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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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163.邪竜、母を失う【中編】



 半身を失い、死にかけているマキナ。


 カルマの腕の中で、マキナがつぶやく。


「もうわがはいは……長くない。死ぬ前に……残すことがある」


「死ぬなんて言わないでください! くそっ! 血が……血がとまらにない! シーラを呼びに!」


「いいんだ。最期は……おまえのそばで眠らせてくれ」


 カルマは激しく動揺していた。


 何よりも困惑しているのは、自分が母の死に動揺していることだ。


 あんな、最低な母だと、もう自分の母ではないと思った相手なのに。


 どうして、死にゆく母を見て……こんなにも胸が締め付けられるのだ?


「カルマ……力が渡った以上、ベリアルは復活し、世界に破滅をもたらす。そうなった場合、今のおまえでは無力だ。カルマ……腕を出せ」


 カルマは呆然とする。

 やはり、考えがまとまらなかった。


 じれたマキナがカルマの手を握る。

 ぽわ……っとマキナとカルマの手が光り輝く。


「わがはいの……魔王四天王としての力を……貴様に譲渡する。ベリアルと比べれば小さな力だが……戦力にはなる。それと、わがはいの魔力を、ありったけ……」


 マキナが手をぎゅっと手を握る。


 小さな体から、莫大な量の魔力が、カルマのなかに流れ込んできた。


「やっ、やめてください! 死を早めるだけです!」


「いいんだ……どのみちもう助からない。それより……おまえに魔力をたくし……少しでもベリアルに対抗できるようにしてあげたい……」


 カルマは手を振りほどこうとする。

 だが、驚くほど強い力で、マキナはその手を離そうとしなかった。


「どうしてですか!?」


 訳がわからなくて、カルマはマキナに尋ねる。


「あなたのやっていることはめちゃくちゃですよ! あなたは私に酷いことをした! 私のことどうでもいいからそうしたんでしょう!? なのに……私をかばって重傷を負い、死に際に私にいろんなものを託そうとする!」


 カルマはマキナを見やる。

 

「どうして!? ねえ、どうして今更、私に優しくするの!?」


 ぽた……とマキナの頬に、カルマの目からこぼれ落ちた涙があたる。


「それはな……カルマ」


 マキナはカルマの頬に手を伸ばし、その涙を拭いて、微笑んだ。


「あなたのことが、大好きだからよ」

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