150.邪竜、母と戦う【中編】
邪竜となったカルマと、金竜となったマキナは、カミィーナ上空にて相対する。
【カルマきけ。おまえはリュージとふれ合うと体にダメージを受ける。その傷は決して癒やせぬ。このままではおまえが死ぬ】
【……だからって、私からあの子を奪うというのですか?】
【そんなことは言っていない。もうあの子に近づくなと、言ってるのだ】
【同じことだ!!!】
カルマは翼を広げ、マキナに超高速で接近する。
破壊の雷を宿した一撃を、マキナの土手っ腹に喰らわせる。
その瞬間。
ビョォオ…………!!!!
突如マキナの体を、突風が包み込む。
マキナアビスは嵐の能力を使う。
嵐の結界にカルマは弾かれ、そのまま宙を舞う。
【くっ……!】
体制を整えたときには、マキナが眼下から消えていた。
【おそい!】
マキナがその長い尾を、勢いよくカルマの背中にぶつける。
そのままカルマは、地上へと落下。
カミィーナ郊外の草原に衝突。
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
【うっ……くっ……】
カルマは立ち上がろうとする。
だが体にダメージがあるのか、うまくく動かない。
【カルマ。理解しただろ?】
マキナが悠然と、カルマの前に降り立つ。
【貴様はベリアルの力をその身に宿している。世界最強の魔王の力だ。それが、たかがその部下ごときに言いようにあしらわれている。それほどまでに貴様は傷ついているということだ】
【だ、まれぇえええええええ!】
カルマは口を大きく開く。
十八番の、ドラゴンブレスをお見舞いする。
ビゴォオオオオオオオオオオオ!
マキナは動かない。
体の周りに、嵐の結界を張る。
ブレスは弾かれ、それは上空へと飛び去っていった。
【……カルマ。おまえは邪。そしてリュージは勇者……つまり聖なる力をその身に宿す】
マキナは、諭すような口調で言う。
【聖と邪は相容れぬもの。今までは、リュージの中で勇者の力が弱かった。しかし今、彼の中の勇者の力は、とてつもなく大きくなっている。それこそ、邪神の力と同等なほどな】
カルマは起き上がろうとする。
だが、体に力が入らなかった。
【古来より勇者は魔王を倒す物。リュージの力は、本人の意思に関係なく、邪悪の化身であるおまえを消そうとしている。触れるとダメージを受ける理屈は、そんなところだ】
マキナは、ハッキリと言う。
【いずれあの子は、おまえを殺してしまう】
【だから……なんだ。私は……別に死のうがどうでもいい! 私は……私は息子を愛してる。あの子のそばに居ただいたいだけ! それが、そんなにいけないことなの!?】
【ああ、ダメだ】
【どうして!?】
マキナは、決定打となる一言を言う。
【おまえが死ねば、リュージは悲しむ】
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