166.息子、捕まる【後編】
「僕が……勇者の力を、拒んでいる……?」
メデューサから聞かされた事実に、リュージは耳を疑う。
「ええ。坊や。あなたはその身に宿した勇者ユートの力を、はっきりと拒絶しているわ。憎い、とも思っている」
「そ、そんなことはない……!」
「そうかしら?」
メデューサが実に愉快そうに笑う。
「あなたはこう思っていない? ……自分が作られた勇者でなければよかったのに、普通の人間だったらよかったのにって」
ドキッとリュージの心臓が、体に悪いはねをする。
「仕方ないことだわ。だってその力のせいで愛する母親を苦しめることになっているんですもの」
「それは……」
「そんな力、欲しくなかった。人造の勇者ではなく普通の子でありたかった。そういう気持ちが、勇者の真の力を発揮させるのを拒んでいるのよ」
言われて、確かにそういう気持ちが自分の心のなかにあると、リュージは気づいた。
「こうも思っているのではなくて……? こんな重く、そして物騒なものなんて……いらないって」
図星をつかれ、リュージは黙り込んでしまう。
「隙あり♡」
リュージの周囲に、魔方陣が展開する。
そくざにリュージを閉じ込めるように、球体状の結界が張られた。
「し、しまった……!」
どんどんどん! とたたいても、結界は割れることはなかった。
「あなたに真の力を使われると厄介だもの。少しばかりおとなしくしていてちょうだいな」
ぱちんっ! とメデューサが指を鳴らす。
「なんだ……体が……重く……」
リュージのまぶたが、徐々に下がってくる。
体全身に倦怠感、そして激しい眠気が襲ってくる。
あらがうこともできず、リュージはそのまま眠りにつく。
「さて、最大の障害は取り除かれたわ。あとはベリアル様が完全体になられるまで、この世界を蹂躙し尽くしましょう」
「GISHAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
メデューサはリュージの入った球体ともに、世界蛇の頭に乗る。
ヨルムンガンドは主人の命令に従い、世界の破壊活動を再開するのだった。
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