161.息子、悩む【前編】
メデューサから真実を聞かされたリュージ。
彼女は結界を解く。
「リュー!」
真っ青な顔をしたチェキータが、リュージを抱きしめる。
「…………」
「リュー!? だいじょうぶ!?」
だが、今は返事をする気力が無かった。
「メデューサ! あなたねえ!」
「あら怖い。美人が台無しよデルフリンガー。それにわたくし、別に何もしてないわ。タダこの子に、真実を教えてあげただけよ」
メデューサはにっこりと笑う。
「それじゃね坊や。良き選択を」
ひらひらと手を振って、メデューサはその場から消えた。
「リュー……なにがあったの?」
「チェキータさん……」
じわ……っと目に涙が浮かぶ。
リュージは悩みを言葉にすることが、できなかった。
感情の整理が付かず、ただただ、悲しみにとらわれていた。
チェキータは何も言わず、リュージをその柔らかく温かな体で包んでくれる。
「僕……僕は……いちゃいけない子だったんだ……」
「ちがう。そんなことない。リューは、必要な子よ。リュー」
チェキータは必死になってリュージを励ましてくれる。
彼女の優しさが胸に染みる。
だがそれだけで、自分のなかで渦巻くこの感情を整理できない。
……リュージは選ばなければいけない。
自分か、それとも、母か。
どちらの命を優先するかを。
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