161.息子、悩む【中編】
リュージはチェキータとともに、その場を後にした。
家に帰らず、ふたりは宿屋へとやってきた。
「リュー。何があったの?」
宿のベッドに、2人並んで座っている。
チェキータは相変わらず、彼を抱きしめて、頭を撫でている。
いつも、子供扱いされることを嫌うリュージ。
しかしこのときばかりは、拒絶することはできなかった。
メデューサによって知らされた、真実。
それはリュージの心を深く傷つけた。
チェキータを近くに感じていると、少しだけその痛みが緩和した。
だから、離れたくなかった。
「……僕は」
しばらくして、リュージは口を開く。
「僕は……母さんを殺すために作られた、兵器だったんです……」
チェキータにとっては、荒唐無稽な話かも知れない。
しかしリュージは、ぽつぽつ……としゃべり出す。
自分が人造の勇者であること。
ベリアルの力を持つ母カルマを殺すために、作られたこと。
今、リュージは母を殺しかけていること。
「……リュー」
「チェキータさん……僕ね……どうしたらいいのか、わからないんだ」
ぽた……ぽた……と涙が止めどなくあふれてくる。
「母さんを傷つけることは、嫌だ。それをするくらいなら、僕は死んだ方が良いって……でも……」
リュージは顔を、手で覆う。
「僕が死んだら、母さんが……悲しんじゃう。どっちにしろ母さんを傷つけることになる。どうしたら……いいの……?」
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