167.エルフ、メデューサと対峙する【前編】
メデューサはリュージを魔法で眠らせ、結界の中に閉じ込めた。
「くふっ♡ これで邪魔するものはすべて取り除いた。あとは時間がたつのを待つだけね」
彼女は世界蛇ヨルムンガンドの背中の上に乗っている。
その隣には、球体状の結界があり、そのなかでリュージが目をつむっている。
そのときだ。
「メデューサ!!!!」
「あら、デルフリンガー。どうしたの、怖い顔をして」
空中に浮かんでいるのは、金髪のエルフ美女チェキータだ。
普段穏やかな微笑をたたえる彼女が、今、射殺すばかりににらんでくる。
「リューを離しなさい!」
「嫌、ですわ」
ぎりっ、とチェキータが歯がみする。
「……はじめから、これが狙いだったのね」
「ええ。勇者リュージがいると、わたくしの計画に邪魔でしたから」
「リューをどうするの!?」
「世界が滅ぶまで眠ってもらった後、適当に殺しますわ。今死んで、勇者の力が誰か別の人に宿ったら厄介ですからね」
「……リューを、何だと思っているの?」
チェキータが自分の拳を、白くなるまで握りしめる。
「勝手にリューを作って、勝手に母親を殺すプログラムを組んで、勝手に殺そうとしている……」
「何って、駒に決まってるでしょ?」
チェキータの額に青筋が浮かぶ。
「……もういい。おまえを殺す」
ふっ……とチェキータが消える。
「お得意の隠蔽スキルね。ほんと、暗殺向きよね、あなたは」
相手から認識されなくなる、最強のスキル。
だが……。
バシッ……!
「あっ!」
世界蛇の尾が、姿を消したチェキータの腹部をたたきつけたのだった。
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