151.息子、母の様子がおかしいと気付く【前編】
母が倒れてから、一週間後。
リュージは仲間たちとともに、ダンジョンに潜っていた。
相手は大鬼。
リュージの倍ほどある身長のモンスターだ。
「GUROOOOOOOOO!」
オーガが手に持った棍棒を、リュージに振り下ろす。
「やぁっ!」
リュージは剣の腹でそれを弾く。
がら空きの脇腹に、一撃を喰らわせる。
「やった!」
「りゅーじくん! 右!」
オーガは棍棒を持ち替えて、リュージの横っ腹をなぐってきたのだ。
「ぐっ……!」
リュージはそのまま吹き飛ぶ。
「GUROOOOOOOO!」
オーガが棍棒を振り上げて、上段からの一撃を喰らわす。
やられる……! と思った、そのときだ。
どがぁああああああああああああん!
オーガの顔が、炎で吹き飛ばされたのだ。
「かあさん……?」
振り返るとそこには、杖を持ったシーラがいた。
「りゅーじくん! 今のうちに!」
母でないことに戸惑いつつ、リュージはいったん下がる。
シーラに治癒魔法をかけてもらう。
一方でルトラが、矢でオーガをけん制する。
「…………」
「だいじょうぶなのです? りゅーじくん?」
「え、うん……大丈夫。いけるよ」
シーラに治癒してもらった後、リュージはルトラと入れ替わりで前線に立つ。
「いくぞ! こいっ!」
リュージは剣を構えて走る。
「GUROOOOOOOO!」
オーガが棍棒を振り下ろす。
それをかわし、腕の上に立つ。
そのまま腕を伝って走り、オーガの首に、剣を振り下ろす。
ザシュッ……!
魔力で強化した剣は、オーガの首を切断した。
そのまま敵は、激しい音を立てて倒れる。
「いたっ」
リュージはバランスを崩して、地面に尻餅付いた。
「やったのです! 勝ったのですー!」
「……リュージ。大丈夫?」
ルトラが近づいてきて、リュージに手を伸ばす。
「…………」
その手を、ぼんやりとリュージは見やる。
「……どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもない」
リュージはルトラの手を取って立ち上がる。
「オーガに勝っちゃったのです! しーらたち、強くなってるのですー!」
「そう……だね。うん、強くなったね、僕ら……。だから、かな……」
ぽつり、とリュージがつぶやく。
「っと、戦利品ひろわないとね」
「しーらたちがやるのですっ。りゅーじくん戦闘でダメージ負ってたから、休んでて」
「……うん。じゃあ、お言葉に甘えて」
仲間たちが、オーガからドロップした品を拾っている姿を、リュージはぼんやりと見つめる。
「……母さん。こなかったな。どうしたんだろ?」
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