152.息子、エルフに相談する【後編】
リュージはチェキータとともにギルドを出る。
季節は冬だ。
年が明けてから、さらに寒さが厳しくなっている気がした。
隣を歩くチェキータを見やる。
「寒くないんですか? いつもその格好ですけど」
「あら、気を遣ってくれるの? ふふっ、ありがとう。でも、魔法で外気を遮断しているから大丈夫よ」
微笑むチェキータは、先を歩く。
だがやっぱり寒そうだ。
リュージはうなずくと、自分にまいていたマフラーを外して、チェキータの首にかける。
「リュー……」
「やっぱり寒そうだったので、それつけてください」
チェキータは目を丸くすると、ポロ……っと涙を流した。
「ど、どうしたんですかっ?」
「ごっ、ごめんなさい。なんか……涙出ちゃって……」
チェキータは目元を拭う。
ややあって、彼女は笑顔になる。
「リューも、もうすっかり大人になっちゃったわね」
チェキータたちは並んで歩く。
途中で、雪が降り始めた。
「あの子があなたを拾ってから、もう15年か。あんなに小さくって、ずっとずっと守っていかないとイケナイと思っていた子が、今ではこうして立派な大人としてここにいる」
途中、石橋にさしかかる。
チェキータとリュージは並んで、川を見つめる。
「ねえ、リュー……。カルマのことなんだけど」
リュージはチェキータを見やる。
どこか、晴れ晴れとした表情をしていた。
「あの子のこと、よろしくお願いね」
ふわり……とチェキータが体を浮かせる。
「どこへいくんですか?」
「ちょっとね。解決策を探しに」
よくわからないが、チェキータもまたやるべきことがあるらしい。
「ねえ、リュー」
チェキータはリュージのそばまでやってくると、ハグする。
「わたしね、あなたたちのこと大好きよ。カルマも、リューも、しーちゃんもみんな、大好き」
「急にどうしたんですか……?」
「なんとなくね。……ただ、わたしはあなたたちを守るわ。カルマアビスの監視者としてではなく、チェキータ・デルフリンガー個人としてね」
そう言って、チェキータは魔法で浮遊すると、どこかへ去って行ったのだった。
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