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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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161.息子、悩む【後編】



 宿屋にて、リュージは自分の悩みをチェキータに打ち明ける。


「だいじょうぶ……だいじょうぶよ、リュー」


 チェキータは強く、リュージを抱擁する。

「そんなことしなくてもいい。大丈夫だから」


「ほんと……?」


「ええ。大丈夫。あなたもリューも、また前みたいに傍らで、笑い合える日が来るから」


 リュージはチェキータを見やる。

 そこにいたのは、いつも慈愛と余裕にあふれたお姉さんエルフ……ではなかった。


 無理に笑い、励まそうとしている、弱々しい姿がそこにあった。


「チェキータさん……」


 彼女はリュージを強く抱きしめる。


「大丈夫。大丈夫だから。そんな悲しい顔をしないで? リュー、笑って。あなたも、カルマも、笑ってて……ね?」


 ……チェキータに励まされても、しかし心が晴れることはなかった。


 それは当然だ。


 自分の存在意義が、酷いものだったからだ。


 母を殺すためだけに生み出された兵器。

 

 それが自分だった。


 自分には本当の両親はおろか、育ててくれた大切な母を殺すために作られた刃だったのだ。


「僕は……何のために……何のために……生まれてきたの? ……僕なんて、生まれてこなければ……」


「そんなことないわ!」


 チェキータは声を荒らげる。


「そんなことは決して無い! あなたは生まれてきて良かったのよ! カルマはあなたに救われた! あなたがいなければあの子は死ぬところだった! あなたが自分の母親を救ったのよ!」


 ……必死になってチェキータが自分を肯定してくれる。


 それでも……リュージの心には、まるで穴が空いてしまったように空虚さを感じていた。


 チェキータは、なんとかすると言っていたが。


 一番シンプルな回答は、自分が死ぬべきだということだろうとぼんやりと思った。


 ……そうだ。


 自分は、いちゃいけない存在なんだ。


 自分が死ねば、母さんが助かるなら。


 悲しむかも知れないけれど、それでも……母さんが生きてさえいてくれれば……。


 ……いつもは心に響くチェキータの言葉も、今の殻にこもっているリュージには、届かないのだった。

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