすうちに。
「わかった。けど……本当にあぶなくなったらすぐに逃げなさい。相手は冗談じゃなく強いわ」
「……チェキータ。そのことなんだけど。メデューサは強いから、【作戦】練っておくべきだと思うの」
ルトラはメデューサの娘だ。
母の手口をよく理解している。
「そうね……。どんな作戦?」
チェキータたちは、ルトラから作戦を聞く。
なるほど……とうなずくチェキータたち。
「わかったわ。それでいきましょう」
作戦が決まったチェキータたちは、そのまま通路を進んでいく。
チェキータの風魔法を使って、長い長い通路を進んでいく。
そして、三人は開けた場所にたどり着いた。
そこは研究室のようであった。
左右に培養カプセルがいくつも立ち並んでいる。
「あら、あなたたちが来たのね、デルフリンガー」
「メデューサ……」
白衣を着た、白髪の女性が、チェキータを見下ろして言う。
「急がずとも世界とともに死ねるというのに。どうして死に急ぐのかしら?」
「そんなつもりはないわ」
チェキータは剣を抜く。
切っ先をメデューサに向ける。
「そんな出来損ないの実験体と野ウサギ1匹とで、わたくしに勝てるとでも思っているのかしら」
メデューサが手を広げる。
壁や天井に、無数の白い蛇がうじゃうじゃとうごめく。
「ここですべて終わらせる。悲劇の連鎖も、あなたとの因縁も」




