149.息子、邪竜のためにおかゆを作る【中編】
冒険から帰ってきたリュージを、母が元気な姿で出迎えてくれた。
話はその夜。
リュージは台所に立っていた。
「…………」
「ハァイ、リュー。何をしてるの?」
背後に、チェキータが立っていた。
リュージはコンロの火加減を調整しながら答える。
「母さんに、おかゆを作っているんです」
「それは……どうして?」
「夕飯、あんまり食べてないみたいだったから」
夕食の席でのこと。
カルマはいつも通り、明るく振る舞っていた。
だが自分の料理には、ほとんど手をつけていなかった。
「きっと……まだ体が本調子じゃないんだと思うんです。だから……わぷっ」
チェキータが後から、リュージのことを強く抱きしめてきた。
「ちぇ、チェキータさん? どうしたんですか……?」
「……リュー。あなたは、本当に、本当に優しいのね……」
なぜだか知らないが、チェキータは泣いていた。
「あなたは、母親思いの最高の息子よ。カルマがあなたのこと大好きなのも、すごくよくわかるわ」
「え、えっと……どうしたんですか?」
チェキータの様子もおかしかった。
リュージが尋ねると、彼女はパッと手を離す。
「なんでもないわ。歳かしらね。最近涙もろくなっちゃって」
「チェキータさんはまだ全然若いですよ」
リュージも、彼女もまた苦笑する。
ややあって、おかゆが完成する。
お盆を手に持って、台所を出て行こうとする。
「ねえ、リュー。カルマのこと、お願いね」
「? ええ、もちろん」
そう言って、リュージはその場を後にする。
「……あの幸せな二人を、引き離すことは……私には……できないわ」
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