165.終わりの始まり4
メデューサが造りあげた、世界蛇ヨルムンガンド。
この蛇は地下よりでて、世界を飲み込み始めた。
「な、なんだこのデケえ蛇は!」
「おい! S級冒険者よんでこい!」
蛇に気付いた冒険者たちは、勇敢にもヨルムンガンドに挑もうとする。
彼らは武器、魔法を用いて、世界蛇に斬りかかろうとする。
ガキンッ!
ガギギンッ!
「くそっ! 固えぞ!」
「そんな! 魔法もきかないなんて!」
世界蛇はその巨体故に、亀の如くゆっくりと進むことしかできない。
だが蛇を止められるものはいなかった。
人間の持つ剣や魔法は、世界蛇の前ではまるで歯が立たなかったからだ。
「街から避難しろ! このままだとデカぶつに食われるぞ!」
蛇は人の多いところを、ワザと狙って進撃してるようだった。
巨体は大地を、街を、すりつぶしていく。
通った後には何も残らない。
そして……。
「GISHAAAAAAAA!!!!!」
「な、なんだ……? 蛇が紫の何かを吐いたぞ……?」
「バカ逃げろ! 毒だぁああああ!」
ヨルムンガンドの口から吐き出されるのは、毒の霧だった。
それを浴びれば、植物はたちまち枯れ、大地は毒に犯される。
毒の制で沃野は荒野へと、美しい湖はヘドロの沼へと変貌する。
毒霧は大地や海だけにとどまらず、空までもを飲み込み始めた。
「空が急に暗くなったぞ……?」
「雨……いや! 酸の雨だ!」
毒の霧は集合体となり、毒の雲となった、酸性の雨を降らせた。
ただでさえ世界蛇の毒で致命傷を負っていた大地は、さらなる追い打ちによって、完全に死に絶えてしまう。
以後、この土地には作物が育たなくなるのではないか。
そう不安がらせるほど、大地から栄養は全て失われ、ひび割れていく。
海も川も、もう一生飲めなくなるほど、酷く濁ったものと代わっていく。
すむところも、食べるものも、世界蛇によって人間たちは奪われた。
あっという間の蹂躙劇だった。
このまま何もせず手を拱いていては、いずれこの青い星が、死の星と朽ち果てていくだろう。
街の住民の絶望しきった表情を、メデューサは愉快そうに見下す。
「さぁわたくしの愛しい世界蛇。全てを飲み込みなさい。そしてこの地を魔のものたちが住まうにふさわしい、恐怖と混沌に満ち満ちた世界へと変えるのよ」
書籍、コミックス好評発売中!




