表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

312/383

158.邪竜、孫になぐさめられる【後編】



 カルマは孫のルコとともに、カミィーナから少し離れた露天風呂へとやってきた。


「かるま。どー?」


「ええ。気持ちが良いです」


 ふたりは服を脱いで温泉に入り、ほっ……と一息つく。


「えー。きもち?」


「ええ、とってもえーきもちですよぅ」


 ルコはカルマの膝上に乗っている。


「かるま。ぐらまらす」


「ふはは、巨乳は母性の象徴ですからね」


「るぅ。ぺっちゃんこ。しょぼん」


「大人になればぼんきゅっぼーんですよ! 落ち込んじゃダメです!」


「ぼんきゅ。ぼーん?」


「ええ! ぼんきゅっぼーん!」


 ふへっ、とカルマとルコは笑いあう。


「かるま。なにくったら。そんな。でかく。なる?」


「……別に。ただ、これは変身しているだけ。私はもともとドラゴンですからね」


 人化(魔物が人に代わる高等スキル)によって生成される体は、作る本人が自由に決められる。


 つまり、カルマのこの人間の姿は、カルマ自身がそうなりたいと思った姿で作った物だ。


「かるま。ぼんきゅっ、ぼーん! なりたかった?」


「というより……りゅーくんが一番喜んでくれると思ったから、ですね」


 カルマは述懐する。


「長くドラゴンでしたからね。人間の母がどういうものかわかりませんでした。りゅーくんを育てる決意をした私は、人間を必死になって勉強しました。……けど、よくわかりませんでした」


「なにが?」


「母親というものが、です」


 調べれば調べるほど、これほど難解な存在・関係は無いと思った。


「とりあえず外見だけでもとおもい、理想の、最高の母をめざしてこの体を作ったのです」


 カルマは微苦笑する。


 昔の自分は、何もわかっていなかったのだ。


 母とはなんたるかを。


「いいえ……今も、わからない。最近はちょっとつかめたかなって思ったのですが、マキナを見て……わからなくなりました」


 自分の生みの親であるマキナ。


 彼女は、とてつもなく冷たい女だった。


 カルマは、チェキータという最高の母から、そして息子と一緒に長い時間をかけて、母とはなんたるかを学んできた。


 しかしマキナの行動は、培って身に付けた【母の像】からは、遠く離れた者だった。

「……私って、母親ちゃんとできてるんですかね」


「……できてる!」


 カルマは目を丸くする。

 ルコが、今までにないくらい、大きな声を張り上げたのだ。



「できてる! かるま! さいこう! ははおや! ぱぱ。そう思ってる! るぅも!」


「ルコ……」


 ルコはカルマの胸にだきついて、叫ぶ。


「かるま! みよりない。るぅ! いっぱいあいじょう! そそいだ! うれしかった! かるま! おかあさん! るぅの! さいこう! おかあさん!」


 ……ああ、母親失格だ。


 家族にこんな悲しい顔をさせてしまった。

 けど……同時に、嬉しかった。

 最高の母親。


 それは、母を目指して頑張ってきたカルマにとっての、何よりの賞賛の言葉。


「ありがとう……ルコ……」


 ぽた……と涙がこぼれる。


「お母さん……うれしいわ」


 ふたりは静かに涙を流す。


 その後には、ふたりは晴れやかな表情で、帰路についたのだった。

書籍、コミックス好評発売中!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ