158.邪竜、孫になぐさめられる【前編】
リュージが友達と楽しく過ごしている、一方その頃。
カルマは地上にいなかった。
遥か上空、成層圏を突き破ったその先、月面に座っていた。
「…………」
最強の力を持つカルマにとって、宇宙にでることなど容易いこと。
ぼんやりと地球を見ていた、そのときだ。
「かるまー」
「ルコ……あなた、どうしたのですか?」
「かるま。いない。さがす。るぅ。みつけた」
金髪褐色の幼女、リュージの娘ルコが、カルマの頭上から降りてきた。
「かるま。いつも。ここ。くる。どーして?」
「最近考え事するときは、ここに来るんですよ。おいで」
カルマが手招きをし、ルコはその膝上に座る。
「どーして、ここ?」
「……静かですので」
本当は、違う。
地上にいると、勇者の力に殺されそうになるからだ。
先日、リュージの勇者の力は、今までに無いくらい強くなった。
同じ空間にいることさえも、結界を張ってようやく保てるレベル。
地上を離れた場所に来ないと、カルマはまともにたっていられないのだ。
「かるま。いたいいたい?」
ルコがカルマを見上げていう。
「いたい?」
「……そうですね。痛いです。心が」
リュージの前では、平気な顔をしないといない。
それは大好きな息子に嘘をつく、母として最低の行為だ。
笑顔を振りまくたび、カルマは泣きそうになる。
ごめんねと。嘘をついて、ごめんねと。
「うぉー、かるま。げんき、だせー」
書籍、コミックス好評発売中です!




