170.邪竜、敵地に乗り込む【後編】
上空にて。
カルマたちの侵入を阻むように、上空に無数の敵が待ち構えていた。
「カルマさん、準備ってなんなのですー?」
【私のとっておきをお見舞いしてやります。みんな、しっかりと背中に捕まっていてください】
カルマはバサッ、と大きく羽を広げる。
体から大量の魔力が噴出する。
「わっ! か、カルマさんの体の色が、金色に変わってくのですー!」
カルマのうろこが、頭の先から、足の先まで金色へと変わる。
それは太陽のようにまばゆい光を発していた。
「これはマキナアビス……カルマ、おぬしの母の力か?」
バブコが目を丸くして言う。
マキナもまた四天王だったため、バブコは知っているのだろう。
【そのとおりです。マキナから受け継いだ、『母の力』です】
カルマが広げた翼を、思い切り打ち付ける。
魔力を帯びた風が、あたりに吹き荒れる。
それは徐々に勢いを増し、やがて荒れ狂う嵐へと変貌した。
ビョォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
「うぉー。すげー。でっけーせんたくのなかみたいー」
ルコが目をキラキラさせる。
「……ねえ、カルマって邪神の力失ったんじゃなかったの? それなのにこの威力って……」
ルトラはカルマの規格外の攻撃力に、あきれたようにつぶやく。
「マキナはわしら四天王のなかでも、攻撃の面においては最強じゃった。その力をすべて受け継いでおるのなら、あれくらい造作もなかろう」
ややあって、カルマたちを取り囲んでいた敵は、きれいさっぱり一掃された。
「すごいのですすごいのですー! これならりゅーじくん助けられるのですー!」
【ありがとう。といってもこの嵐は、力をすごく消耗します。マキナからもらった魔力があるのでまだ戦えますが、温存した方がよいかと】
「そうね、乱発は控えましょう」
チェキータがうなずいて言う。
【さて、雑魚も片付いたことですし、いよいよ本丸に乗り込みますよ!】
「「「おー!」」」
カルマは翼を広げると、遙か上空に浮かぶ城へと、一直線に飛ぶのだった。




