156.終わりの始まり2
リュージが勇者から、力を受け継いだ、一方その頃。
魔王四天王の1人、メデューサは、地下深くの研究所にいた。
「くひっ♡ くひひっ……♡ 順調、順調ですわぁ……」
巨大な培養カプセルの前に、メデューサは立っている。
緑色の液体に浸かっているのは、巨大な蛇だった。
銀色の鱗。
あの邪竜カルマアビスを彷彿とさせる、凶悪な顔つき。
顔は竜。
胴体は蛇。
「ヨルムンガンド……あのカルマアビスの細胞を回収して作った、わたくしの自信作。もう少しで、お披露目ですわぁ……」
実に楽しそうに笑いながら、メデューサは研究所のなかを歩く。
ややあって。
さらに地下深くのイスには、勇者の体を乗っ取った、邪神ベリアルが座っていた。
「ベリアル様。お目覚めになれましたか?」
「…………」
ベリアルは答えない。
ただイスに座って、目を閉じている。
「これから世界は楽しいことになりますわ。あなたも特等席でご覧になりませんこと?」
「…………」
ベリアルは答えない。
目を閉じて、黙ったままだ。
「……そう。がっかりですわ」
心底失望した表情で、メデューサが言う。
「……まあいいですわ。わたくしは、自分の力で、世界に破滅をもたらすことにしますわ」
メデューサは、ベリアルを一瞥すると、その場を後にする。
「メデューサ」
「……なんですの?」
「世界の破滅など、バカなマネはよさないか」
「……それが、かつて世界を滅ぼそうとした物のセリフとは、到底思えませんわね」
邪神ベリアルは、勇者の体に入ったことで、その魂を浄化させられた。
本来ならば、復活したベリアルが、世界に破滅をもたらす予定だったのだ。
「わたくしはあなたに代わって、あなたが成そうとしたことをなします。邪魔するのでしたら、わたくしはあなたでも殺しますわよ」
そう言って、メデューサは振り返らず、研究所の外へ向かって歩き出す。
「さぁ、終わりの始まりを、始めましょうか」
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