153.エルフ、メデューサのもとを訪れる【前編】
あれから半月後。
魔王四天王の一人、メデューサは、地下深くの研究室にひとり、引きこもっていた。
「くひっ♡ 首尾は上々……作戦は順調に進んでいっているわ」
地下深く。
培養カプセルの立ち並ぶそこに、メデューサはひとり愉悦の表情を浮かべる。
「これでふぬけた魔王の代わりに、わたくしが……」
と、そのときだ。
「やっと見つけたわよ、メデューサ」
ピタッ、と首元に、何かを突きつけられた。
目線を下ろすと、そこには鋭いナイフ。
「あら、デルフリンガーじゃない。どうしたの、こんなかび臭いところに?」
背後を振り返ると、そこには、王国騎士としての制服に身を包んだ、チェキター・デルフリンガーがいた。
「長く消息不明だったおまえを、探し出すのに、苦労したわよ」
「ナイフをどけてくれないかしら?」
「動いたら……殺す」
「まったく久しぶりの再会なのに、情緒もへったくれもないわねぇ」
メデューサは余裕の表情で、一歩前に踏み出す。
ザシュッ……!
チェキータはナイフを一閃させる。
メデューサの頸動脈から血が噴出する。
「あらひどいわぁ」
だがすぐさま、彼女の傷が塞がる。
蛇の持つ再生能力がなせるわざだ。
「それでどうしたの、デルフリンガー。カルマアビスを監視せよという、我々王国騎士団諜報部の使命を忘れたの?」
「……とぼけるのもいい加減になさい。もう調べはとっくに付いているのよ。魔王四天王の一人、後方のメデューサ」
元々ふたりは同僚だった。
同じく国王に仕える騎士の一人だった。
「あら、なぁんだバレたのね。いつから?」
「ルトラがリューに接触してきた頃から調査してたわ。なかなかしっぽ出さないんだもの。苦労したわ」
「あらそ。それで、わたくしになんようじかしら?」
ニタニタと笑うメデューサ。
そこには余裕があった。
「王の命令で、魔王の部下であるわたくしを殺しに来た? 違う違う違うわね、かわいいわたくしのデルフ?」
メデューサはチェキータの目と鼻の先までやってくる。
ぺろ……とその頬を舐める。
「気安く触れないで」
「あら、昔は慰めてあげたのに。つれないわぁ。……で? 要件は?」
チェキータはにらみ付ける。
ややあって、言う。
「リューの勇者の力を、消す方法を教えなさい」
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