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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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162.邪竜、その身を差し出す【後編】



 メデューサが呼び出したのは、【大蛇】だった。


 それも尋常ではない大きさだ。


 銀の鱗を持つ巨大なる蛇に、メデューサは腰掛ける。


「【世界蛇ヨルムンガンド】。わたくしが邪神王様の細胞を培養し造りあげた、最高傑作のモンスターですわ」


 ハッ……! とカルマは我に返る。


「マキナ!」


 ダッ……! とカルマはマキナに駆け寄ろうとする。


 マキナは下半身を、世界蛇によって食いちぎられたのだ。


 酷い出血をしている。


「おっとお待ちなさい、カルマアビス」


 世界蛇がカルマの前に立ちふさがる。


「どきなさい! こんな蛇くらい!」


 バリ……! とカルマは右手に万物破壊の雷を宿す。


 世界蛇の土手っ腹を、思い切り殴り飛ばした。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアン!


 凄まじいインパクト。

 しかし……。


「なっ!? 無傷ですって!?」


「この蛇は邪神王様の細胞でできてると言ったでしょう? 邪神の力を無効化する力を持っている」


「そんな……」


 無敵のカルマは、初めてその力が通じない相手と相対し、動揺した。


「うう……」


「ま、マキナ!」


 下半身を失い、瀕死の重体のマキナ。


 カルマはすぐさま治癒を施そうとする。


 だが治癒の力が、マキナに効かなかった。

「そんな……」


「世界蛇は邪神の力を分散させる力があるののよ。その毒をマキナは受けた。つまり、あなたの治癒はマキナに通じない」


 ようするに、マキナは手の施しようがないということだ。


「方法があるとすれば、邪神の力を取り去り、通常の治癒魔法で対処するのね。もっとも、あの死に体を邪神の治癒力なしで治せる保証はないけれど」


「カル……マ」


 マキナが、虫の息でつぶやく。


「わがはいのことは……良い。ベリアルの力を……決して渡すな」


「そんなこと……できるわけないでしょ!?」


 ギリッ、と歯がみして、メデューサを見やる。


「さっさと力を抜き取りなさい! 早く!」


 にんまりと笑い、メデューサが世界蛇から降りる。


 カルマの前まで歩いてくると、メデューサはカルマの胸に、腕を突き刺した。


 痛みは不思議と無かった。


 ずるり……と手を引き抜くと、そこには漆黒の水晶が握られていた。


「くふ……くふふふふ! あはははは! ついに! ついに手に入れましたわ! 邪神王の力!」


 メデューサは、もうカルマに興味が無くなったのか、その場を離れる。


「これさえあればもう後は用済みよ。じゃあね」


 メデューサは世界蛇の頭に乗ると、その場を後にしたのだった。


 ……かくして、カルマアビスは、その身に宿した最強の力を、失ったのだった。

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