168.邪竜、息子を救出に向かう【前編】
世界蛇ヨルムンガンドによる攻撃を受けた、チェキータ。
ルトラの助けがあり、窮地を脱することはできた。
話はルトラがチェキータをつれ、カルマの家にやってきてから数時間後。
「カルマ……」
ベッドに横たわるチェキータは、体を起こそうとする。
「無理しないでください、ケガしてるんでしょう?」
カルマはチェキータの細い肩をつかむと、ベッドに寝かせる。
チェキータは気まずくて、カルマの目を見ることができなかった。
「ルトラから、大体の事情は聞きました。ヨルムンガンドのことも。メデューサのことも。あなたのことも。……りゅーくんのことも」
ハッ……! とチェキータはルトラを見やる。
「……ごめん。カルマには、黙っておくのは不誠実だって思ったの」
「この子もりゅーくんと同様、作られた勇者だったのですね」
ルトラがこくり、とうなずく。
「……人造勇者邪竜殺害計画。邪竜に子供を育てさせ、邪竜を殺す作戦の名前。わたしはカルマに育てられるはずだった。けど愛嬌がないからってことで、計画から外されたの」
ルトラは弱々しく自嘲する。
「そんな計画があったんですね。……で、チェキータもそれを知っていたと」
チェキータは深々と頭を下げる。
「ごめんなさい……カルマ。わたし、あなたにそのこと隠してたの。ごめんなさい、ごめんなさい……」
ぽた……ぽた……とチェキータの目から涙がこぼれ落ちる。
ふわり、とチェキータの体を、カルマが抱きしめる。
「いいんですよ、チェキータ。私、気にしてませんから」




