170.邪竜、敵地に乗り込む【前編】
カルマは仲間たちとともに、リュージ救出に向けて、出発した。
現在、カルマはドラゴンの姿で、大空を一直線に駆け抜けている。
「うぉー。かるまー。ちょーはえー」
カルマの背に乗るルコが、興奮気味に言う。
「しかしカルマよ。おぬし、ドラゴン姿がちがくないかの……?」
元ベルゼバブのバブコが、カルマの体を見渡して言う。
かつてのカルマは、漆黒のうろこに、剣山ののような歯、そして恐ろしいオーラを放出するまさに邪悪なる竜だった。
しかし現在のカルマは、邪竜姿をしていない。
体は大きいが、4足歩行に翼をはやした、ごく一般的な竜のフォルムになっていた。
もちろんオーラは出ていない。
【これが本来の私の姿なのですよ。邪神の力を取り込んだことで、姿が変質していたんです】
「……けど、カルマ。だいじょうぶなの?」
人狼少女ルトラが、不安げに尋ねる。
「……相手はメデューサにベリアルもいるんだよ? 邪神の力なしで太刀打ちできるの?」
「問題ないわ、ルトラちゃん」
チェキータが微笑む。
「邪神の力なんてなくっても、今のカルマは誰よりも強いわ」
「そうなのです! 子供を守るときのおかーさんが、一番つよいのですー!」
チェキータの言葉に、ウサギ獣人のシーラが同調する。
【そういうことです。それに……私には完全に無力ではありません。『受け継いだ力』がありますから】
「……それってどういうこと?」
と、そのときだった。
「みなさん! 敵が来るのですー!」




