150.邪竜、母と戦う【前編】
息子を抱いて寝た、その数時間後。
「起きよ、カルマ」
聞き覚えのある声で、カルマは目を覚ます。
枕元に、幼女となった金竜マキナアビスが、たっていた。
「な、なんですかあなた……?」
「カルマ。少し話がある」
「いや……あの、今何時だと思ってるんですか?」
「関係ない。ついてこい」
「…………」
高圧的な態度に、カルマはイラッとする。
「眠いので明日にしてください。私は息子と寝るという大事な仕事が……ゴホッ! ゲホッ! ゴホッ!」
カルマは口を押さえて咳をする。
「……いいからこい。リュージが起きる」
「……わかりました」
カルマは起き上がり、マキナとともに部屋を出る。
窓の外から、屋上へとジャンプ。
「ゲホッ! ゴホッ! はぁ……はぁ……はぁ……」
どろり、とした感触。
カルマは自分の手を見る。
その手は、血で真っ赤に染まっていた。
「……やはり、ダメージを負っているのだな?」
バッ……! とカルマがマキナを見やる。
その目は、どこか悲しそうだった。
「気付いていたのですか?」
「当たり前だ。わがはいを誰だと思っている?」
「…………」
マキナの顔を見て、カルマは最高に腹が立った。
それは、子供を思いやる、親の顔をしていたからだ。
「カルマ。悪いことは言わぬ。もうリュージに触れるな」
「……バカなことを言わないでください。母とは子供をつねに優しく抱いてあげる物。そんなこともわからないのですか?」
言って、カルマは自分の言った言葉が、失言だったと理解する。
「……すまない」
マキナが表情を暗くする。
皮肉と、捕らえてしまったのだろう。
まあ実際そうだったのだが。
カルマは、マキナを攻撃する気はなかった。
「しかしカルマ。わがはいは今のおまえを見過ごすことはできぬ。ふらふらではないか」
「うるさい……」
「このままではおまえが死んでしまう。そうなる前に」
「うるさいんですよ!」
カルマはマキナをにらみ付ける。
「あなたに何がわかる! 子供のこと、親のこと、なんにもわかってないくせに!」
今度は明確な意思を持って、マキナを攻撃した。
そうだ。
なにが子供にもう触れるなだ。
「……そうか」
スッ……とマキナが目を伏せる。
だが次の瞬間、カルマに殺意のこもった視線を向けてくる。
「どうしても言うことを聞かぬというのなら……力尽くで、押し通させてもらおう」
マキナの体に、パリッ……と電流が走る。
雷がほとばしると、その場には、見上げるほどの黄金の竜がいた。
カルマは同じように、邪竜の姿へと変身する。
【力尽くでも、おまえを止める】
【やれるものなら、やってみなさい!】
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